「朱に交われば赤くなる」という。本作がエロいとすれば、シーン自体がそうだというのは勿論のこと、舞台の南総町全体が発している匂いにも因るのだろう。インポ気味の読者諸兄は是非、町の瘴気を股間一杯に吸い込んでみよう。
凌辱ゲーで性奴隷だの肉便器だのと連呼されている様子を目の当たりにすると、遺憾ながら下半身が反応しそうになるのだけど、一方でどこか白けている自分を見つけることがある。「そこまで盛らなきゃいけないのか？」と。お疲れの諸氏に宛てて、拙いながらもこの案内をお届けしたい。
本作の舞台・南総町は、日常から切り離された魔境だ。ド田舎にあって地勢的に周囲から隔絶されているから、というだけではない。一見すると普通の研究都市・企業城下町のようで、実は町内では性的放縦がまかり通っていて、男どもは性欲を満たすべく目をギラつかせている。フ●ンス書院文庫風に表現するなら、性臭の濃い町、といったところか。諸設定もフラ●ス書院文庫風のＢ級テイストが匂い立っているのだが、実用性に特化した仕様として目を瞑ることにしよう。
ヒロインも読者も、いつのまにか土地柄に感化されてしまう。いつのまにか、だ。物語は女子大生が南総町に転入するところから始まり、彼女は町の実態をプレイヤーと共に目撃することになる。そして深入りしていった末に魔境に呑みこまれて同化し、妹や先輩とともに性交に耽るようになる。堕ちていく過程が性急すぎるのには不満を覚えたのだけど、常勤の性奴隷として汚ッサンの慰み者になる彼女たちは、文句なしにエロい。ここは南総町。裏通りに一歩足を踏み入れたなら、性欲は当然かつ重要なものとして全肯定され、呼応するかたちでプレイヤーの性的関心も惹き出されるのだ。
機能不全でお悩みの男性諸賢は一度、南総町を訪れてモブキャラに加わってみよう。本作はヒロイン視点で進むゲームだから、プレイヤーの劣情を肩代わりしてくれるような男性主人公は存在しない。町に潜入した私たちは、名もない町民Ａとして当たり前のように、他のモブの皆さんと共に彼女たちを取り囲んでイカガワシイ行為に及ぶことになる。只の一般町民にもそうする資格があって、読者は矢鱈カッコいい男性主人公に自己を投影せずとも、彼女たちと容易にハードなプレイに勤しめる。南総町民の特権である。
もっとも町に入ったが最後、五体満足で生還できる保証はどこにもない。股間の安全には呉々も留意されたい。
[キャラクター]
亜季奈 ＝ 美帆 ＞ 玲 ＞ ※奈那子
※食べられません。狙っているプレイヤーは要注意。
絵柄は萌えゲーっぽいのだけど、内面はリアル寄りの造形。脅しにすぐに屈してしまうのは残念で、まるでシナリオにキャラが動かされているようだ。とはいえ美帆や玲はともに芯の強い女性として描かれていて、体液まみれになっていく様子が哀感を誘う。何とも嗜虐的だ。