覚めない夢は無い。けれど、望んだ未来は夢の中だけの出来事だった。
前作のハピメア本編はプレイ済みのレビューとなります。
ネタバレも盛り込まれておりますので、ご覧になる際はお気をつけくださいませ。
さて、夢の終わりに向かうという事で前作より雰囲気が明るくなっております。
まぁ、fragmentation dreamはファンディスクというよりはハピメア2と言った方がよいかもしれませんね。
そんなハピメア2ですが、結局前作で自分が不満であった所、もとい納得できなかった点は残念ながら解消されておりません。
まず、前作の真エンドの有栖ルート後のお話であろうと予想されるのですが、未だ夢からは脱出できておりません。
有栖ルート後であろう、と言う表現を使ったのは前作と若干の違いがあるからですね。
それは有栖と有子が混ざっていないということ。有子は前作ラストのCGではオッドアイでしたが今作では違いますよね。
ここから推測できる事は二つ。
一つは大人の事情。身も蓋もない話ですね。ファンタジーでこんな介入を受けるのは大変さげぽよなわけですが。
二つ目は既に平行世界であるということ。
前作のラスト、目が覚めて有子を迎えに行きました。
そこで世界が分岐しているのではないかという話です。
既に書きました通りハピメア2ではまだ夢の世界のお話なのです。
そして、その夢は誰の夢か?という話に当然なってくるわけですが、それは消えたはずの有栖の夢です。
有栖と完全に混じった有子の世界を便宜上Aとします。そしてハピメア2の世界をBとします。
そもそもAの世界で有栖は有子と合体したわけですから『夢』なんて見ることは出来ない筈ですよね。
しかし、Bの世界では有栖は完全に有子と混じらなかった。だから後悔の残滓として夢を見て透たちを巻き込んだ。と、自分は考えております。
舞亜によれば、有栖は今まで、つまり前作の時点で夢を自分の都合のいいように改ざんする主人公達を見てきました。それはとても甘美なものでしたが、同時に『ダメ』なものであると感じたわけです。
だから有栖は無意識のうちに都合よく夢を見ることを拒んだ。そうして生まれたのがBの状況下での有栖の夢である、と。
一度崩れたパズルはもう一度組み直さなければいけない。そういう理由で透は夢のカケラを集めに鍵を使います。
夢の残滓を集めれば、あるべきものはあるべき場所へ、抱くべき想いは抱くべき人に。
全て元の鞘に戻るだろうと舞亜は言います。
と、いうことはです。現実世界で弥生や咲、景子と結ばれる展開もあり得るということじゃないですか。
ここで前作の不満点に繋がるわけですが、私は前作の有栖ルート以外が報われないのが納得いかなかったのです。
舞亜ルートは別として、他の3人は全て都合のいい夢なだけだったなんて切ないでしょう?
ハピメア2ではその1点だけ、3人と『現実世界』で結ばれるシナリオを期待していました。
しかし、見事に裏切られた訳です。
これで、わざわざハピメア2が平行世界だ!!なんて言い出した理由が分かると思います。
だって、Bの世界では結局夢で終わりですよ?3人の想いは。恋は。
エンディング後、どうなるかと言えば有子と婚約してますから、透は。
夢のカケラを集め終えて、有栖は有子の中に有栖として残る事になって、それじゃあどういう落とし所を付けたのかと言えば有子との婚約でした。
…薄々感づいてはいましたよ?
だって、前作の透と大分違いましたから。有栖への恋を割りきれてないんです。
前作の終わりは確か「なんだ、きちんと有栖もいるじゃないか。大丈夫、お前は消えてないよ」みたいな感じだったと記憶しています。
ハピメア2ではずるずる有栖を引きずってます。ですから、どこかで薄々有子とくっついて終わりなんじゃないか?という想像が頭を離れなかったわけです。
少し話を舞亜に移します。舞亜は前作では透の中に居ることになりましたよね?
前作からマクガフィンの様な立ち位置ではありましたが、今作では更にその色が濃く、エンディング前のラストシーンでは透と決別します。
私の中では舞亜という悪夢の存在を透が受け入れ、透がなんとか折り合いをつけられる強さを身につけたものだと思っていたんですけれど。
そして、エンディングが流れ、目が覚めた隣には有子が。というオチです。
舞亜はあくまで案内人であり、夢を見せる…そうですね、前作でも舞台を整えることしかできないと言っていましたし、そういう『装置』なのでしょう。
そんな舞亜が『もう見せる夢は無い』と言ったんです。であれば、目が覚めて隣にいる有子はほぼ確実に現実世界での有子でしょう。
もしかしたら、なんてそんな余地もないのです。
何につけても性質が悪いのはストーリーで弥生、咲、景子と結ばれる未来があることを散々匂わせていた事です。
最初から望みがあるのと無いのとでは全然違います。景子が大好きな自分にとってかなりのショックでした。
あの3人の恋は所詮、夢でしかなかったのですから。
景子がご飯を作ってくれたのも、咲との間に出来た子供も、全部『嘘』なんですね。
ファンディスクに至っても報われない恋心とは一体どういうことでしょうか。
そして、景子の抱き枕カバーが特典に無いのはどういうことでしょうか。
まぁ、それは置いておくとしましても、ですね?やはり納得など出来ませんね。承服致しかねます。
原画がとてつもなく好みなのも悔しすぎます。これは景子に限らず全てのキャラに言える事です。
私に画力というものがあろうものなら非公式だとしても、3人とのその後を描きたいと思うほどに納得いかないです。
だから、せめてもの反逆と言う事で前作有栖エンドからの平行世界のお話だ、と思うようにした次第です。
ハピメアを通して考えてみると、事実上選択肢に意味は無いわけです。
公式が有子とのエンディングのみを用意したと言う事は、透が最愛のトラウマを克服し、有子と結ばれる物語。それがハピメアなのですから。
大きく括ってしまえば他のヒロインも舞台装置でしかなかったわけですな。
ここまで読んでいただけたなら、一言感想の意味もご理解いただけると思います。
皆まで言うなってやつですね。
ほんと、未来ノスタルジアといい、今作といい、どうして無駄にSFチックな要素を絡めて微妙な着地点を用意するのでしょうか。
というわけでパープルソフトウェアさん、オッドアイ有子の世界線という程でもう一本出しませんか?え?だめですか?
なら、原画家さん据え置きで普通の萌えゲーとかダメですか…?
未来ノスタルジアの杏奈ルートの様な微妙な後味は今回で最後にしてほしいです。
何はともあれ、ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございます。…そんな酔狂な方がいらっしゃるかどうか甚だ疑問ではありますが。