ドラマ「野ブタをプロデュース」に設定が似ている。ヒロインがイメチェンする感動的な青春物語!同人ゲームの傑作!
これほどの作品でありながら、このサイトで初の評価者となることに驚きを隠せない。
この作品をプレイしてから、ドラマの「野ブタをプロデュース」を見たのだが、設定が似ている部分が結構あって、どちらも楽しめたのをよく覚えています。
ただ、誤解してほしくないのは、似てはいるが違う作品だということだ。
こちらの作品の主人公に人気者設定はなく、「野ブタ」には蜜柑のようなライバルキャラがいない。そして中盤以降は全く違う話になっている。
さて、この作品の大きな目玉はシナリオである。
学校にも家庭にも居場所がなく、誰からもいじめられる転入生のヒロイン小真知が映画撮影部に入部し、主人公や浩一との交流、さらには蜜柑との葛藤やいさかいを経ながら、精神的に大きく成長する。
それだけでなく、シナリオが進むにつれて外見をイメチェンしていき、シナリオ中盤以降は、全く別人と呼んでもいいほどの変貌を遂げる。
最終段階の変貌だけはいささか蛇足に感じたものの、イメチェンを十分に活用しているところに好感を得たし、外見をイメチェンした結果、自信をつけていく小真知には、見ているこちらが嬉しくなるほどだった。
中盤以降はうって変わって、やや不良臭(某掲示板ではDQNと呼ぶのだろうか)が強くなり、主人公らの行動に全面的には同意しかねるものがあったものの、緩急の付け方は上手かった。
脇役の「青蛇」も、寝取られ好きにはたまらない行動をとってくれるし、ではヒロインは本当に寝取られてしまったのか?というと、実はそうではなかったというもまた良い。
また、いじめの描写について、前半は小真知、後半は蜜柑が標的になっているというのもなかなか深いものがあり、色々考えさせられた。
メインヒロインである小真知以外のルートはバッドエンドにしか思えないが、小真知ルートのEDとエピローグはまさに圧巻!
主人公らの所属していた部活が映画撮影部だという設定と非常に合った印象的なEDと、その後に続く同人らしさ溢れる下手上手い歌!
そしてエピローグでは「かたおもい」というタイトルの真の意味や、作中でのシッタカ先輩の謎の発言の謎が解けるなど、一本とられた気分になった。
まさに同人とは思えないシナリオの出来であり、商業でありながら破綻したシナリオで紙芝居を作って定価売りするようなメーカー担当者に、ぜひこの作品で勉強してほしいところである。
上にも書いたが、後半の主人公らは青臭いし不良っぽい。
それだけは同意できなかったので5点マイナスしたが、全体を通してみると、本当に一つの青春ドラマを見終わったような、爽快な気分にさせてくれる内容であった。
絵はかわいい。特にメインヒロインのイメチェンには目を見張るものがある。
ゲームを進めていくうえで必須であるミニゲーム的なスロットはちょっと余計だった感じもするが、時折映画撮影部という設定を生かした映画の一コマみたいなシーンが、全てを吹き飛ばしてくれた。
また、歌についてはOP・EDともに同じ人が歌っているが、一言で言うと「下手上手い」
決してプロ歌手のような上手さはないのだが、何故か心惹かれるものがあるし、この歌詞や曲をこのゲームの製作者が考えたのかと思うと、そこでまた凄さを感じてしまう。
ゲームに合った歌というものはまさにこういうものを言うのであろうし、どちらも、ゲームから歌への入り方が鳥肌ものの上手さだった。演出も上手である。
さらにこのゲームには声がある。しかも、イメージとおおむね合う。
キャラのイメージとかけ離れた残念なゲームもある中で、この出来もやはり凄い。
このゲームが発売されたのが、製作者のサイトによると2003年である。
サークル名から考えると、もしかして、かの「よつのは」を作ったメーカーの前身か?(違っていたらごめんなさい)と思うのだが、もしそうだとしても、商業デビューできたのは十分にうなづけるところだ。
ダウンロード販売サイト(確かDMMかDLサイトコムだったような…)で購入したときには、「殿堂入り」していたゲームであった。
それだけにこのゲームには必ずレビューがついているものだと思ったが、まさかの初投稿者。
埋もれた名作とはまさにこのことを言うのかもしれない。