「女の子」ももっと頑張れよ!と言いたくなってくるゲーム
最初に断っておくと、筆者にはソッチの趣味はない。
じゃあ何故買ったんだよと思うかもしれないが、DLサイトコムで半額セールをやっており、「夏めろ」と合わせて3000円以上になれば1000円引きクーポンを使える状態だったから。
そんな状況の中、1500~2000円程度のゲームの中で、最もそそられるCGだったのが今作だったのである。
当然、タイトルも設定も見たうえで購入しているので、「女の子」が登場しないのは百も承知だったが、史緒の容姿が好み過ぎて、ソッチの趣味ではないことのマイナス点も相殺してしまったのである。
さて、購入したいきさつはそこまでとしておいて、このゲームをプレイして「目覚めましたか?」と聞かれたら、「いや、目覚めなかったよ」というのが正直なところ。
男はどこまで行っても結局男だし、史緒たちの10年後・20年後を考えると、やはり主人公のようにまでは割り切れない部分があるだろう。
ろくに男性を見たことのないはずの史緒が、きちんと「父親」の着物を主人公に貸すシーンもあれば、神社に集まる老人は、「お婆さん」だけではなく「お爺さん」もいるのだ。
シナリオライターは意識していなかったかもしれないが、時の流れは残酷にも、結局、男は男なのだということを、いつか明るみにしてしまうのだろう・・・と思わせるものであった。
もっとも、「ガッツ」シリーズのタカさんと、今作の史緒を並べられて、「さあ、どっちか片方を伴侶として選べ!」と言われたら、史緒の方に流れてしまうだろう自分が怖い部分もある。
逆に、史緒というキャラはそこまで魅力的なキャラであり、別に「男の娘」でなければならない理由なんてどこにもなかった。
美少女で、親切で誰にでも優しく、お淑やかで、家庭的で、何よりも主人公に好意を抱いている。
主人公のためなら由良のように強気で権力もあって、付き合いも長い相手をたしなめることだってできる。
まさに、「あそこ」以外は完璧なキャラであった。
「昼は淑女、夜は娼婦」という言葉は史緒のためにあるのかもしれない。
特にフェラシーンや、お風呂での「童貞喪失」シーンは実用性がありすぎて怖いくらいである。
また、史緒と並んで魅力的だったのが静樹であり、天真爛漫そのもの。
かといって、性的に全く無知というわけではなく、きっちり男のツボをおさえることを心得ている。
史緒が伴侶だとすると、静樹はいささか友達の域をなかなか超えられない感じもあるが、それでも十分に好みであり、お風呂での奉仕シーンや、脇コキシーンは、やはり実用性が高い。
特にお風呂のシーンのCGをサンプルで見たからこその購入だったことを考えると、かなりそそられる光景であったのは間違いない。
一方で、三人目のヒロインである由良の存在は正直言って不快であった。
「史緒や静樹とは違って、広い世間の常識を知っていて、状況を簡単には受け入れない存在。そしてS気もあるし、ツンデレ気味でもある」という感じのキャラを演出したかったのかもしれないが、単に村に迷いこんだだけの主人公に対して、あまりにも酷い暴言の数々はやり過ぎである。
これでは常識人どころか、赤の他人にいきなり喧嘩を売ってくる非常識人ではないか。
エロシーンについても、結局最初に奉仕?したシーンの胸がきれいなCGが実用性があるくらいで、他は史緒や静樹と比べて、どこか「主人公を汚いもの扱い」みたいな描写が多くて好きにはなれなかった。
容姿だけでいうと、史緒の次に好きだったので残念ではある。
さて、シナリオ全般についてだが、平易な文章で読みやすいし、主人公の女性に対しての不信感、かといってソッチの趣味がないことからの葛藤、妊娠・性教育問題についての葛藤などは、「ヒロイン全員が男の娘」という設定をうまく生かしていて良かったと思う。
ただ、中盤以降の、「男の娘でも妊娠できる」というのは、果たしていかがなものか・・・。
これを科学を超えた奇跡で片付けた(史緒のキャラ設定がここで生かされることにもなるが・・・)が、やはり強引、ご都合主義そのものだった感はぬぐえない。
男の娘だから妊娠は絶対に無理、主人公が子孫を残すことを望むなら自分たちは伴侶として相応しくない・・・、そしてその悩みを知った上での主人公の考察と結論・・・そういうものを期待していただけに残念ではある。
ただ、色々ケチをつけておいてなんだが、このゲームをプレイした後に真っ先に思い浮かんだ言葉が、「『女の子』ももっと頑張れよ!」ということである。
世間には数多の美少女ゲームがあるが、残念ながら「実用性」ではこのゲームに負けているものが多い気がしてならない。
ランスシリーズのようにゲームがメインでエロはオマケみたいなものだというならそれでも良いのだが、一番出回っている「自称アドベンチャー、実質ビジュアルノベル」みたいなゲームでは実用性がなければ問題にならない。
実用性がなくてもOKなのは、家族計画のように、圧倒的にシナリオが優れているような一部の例外の場合だけであって、そうでないならダメだろう。
女の子、もっと頑張れ!
男の娘の方が、男であるだけに男のツボを知っているという面はともかくとしても、ソッチの趣味もないのに男の娘と並べられたときに選ばれないようでは、「美少女」ゲームの名が泣くというものだろう。
評価は80点と正直言って自分でも甘くつけているなと思う。
しかし、これには理由があり・・・世間での「高得点」の一つの基準である80点ちょうどにこの作品を据えることによって、これを超える作品こそが「美少女」ゲームとして優秀(少なくとも抜きゲーという意味では・・・だが)だといことを示したかったのである。
繰り返しみたいになるが、ヒロインが男でさえもここまですごい作品を作れたのだから、各ブランドにはもっと頑張ってほしいものである。