ErogameScape -エロゲー批評空間-

のびのびーたさんの死神の接吻は別離の味の長文感想

ユーザー
のびのびーた
ゲーム
死神の接吻は別離の味
ブランド
ALcotシトラス
得点
84
参照数
567

一言コメント

泣きゲー半分、妹ゲー半分!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

おるごぅる氏のゲームは初プレイでしたが、素晴らしい内容でした。

雫ルート程妹成分を補給できるゲームは他にないかと。

真顔で「お兄ちゃんって妹で童貞捨てるものじゃないの?」とか言ってきた時は昇天するかと思いましたね。

批判する様な所や矛盾点が特に無く、よくまとめられているなぁという印象を受けました。

ドロドロした展開が好きなのでほのかルートで凛が暴走した所も良かったです。

登場人物が全員いい人な作品は心が温まります。もちろん凛がいい子だって事は分かってましたよ。

さて本題は琥珀ルートですね。全ての伏線を回収され、話が収束していくのはもはや芸術の域にまで磨かれているかと。

最後に浜辺でひよりと主人公が一緒にいて、助かっていたのは様々な解釈ができます。

十六夜の言っていた内容で、死神と接吻をした場合死神は接吻をした方に力を与える事ができ、与えた側は人間に戻り与えられた側は死神になるというものがあります。

では何故最後ひよりは主人公に接吻をしたのか?

その為に十六夜が琥珀をひよりにして死神から解放したのですが、その後すぐにEDが始まり二人が死んだのではないかという事を示唆しています。

十六夜はひよりを死神にした変わりに主人公を助けた事を後悔していた。

死神は人を殺すのではなく魂を本来あるべき所に導くものだと言っています。

この事から二人は死に、十六夜は死んだ主人公の魂を過去を遡り、溺死した主人公の元へと導いたのではないのかと思います。

ひよりは先の記憶が無かったので記憶を消されたのか、琥珀の魂が消滅しひよりの魂だけが残ったのでしょう。主人公の記憶は若干残っていた事は確かです。

主人公は一連の出来事を夢を見ていたと言っており、その時琥珀の画面だったので琥珀との世界が夢であると認識されています。

なので二人は死んでいて、主人公が生きていて思いを伝えられた事が夢であるという説もありますが、私はそうは思いません。

キスをする前に十六夜は琥珀を死神から解放してひよりにしましたが、あれは琥珀のいた世界の主人公達に救いを与えたという事なのでしょう。

主人公を救って、ひよりも救う事は本来十六夜がやろうと思えば簡単に出来る事でした。

では何故やらなかったのか?

それは1人の人間の魂を救ってしまった事で今まで死神目線でいたのに、人間目線からも物事を見なくてはいけなくなるのを恐れていたのだと思います。

いつも人間とは憐れなものだと表現していることから十六夜は人間になることを最も恐れているのであると。

死神は常に冷酷で魂を導けば良い、そこに何の安らぎもないかもしれないが何も恐れず悲しむ事もない。

一つ一つの出来ごとに悩み傷つく人間を憐れみ、恐れていたのです。

これから主人公の時の様なケースが起きた場合十六夜は間違いなく悩むでしょう。

何故ひよりは助けたのにこの人達を助けないのだろう?と。

十六夜は主人公とひよりを助ける事で今まで積み上げて来たものが破壊される事を恐れていた。でも助けた。例えこの先迷い悩んでも助ける価値があると認めたのです。

ED終了後、メニュー画面が主人公とひよりに変わっており細かい演出などに感激しました。

あの主人公達は幼少期に遡ってしまいましたが、琥珀のいた世界よりもずっと良い未来を築けたでしょう。そして琥珀の存在は永遠に主人公の中で生き続けると思います。