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けyさんのサクラノ詩 春ノ雪の長文感想

ユーザー
けy
ゲーム
サクラノ詩 春ノ雪
ブランド
得点
80
参照数
1717

一言コメント

うわぁ…こいつは面白いな…

長文感想

 やれるだけのケロQ系作品をプレイしたため、最後に『春ノ雪』をプレイ。10年以上延期を続けてもなお期待の声が大きい『サクラノ詩』だが、この体験版をプレイしてその理由が分かった。

 今から6年前に出た体験版だが、グラフィックはこの時点でも高クオリティ。桜の花びらがちらつくなどの演出も凝っていた。さらにBGMは、まだ序盤なのに既に『素晴らしき日々』クラス。素晴らしいの一言。また、テキストが非常に良く、スラスラと読めた。どこか悲しい雰囲気は『素晴らしき日々』に近い印象を受けたが、主人公直哉がスレた感じで、『モエかん』にも似た雰囲気であった。ギャグはキレキレであり、デタラメな登場人物たちを上手く使っていて日常パートがとても面白かった。日常パート多めなのは『H2O』のようであったが、あちらと比べてくどくなく、気持ちよくプレイできた。また、ヒロインたち(結局誰が攻略ヒロインなのかよく分からないが)も可愛い。
 
 藍はお姉さんのような雰囲気を持つ昔からの知り合い。実際教師で年上だが、見た目は少女。大人のお姉さんとしてしっかりとした中に女の子としての可愛さがあり、いい愛されキャラクターだった。あまり攻略ヒロインという感じはなかったが、どうなんだろう?個人的には非常に藍ルートが欲しい。
 雫はよく分からない。そもそも一人だけ学校が違うがどうやって話を作るのだろう?全く掴みどころのないキャラクターのためまだなんとも言えないが、可愛いところはちゃんとあるため期待は大きい。
 ノノ未は√aaaで何度も登場したため、あまり新鮮な感じは受けなかったが、元気で可愛く、後輩らしい後輩キャラクター。しかし、なかなかヘビーな事情を持っていそうでルートが気になった。
 真琴は相変わらず鬼のようだ。気さくだが、城山たちから金を巻き上げたり平気で恐喝したりとやることがえげつない。しかし、ルートに入ったら可愛さが爆発する予感があるので楽しみ。
 稟は直哉の幼馴染。ただし、ずっと前に別れた娘で、転校生として現れる。久しぶりに会ってどういう風に話せばいいのか…と直哉が手探りの状態で悩むのはとてもいい。昔の記憶は共有していても、今は違う。変わらないものと変わったものを上手く描いていて、これぞ正しい再会の姿だと思った。どう考えても話の始動役だし、『H2O』でも重要な役割を果たしていた。きっと『櫻の森の上を舞う』でも重要なポジションを占めているのだろう。どうなるか楽しみだ。
 里奈も後輩。だが、ノノ未よりも絡んできて若干ウザめ。直哉に殴られているため、攻略ヒロインの可能性大。調子に乗りまくりでテンションが高く、日常を盛り上げてくれそうなムードメーカー。しかし、二人きりになると途端に雰囲気が変わる。はまじみたいに、ルートに入ったら感動させられそうな雰囲気を感じられ、楽しみだ。
 優美は名前の通り清楚な感じ。相当テンション高めの面子ばかりの中で異彩を放っていた。とはいえ、男に対して容赦がないあたり流石美術部メンバーといったところか。
 雪路はどうなんだろう?『櫻の森の上を舞う』でも登場するのだろうか?琢磨と結ばれずに直哉と結ばれるというのは変な感じがするが。しかし、雪路のデタラメぶりは美術部メンバーのそれである。できれば登場して欲しい。
 櫻は謎めいた感じのヒロイン。乱暴で気が強く、直哉の女の子版といった感じ。キーパーソンであるのは間違いない。クセのある直哉と対等に渡り合う存在というのは面白い。

 ケロQ系作品は序盤は微妙だが、後からエンジンがかかるというのが私の印象だ。しかしこの体験版は既に面白いし、美しいし、キャラクターの可愛さも出ていて非常に良い序盤だった。

 枕が作られた目的は、すかぢにできなかったことをすることであったらしい。サクラノ詩は枕の処女作(まだ出てないが)であるため、その傾向が最も強い作品だといえる。当時のすかぢにできなかったというものは、すかぢ以外のライターが書くか、すかぢが変わらなくてはできない。だから、『素晴らしき日々』という当時のすかぢとの決別を完成させた後だからこそ出せるのかもしれない。そう考えると11年という延期期間は必要だったのかもしれない。まあ、『終ノ空』をプレイしているわけでも、10年以上追いかけ続けたわけでもない私が言っても詮のないことだ。しかし、ここ数か月ずっとケロQ系の作品をプレイしていた私でも、これまでの作品の中から彼らのサクラノ詩に対する並々ならぬ執念は感じられた。その彼らがとうとうサクラノ詩を世に出す。『H2O』の持つ美しさや、『しゅぷれ~むキャンディ』の持つキャラゲーとしての魅力もあり、まさに集大成といった感じがした。それなりにホモホモしいし。さらに素晴らしき日々のその先を描くというのだ。そのシナリオにも期待せずにはいられない。
 たくさんのケロQ系作品をプレイし、さらに引き込まれる体験版のおかげでさらに期待が高まってしまった。せっかくなので、『櫻の森の上を舞う』の方の体験版はやらず、製品版を待つことにするつもりだ。『春ノ雪』の雰囲気のまま各ルートも続いていけば、間違いなく名作~傑作になると思う。さて、どうなるか。とても楽しみだ。