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ねずみ男さんのリベリオンズ Secret Game 2nd Stage BOOSTED EDITIONの長文感想

ユーザー
ねずみ男
ゲーム
リベリオンズ Secret Game 2nd Stage BOOSTED EDITION
ブランド
FLAT
得点
88
参照数
882

一言コメント

「(このゲームをプレイしている人に)理不尽を受け入れさせてはならない」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 まず、このゲームをプレイするに当たって、かなりの葛藤があった。
それは登場人物の1人が、大嫌いな奴の名前の読み方と同じであったからだ(漢字で書いても1文字違い)。
だから、万が一にでも主人公サイドだったら嫌だなと思いながらも半額セール対象だったので買ってみた。
結果、そのキャラはクズの中のクズとも呼ぶべき輩だったので、「氏ね」とか言いながらプレイできて満足できたものである。

 さて、個人的事情はさておき、感想だが、前作には及ばないものの名作ではあると思う。
では、前作に及ばない理由は何かというと、以下のとおりである。

1 運営側がゲームというものの根本を理解していない
2 Bルート以外は人間関係がほぼ固定化されている
3 「死」というものにきちんと意味付けをしていない
4 致命的なミスがある

では、これらについて順に説明する。

1 運営側がゲームというものの根本を理解していない
 主人公たちがやらされているのは殺人を促すものとはいえ、あくまでも「ゲーム」である。ゲームである以上は当然ルールがあるし、クリアできるものでなければならない。
 RPGでラスボスを倒したのに勇者が倒れるまで何度でも復活しますというのでは話にならない。
 よって、Cルート及びDルートにおいて、主人公たち全員がファーストステージの条件をクリアしたにもかかわらず、セカンドステージに移行しなければクリアできない、さらには強制的に移行させられるというのは、運営側の反則以外のなんでもない。
 また、これが反則であることはDルートで触れられているが、だからといってそれが免罪符になるわけではなく、自分たちも反則をしている以上は、主人公たちが電波吸収帯を使ってエリア外に脱出したことについても、反則扱いせずに認めなければフェアではないのである。
 運営側だけに反則を認めるのであれば、もはやそれはゲームではなくなってしまう。
 事前に運営側がゲームに直接介入はしないということを、主人公が確認しているシーンがあるだけに、これは非常に目立つ欠陥であった。
 この点、前作の運営はまだゲームというものを理解して主人公たちに救済措置を施したりもしている。
 そういう意味では退化してしまったので、残念である。

2 Bルート以外は人間関係がほぼ固定化されている
 これは誰と誰が一緒に行動するかという問題ではなく、登場人物間の信頼関係や友好度のことである。
 Bルートは真島と黒河が共闘するし、瞳が主人として従うのは司である。パートナーについても、真島と結衣、黒河と玲という組み合わせで他のルートとは異彩を放っている。
 しかし残念ながらBルート以外は特に大きな変化がない。出会うのが早いかどうかなどの問題であって、まり子と大祐は水と油であるし、主人公と琴美、司と玲、黒河と結衣、充と初音という組み合わせはまるで固定化されているかのように変わらない。
 だから誰が誰を襲いそうだとか、誰が誰を切り捨てるかということは容易に予想がついてしまった。
 これはちょっと芸がない。
 前作では共闘する者、敵対する者がルートごとに異なっていたようなものであるから、物足りなさがあった。

3 「死」というものにきちんと意味付けがされていない
 前作との比較ばかりになって申し訳ないが、誰かが死ぬにあたって、悲しみはするがそこに意味を見出していない感が強く感じられた。
 他のキャラを守るために犠牲になるシーンは多かったが、それについても誰が誰の犠牲になるのかがほぼ固定化されていたし、悲しみはするが、ゲームの進行に大きく関わるようなことがなかった。
 前作であれば、渚さんが特定のPDAを持った状態で犠牲になったために主人公サイドが救われるなどの、「おおー」という展開があったが、今作にはそのようなものがない。

4 致命的なミスがある
 誤字・脱字というレベルではなく、きわめて致命的なミス。
 それは、結衣と初音のクリア条件を取り違えて説明しているシーンがあるということである。
 そのシーンでは、結衣の「ゲーム終了時までプレイヤー全員が生存している」という条件が満たされなくなってしまったという説明がされており、顔面蒼白状態の結衣の立ち絵が表示されていたが、この条件は結衣のものではなく初音のものである。
 結衣の条件はあくまでも「メモリーチップを使用して食糧を8個以上確保する」である。
 重要なシーンだけにお粗末すぎた。


さらに相変わらず長文だが、各ルートの感想も述べたいと思う。

Aルート
 「黒幕」(クズ中のクズともいう)が誰なのかが判明する流れはなかなか良かった。
 ただしメインヒロイン?の後先考えない某行動にかなりいらついてしまった。

Bルート
 真島と結衣、黒河と玲、そしてそれに対峙する司と瞳という組み合わせが面白い。
 このルートを見てしまうと、真島とまり子、黒河と結衣、司と玲という組み合わせが果たして最適解なのかという疑問もわいてくる。
 また、Aルートとの対比で、女の方が男よりも精神的に強いと思ってしまう描写もあり、なかなか皮肉。

Cルート
 今作で最も嫌いなルートである。
 途中までは運営への挑戦ということで良かったし、その後に実際に電波吸収帯を人数分生産して運営を撃破したのであれば爽快であったが、運営側のあまりに酷い反則で全てがパー。
 ただいたずらに話を引っ張りまくって後味悪い思いをさせただけの駄ルートである。
 このCルートで終わっていたらこのゲームへの評価は相当辛いものになっていたと思う。
 ゲーム中の言葉をアレンジしながら製作者に伝えることがあるとしたら、「(このゲームをプレイしている人に)理不尽を受け入れさせてはならない」

Dルート
 Cルートよりは幾分ましであり、前作への布石も書かれていてニヤリとする部分もあるが、やはり運営側の反則が酷くて耐えられない。
 将棋で負けそうになっているからといってちゃぶ台ひっくり返す糞ジジイみたいな行為しかできないのはいかがなものか。
 やはりここまで来たならば潔く全員生還という話にしてほしかったものである。
 犠牲者があまりに無駄な犠牲過ぎて後味が悪すぎる。そして充がどのルートでもあまりにも救われない。

Eルート
 今作の話よりもさらに1年前の話・・・具体的には悠奈が最初に参加したゲームでの話であり、玲の弟の彰が登場する。
 短いながらもなかなか良かったが、防弾チョッキを着ていたからといってずっと死人のふりを通せたのだろうか。
 他のルートのように死者を埋葬するようなことを考えられたら一発でばれてしまうし、現役の刑事ならば出血もしていない相手が死んだとは判断しないはずである。

おまけ
 なかなか面白かったとは思う。

 最後にもう一度、「(ゲームをプレイしている人に)理不尽を受け入れさせてはならない」
 シナリオで勝負するゲームなら、基本ルールは守りましょう。
 それでも寝る間も忘れるほどのめりこめたので88点。