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ともしびさんのまじかるサマー壊決天使 エグゼキュートの長文感想

ユーザー
ともしび
ゲーム
まじかるサマー壊決天使 エグゼキュート
ブランド
あんく
得点
78
参照数
594

一言コメント

ハイテンションでありながら、まったりとした気分にもなる良質なバカゲー。バカゲーが好きな方にはお勧めです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

タイトルで損している気もしますね、このゲーム。
パッと見てバカっぽさが強く伝わってきませんし。


人類を滅ぼそうとする組織から人類を守るために、地底王国のプリンセス兼ガーディアンであるリルカ・エグゼキュートが地底からやってきます。
そして、リルカはいきなり主人公の生活の糧である銭湯「鶴の湯」の湯元を破壊。
一応お詫びとしてリルカは人類救済より主人公の生活を優先して鶴の湯で働くことに…。

こんな感じで物語は始まります。
最初は物凄く唐突です。
プレイするこちら側の準備が整わないうちに、エンジン全開で迎え撃たれます。
正直、ついていけないかもしれません。
しかし、最初の唐突さを乗り切って、展開に慣れてしまえば、だんだん楽しくなってくるはずです。
こういうノリなんだと理解できれば勝ちです。



これは何気に意欲的な作品なんじゃないでしょうか。
ヒロイン皆がボケまくり。
ツッコミ的ポジションが主人公しかいないため、ボケの大量生産ですよ。
シリアスなんて皆無に等しいです。
最後までおバカ一直線。
パロディネタはほとんどなく、ヒロイン達の暴走気味な言動で笑いを誘います。

ヒロイン達はそれぞれ味があってたくましいです。
ヒロイン4人+サブが2人います。
このうち非常識人が4人、常識人が2人です。
笑いの傾向としては、主人公や常識人のうちの一人である主人公の幼馴染の浅田あかねが、非常識メンバーズによって起こされるトラブルに巻き込まれる形が多いです。
しかし、常識人2人も常識人の皮をかぶっているだけのような存在なので、一皮むけて暴走し始めるともう大変な状況になります。
そして、常識人の暴走にさえも巻き込まれる主人公…。

こんなちょっと可哀想な感じもする主人公ですが、ただ振り回されるだけのへタレキャラクターではありません。
ヒロイン達の暴走を何だかんだ言いつつも受け止めることが出来る度量の大きい男です。
そして、単なるツッコミ役に納まらず、貪欲に笑いを狙う攻めの姿勢を忘れません。
締めるときはビシッと締めてくれるので、素敵な良い主人公です。


上記したように、非常識なヒロインたちが暴走しまくる作品ですが、彼女たちはかなり傍若無人です。
居候の身でありながら、そのことを気にしたり、尽くしたりとかそういうことはありません。
ひたすら我侭に生活します。
そういう笑いを狙っていった作品なので仕方ないのですが、合わない人には合わないかもしれません。

しかし、そんなヒロインたちがいるからこそ光るヒロインもいました。
それは、幼馴染みである浅田あかねです。
我侭放題なヒロインたちのなかで、彼女は主人公に対してとても献身的です。
彼女は主人公のことが好きという設定なので、突然に主人公の周りにあらわれた他の女の子たちに警戒しながら、主人公に振り向いてもらおうとひたすら尽くします。
控えめに自己アピールしたり、これ以上主人公の周りに女の子が増えないように主人公と自分の関係を誇張してみたり。
ですが、なかなかうまくいきません。
そんな状況にやきもきしている彼女はかなり良いです。
こういうタイプのヒロインはあまり目立てず、他のヒロインに圧倒されてしまうことが多いような気がするのですが、この作品のように傍若無人なヒロインたちに囲まれていると、目立って輝いています。
この作品では一押しのヒロインです。

そして、この浅田あかねを担当していらっしゃる春村さゆなさんがうまいです。
他の作品で見たことがなく、調べてみても出演作は少なかったのですが、良かったです。
草柳順子さんのリルカにあったはっちゃけた演技が素晴らしいのは当然なんですが、春村さゆなさんもあかねというキャラにあった好演をしています。




総評

バカゲーです。ヒロインたちはひたすら傍若無人に暴走しています。
こういう状況を広い心で楽しめるバカゲー好きな方にはお勧めの一作です。
シリアスをどこかに捨て去ってしまいたいときにやると、色んな意味で癒されるかもしれません。





最後に、作中で妙に気に入ったセリフがあったので。

「これからはここは私の家でもあるんだもんね。湯船でも船は船でしょ?ここが私のホームシップよ。」
                                             (レイティア・ブートロック)