忠臣蔵→新選組から順調にクオリティが落ちている
下調べの量や基本的なシナリオの流れは悪くないのだが、あまりに美点がなく、これを良作と呼ぶのは生理的嫌悪感が強すぎて不可能だった。とにかくツッコミどころが多く、とはいえ70点以下にするほどクソゲーにもできず、75点評価としている。
bad
■しつこいを通り越して目的を履き違えているとしか思えない薀蓄
義経一行が各地を転々とするシナリオの都合上、また歴史的背景のある地もあるのは理解しているが、それでも薀蓄が多すぎる。
当時は貨幣があまり流通しておらず、米での物々交換が主流だった、のようなものは世界観の構築の上で説明していくべきだが、
・何年に誰々が~した
・ここには~の逸話があって
みたいな話は作品自体にまったく必要ないわけで、とにかく鬱陶しいの一言。
特に一部、二部の担当歴女ヒロインが事あるごとにこの解説を口にするため、キャラクターの愛着という点でも深刻な悪影響を及ぼしている。大げさに言えばセリフの2割はこれなんじゃないかと言いたくなるほど
花粉症の許容量よろしく、序盤はなんとか耐えられるものの、あまりに花粉が飛びまくるせいで大体の人間は途中で症状が現れると思う。
■ライターの悪癖
・その時の俺は知る由もなかった
・それが~の最後の機会だった
・あんなことになるなんて
まあつまんないシナリオでよくみるテンプレワード。
目一杯贔屓目に表現すれば後の不安を煽って読み手に緊張感を持たせたいんだろうけど・・・結果明示した上でどんだけ先の期待に繋がるのかと。純粋に物書きとしてのセンスを疑う
■家臣団の役割が薄い
全員いてもいなくてもいいような存在感の薄さ。
ヒロインが2人に絞られてしまっている関係もあって、歴女様の知っている義経の郎党が史実通りに仲間になりました程度の印象しかない。弁慶は最序盤の五条の大橋がピーク、三郎は活躍が記憶にない、継信と忠信は藤原へのコネと姉妹ねってくらい。
■ちょっと記憶にないほどのご都合&投げやり設定
当然主人公たちを過去に送り込んだすいぶんさんのことだが
義経の子孫です → ほう
先祖代々、平和のために働いてます → なるほど
タイムスリップできます → そりゃな
唐突なループ能力 → お、おう
催眠能力 → お前何いってんだ?
とこのしょうもないシナリオを成立させるための不思議要素が全部詰め込まれており、これほど雑な設定を一個人にねじ込んできたシナリオはちょっと記憶にない。
特にタイムスリップに関しては現代の強力な武器や、主人公たちへの事前説明がなされなかった合理的な理由が一切なく、作者が何も考えてなかったんだなあとほぼ断言できる。これは本作に限らないが、こよーて氏はこの手の不思議設定を見せるセンスが致命的に無いと思うので余計なことはしないほうがいいと思われる
■存在理由が曖昧な兄
現代ではすでにラスボスの手によって命を落としているが…ツッコミどころが多すぎる
・頼朝と同一視させる必要がない
・神社に伝わる役割が兄がなくなった時点でで主人公に引き継がれていないのが異常
・現代で封印が解かれたのに、なぜ過去にラスボスが復活しているのか 等々
また、兄が亡くなったことによって主人公は体操を止めているが、作品全体からするとだからどーしたという程度の影響しか無い。
■キャラクター像がまったく安定しない頼朝
異常な猜疑心により必要以上に義経を敵視し続け、作中を通して無能ムーブが目立った頼朝だが、最終盤は突然物分りが良くなり、また弟への態度も改善される。何もかもが唐突すぎて言うことがない
■兄同様に無能感が漂う弟
特に頼朝絡みが酷い。
亡き兄の面影を重ねて一方的に慕った挙げ句、冷遇されても信じ続け最終的には険悪になる、ここまではまだいい。
が、それを繰り返した挙げ句(ifに終わったとは言え)自分の子供まで殺されて関係改善も何も無かろう。
主人公視点では大好きな兄(のそっくりさん)であるんだろうが、読み手視点ではそうならない以上、そこにフラストレーションがたまることが理解できなかったのだろうか?
どうせなら頼朝と義経を良好な関係で描写しつつ、周囲との関係や頼朝の覇道のために袂を分かった、というふうにでもすればドラマ性も生まれたと思うのだが
■読者に優しいご都合設定
昨今のなろう的とでも言うべきか、敵が配下として蘇らせた仲間が正気を取り戻す展開。
安っぽい上に、じゃあ元の別れのシーンはなんだったんだよと。
タイムスリップは作品の根幹としてのご都合だが、これは決してそうではない、やってはいけないご都合であることがわからないのか
■デウスエクスマキナ
ラスボスは強い・・・まだ勝てない・・・せや! 強すぎて島流しになった助っ人よんだろ!
バカだろ、お前
鎌倉に立てこもったとか以前に、奥州藤原氏を数人で殲滅できるレベルの化妖が複数いるのに、一足とびにそれを解決できる戦力を終盤に突然準備できるとか…くだらなすぎて失笑する。そして唐突に始まる修行シーン
鹿狩りで妖怪倒せるようになるとか本当すごいですね、あこがれちゃうなー
■タイムパラドックス
頼朝が生家の神社を建立してから出ないとタイムパラドックスが起きてしまうのでは!?
としつこいくらい作中で牽制されているが、
・突然過去にすっ飛ばされた人間が
・なぜか武将が女ばっかりの世界で
・自分が義経の代わりになってて
・いつ元の時代に戻れるかも怪しいのに
・タイムパラドックスだけは非常に気にする
という、実に不思議な心理状態。
アホか、こんだけおかしい世界から戻れるならさっさと戻るに決まってんだろ
■感動のないエンディング
事態が解決したので、郎党と別れて現代に戻ります!!
なお郎党は勝手についてきてるし、そもそもタイムスリップに制限なんかないんだからいつでも会いに行けますね!!
…くだらねー
後、回数も持ち物も制限のない時間移動者さまは、主人公の大切な兄君は助けてくださいませんので?
自分なら真っ先にお願いしますが?
あ、一個だけ良いところ忘れてた
泰衡は可愛いよ、泰衡だけは。
でもヒロイン2人の余波でHシーンも掘り下げも何もないから結局駄目だね