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ねずみ男さんのぱすてるチャイムContinueの長文感想

ユーザー
ねずみ男
ゲーム
ぱすてるチャイムContinue
ブランド
ALICESOFT
得点
87
参照数
666

一言コメント

サブキャラの個性が光る青春学園ものRPG。エロに入ってからの蛇足感が残念。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ゲームとしてはかなり面白い。初心者でRPG好きならお勧めだ。
登場人物は全員キャラ立ちしているが、特に主人公とともに冒険できるサブキャラのメンバーは、メインヒロイン勢を食うほどの個性を発揮していた。
ぼたんやナツミなんかは、攻略したかった人も多かったのではないかと思うと、もったいない部分もある。

ゲームの方も、3D見下ろし系のマップで操作しやすいが、施錠されているドア・宝箱や、罠が多すぎて、とてもスカウト無しで冒険する気になどなれない。
スカウトは、メインヒロインではルーシーのみ、サブキャラはサワタリとナツミがいるが、はっきり言ってサワタリのスカウト能力は微妙過ぎてあまり使えないので、ルーシーをメインヒロインに据えない場合は、主人公をスカウトにするか、ナツミを酷使する以外ない。

というか、主人公の育成方法によって大きく難易度が変わるものの、どこのサイトを見てもほぼ2通りの育成しか勧めていない。
心1技4体5のスカウトにするか、心8技1体1の神術師にするかである。
戦士は遅すぎるし冒険に必須のスカウト能力がない、魔術師は回復魔法を覚えないうえ、後半は火力不足で神術師に劣るという欠点がある。
また、これ以外のステ振りだと、その職業の持っている能力を十分に発揮しきれない。
それこそサワタリみたいな、使えない忍者(失礼!)になってしまうのである。
そのように、結局プレイスタイルが固定化されがちなのも、残念なところである。

シナリオについては、はっきり言って青臭い。
だが、それがかえって良かった。何故ならば寮もある学園もののゲームである。大人びた雰囲気ばかり出しても、このゲーム全体の空気には似つかわないというものである。
ヒューズとエリーゼが仲間になる過程なんか、ある意味陳腐そのものだが、このゲームの雰囲気には不思議なほど合ってもいた。
主人公たちのやっていることは、はっきり言って中学生レベルのことも多いが、昔は自分もこんな馬鹿なことで騒いでいたよなとか、懐かしくも思えるようなイベントもあってなかなか面白かった。

だが、シナリオで残念なことといえば、前作のキャラが騒ぎすぎていたことである。
主人公たちが一時的にとはいえ、前作の世界に時間を超えてワープするイベントがあるのだが、前作の内容を分からない人にはさっぱり意味不明であるうえに、結構長めのイベント(しかも戦闘まである!)だったため、はっきり言って、「もういいから、元の世界で冒険の続きさせてよ」と思ったものだ。

もう一つ残念なこと。それはエロが不要だと思えるほど、個別ルートに入ってからの展開に、「さわやかさ」や「キレ」がなくなって、だるかったことだ。
嬉し恥かしの青春の恋愛を描きたかったのかもしれないが、もっとノリを良くしてほしかった。
やはりリナのようなキャラには、ある程度のキレが必要なので、恥かしがってしおらしくなってばかりでは、面白みがないのである。言い換えると「らしくない」。

まあ、このゲームはコンシューマ化もされたようだし、エロ不要というのはスタッフの方でも自覚していたのかもしれない。
コンシューマでプレイしていたら印象が変わっていたかもしれないが、それでももう一歩欲しかった名作というレベルであることには間違いないので、87点とさせていただいた。