日常の中にこそ幸せがあることを教えてくれる初心者向けの素敵ノベル
アニメ化もされた名作。
シナリオに定評のあるねこねこソフトらしく、平易かつ巧妙な文章でゲームの世界に引き込んでくれます。
七海ルートのみ大きな山場がありますが、総じて何気ない日常をテーマにした作品ながらも、幸せとは一体何か、大事なものは何かということを考えさせてくれる内容になっています。
サブキャラ含めて、どのキャラも個性的で魅力的。
しかし、奇抜で破綻したキャラ設定に頼ることなく、「もしかしたら自分の身近にもこういう人がいたかも」と思えるような、自然な範囲での個性付けになっており、そこがまた好感を抱けます。
「ありふれている」というのは、リアルでは当たり前ながらも、これをゲームにして、さらにプレイヤーをひきつけるとなると、相当難しい設定だと思います。
しかしこのゲームはそれを難なくクリアし、プレイ後にはさわやかな気持ちにさせてくれます。
キャラによって手抜きをするということもなく、中には他のシナリオで見せる性格とは全く別の性格を演じさせたキャラもいて、しかも自然で違和感のない描写に、思わずうならされました。
そして何より感動させられたのが、このゲームを作るきっかえになった秘話が語られていたことです。その内容を読んで、自然な感動とは何か、キャラを殺さずに呼ぶ感動とはいかなるものかと考えさせられました。
このゲームのシナリオライターの才能は素晴らしいものがあると思います。
主に七海ルートがアニメ化されましたが、さすがアニメ化されるだけのことはあるなと思いました。
OPテーマもノリが良く、楽しい気持ちにさせてもらえますし、挿入歌の「夕凪」もどこか懐かしい気分にさせてくれる癒しのソングです。
ただ、ゲーム性があるかと聞かれたら話は別で、どのキャラも一度プレイしたら、もうそれ以外の展開はありえません。その点が残念といえば残念でした。