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けyさんの猫撫ディストーションの長文感想

ユーザー
けy
ゲーム
猫撫ディストーション
ブランド
WHITESOFT
得点
90
参照数
873

一言コメント

言葉とクオリアで世界を作る素敵な物語

長文感想

OPに惹かれて買ったがずっと放置してた作品。蓋を開けてみればものすごく面白かった。

まずタイトル画面の時点でBGMがものすごくいいことに驚いた。BGMの数自体は少ないが、まったく不満がないほどどれも素晴らしかった。
日常パートは個性的なキャラクターばかりいるためかかなりハイテンションなノリ。飽きることはなかったし、家族の温かみも自然と感じさせられるいい日常だった。
本題の個別ルートはどれも考えさせられる一筋縄でいかないものばかりだった。

式子:終わらない永続性をテーマにし、ウィトゲンシュタイン的な考え方を前面に押し出した幸福を求める話。人間であることすら止めてただ感じるままに幸福を求める。本当に終わらないというのはものすごく不気味なものだと思えた。

結衣:式子とは似て非なる不変性をテーマにした話。こちらは哲学でなく物理学がプッシュされていた。また、式子ルートではほとんど触れられなかった舞台設定について語られた。式子ルートでは恐ろしさすら感じた永遠がこちらではとても綺麗なものに思えた。

ギズモ:かなりイレギュラーな存在であるギズモはルート的にもイレギュラー。望んだ家族を自ら切り捨て奇跡を起こす。とても素敵な話だった。

柚:他のルートとは違って現実と向き合う話。普通のゲームでも見られるベタな展開だが「猫撫ディストーション」ではとても価値のあるものに思えた。最も「家族は揺るがない」を描いていたと思う。

琴子:舞台設定が明らかになる。「歴史が私にどんな関係があろう。私の世界こそが、最初にして唯一の世界なのだ。」を地でいくような話。言葉とクオリアで世界を作る。感じたことから自分で世界に意味づけし、世界を変えていく。こういう考え方はとても好き。
あと琴子がものすごくかわいい。琴子の「お兄ちゃん」は反則だと思うの。

厄介な話ばかりだがテーマ自体は分かりやすいため心に響く。
人を選ぶ作品であることには間違いないが非常にお勧めしたい作品。


[90点以上である理由]
○good
 ・パワーのあるOP
 ・高クオリティのBGM
 ・Keyを彷彿とさせるような日常パート
 ・キャラがいい
 ・哲学満載の元長シナリオ
○bad
 ・↑のgoodのうち、上から4つに惹かれたユーザーを引き離すので注意!
 ・謎が残る