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ねずみ男さんの無人島物語4の長文感想

ユーザー
ねずみ男
ゲーム
無人島物語4
ブランド
ケイエスエス
得点
78
参照数
915

一言コメント

ゲーム性は十分だが、シナリオの見せ方が致命的に下手。小説版で補完を推奨

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今はもう知る人もめっきり減ってしまったが、昔、無人島物語シリーズといえば、骨のあるSLGの傑作として有名であった。
筆者は残念ながらリアルで1~3をプレイできるほど古い人間ではなく、地元のコアなファンが通う中古屋の片隅で、安値で売られている1~3を見ても、DOSゲーなんて扱えるほどの知識がなかったのである。
筆者はRからプレイし始め、中嶋理香のシナリオがよく理解できなくて、なんとかして情報を知りたいと思い、Rの設定原画集を買い、それにたまたま載っていた1~3の概要を読み、さらに1の小説版を読んで、ようやく内容を理解できたのである。

さて、筆者の思い出話はこのくらいにしておき、1のリメイク作品として発売されたのが、この作品である。
つまり「4」とはナンバリングされているものの、内容は「1」なのである。
唯一違う点としては、主人公の初期設定氏名が変更されたくらいだ(理由は分からない)。

このゲーム、さすが骨太SLGのリメイクなだけあって、クリアするのがかなり大変である。
ただ無闇に脱出だけ目指して手軽にクリアしようとしても、待っているのはBADENDだ。
しかも、悪いことに、元になっている1とは違い、全てがリアルタイム形式である。
これには正直疲れた。プレイ中、ちょっと休みたいと思って放置しようものなら、イライラした様子のキャラが夜まで立ち尽くしてプレイヤーの指示を待っているのである。

リアルタイムにキャラを動かすことにより、無人島を冒険している感じを出したかったのだろうが、主人公が属さない他の2班も操作しないといけないのだから大変だ。
いや、正確に言うと、ある程度は委任することができるのだが、委任なんかしようものなら、特に必要もないことばかりしてくれるだけで、あまり役に立たないのである。だから、結局自分で全て操作することになる。

そして、このゲームの目玉でもある、「文明の利器の開発」だが、天才的な頭脳を持った理香さんが必要な材料を言ってくれるので、それを集めたり、制作するだけである。
しかし、中心となる作業ができるのは理香さんと教授の班だけであり、冒険してばかりの脳筋な主人公と沙織の班はもちろんのこと、2班の隙間を埋めるかのごとく雑用ばかりさせられがちな絵里奈と鈴音ちゃんの班も、せいぜい部品を作ることくらいしかできない。
さらに、追い討ちをかけるかのように、理香さんは制作好きである一方で、教授は外にも出たがる。あまり制作ばかりさせていると、教授の機嫌が悪くなって、EDにも影響してしまうのである。

とにかく大変である。
希少価値が高くてなかなか見つからない材料を、間違ってくだらないものを複数作るために消費してしまったことを知った時には、思わずため息が出てしまった。
攻略サイトは必須だが、今もまともに残っているだろうか。

そして、ここまで大変で硬派なゲームなのに、いい加減な部分もあり、お約束のごとく家はゲーム開始直後に主人公が一人で建ててしまい、台風等のイベントも起きないので、壊れることもない。
野生の動物相手を鈴音でも屠殺することができ、屠殺後は一瞬のうちに食肉に変わる。
燃料として、原油から灯油やガソリン、重油やコールタールまで精製できるが、部屋の暖をとるための燃料も、開発のための燃料も同じ扱いだから、ガソリンで暖をとろうと爆発死しない。
さらに、原住民やら残留日本兵やらもサブキャラとして登場する。
……というか、それだと無人島とは言わないだろ!とは思うが、それがこのシリーズのお約束でもあるのだ。下手にRRみたいな設定にされても、かえって興ざめである。

だらだらとまた長文を書いてしまったが、ゲーム性だけは十分な作品である。
筆者はいささか苦痛に感じるほどであったが、やりごたえはあった。

だが、残念なのは、シナリオの見せ方である。
あまりにも断片的過ぎる。そして、マップ上で動かすチビキャラが一生懸命動いて台詞を言ってシナリオを進行することも多いせいか、あまり感動しない。

筆者は無人島物語1が感動的なシナリオを元にしているというのは十分に分かっている。
なぜならば、これの小説版やドラマCDまで買って聴いたほどの重度のファンであり、素直に感動できたからである。
そこには、逆境の中で生まれた信頼関係、まるで本当の家族のような絆、さわやかな青春の純愛、ほろ苦い横恋慕、まさにこれぞ人間ドラマだ、文明から離れた人間そのものの強さや優しさを描いた傑作だと思ったものである。

だからこそ、冒頭でもだらだらと思い出話を書いてしまった。
なぜならば、このゲームをやるだけでは、本当の良さなんか分からないからである。
ゲーム批評のサイトでこういうことを言うのもなんだが、ぜひ小説版も一緒に読んで、シナリオを補完しながらプレイしてほしいと切に願うばかりである。