お祭り的な、という意味ではない模範的な出来のファンディスク
中身が良くなった、というよりはもともと設定的に見栄えしていた部分、つまり椿ルートにビっと焦点を絞った上で、無理のない展開を無難に描ききったといったところ。もっと言ってしまえば間違いのない素材を問題なく調理した結果、美味しい料理が出来上がったような感覚が近い。FDだから許される焦点化ではあるものの、良いものは良い。消極的な意味でどうしようもない桜夜を放置したのは英断。
good
■カグヤ
椿の対立軸としての設定が非常に整っていて「そりゃ朱雀院にキレてもしゃーないわ」と思わせる下地が(前作から続いて)ちゃんと整っており、敵方とはいえ中々に引き込まれる。終盤までの暗躍、というか絡みこそ若干中だるみしているものの、悪党がしっかり悪党をすることは物語に置いて大事な要素だり、本作はその要件を満たしている。
よくある不満としてはそんなグダグダやってないでとっととターゲット始末しにいけよ、的なものがあるが、カグヤの場合「刀」であることから「使い手」を求める点もそこをよくカバーしており、意図した結果ではないようには思うが展開にマッチしている。
■椿
FD元作品からの設定の踏襲、そしてカグヤとの対比が自然でよく出来ている。
キャラが抱えている闇が云々、といったシナリオは往々にして茶番になりがちだが、朱雀院と椿との関係性は前作で過不足無く描かれているため、椿の闇部分については(方向性は少しずれるが)十分な説得力がある。
bad
■都子
やっぱり設定が浮いている感が否めない。最強キャラを作りたいor見たいという需要はあるのだろうが・・・
椿の剣術面での嫉妬の対象としては才気あふれる桜夜がいるため、都子がいなくても物語自体に不足はないと思われる。また同様の理由でFDの中だけでも役割がかぶる桜夜が(特に終盤)不要・無能になってしまっている。
本作で葵が優秀に見えるのは(椿との関係を差っ引いても)都子的な存在が無いことが大きい。
カグヤが椿を求める点は非常に自然ではあるが、キャラの役割を考えればそこは都子に負わせるべきだったようにも思う。まあそれを不自然かつ不完全な形でやったのが桜夜ルートだったわけだが。
■妖刀の扱い
まあやっぱ不自然でしょうがない。
門外不出の宝物を研究者に見せた ← わからないけどわかることにする
その少し後に盗まれた ← まあそういうことはあらーな
でも被害自体は公表も周知もしません ← はあ?
物語的には接触した研究者が盗んだ、もしくはカグヤがそう仕組んだということになるのだろうが、この辺のカバーが皆無。研究者は序盤で声だけ登場?した程度で後は何もなし。盗まれた側の朱雀院も研究者側を問い詰めたような描写もなし。なんというかものすごく悪い意味で優しい世界。
まとめ
普段重箱の隅をつつくような不満点をあげつらう自分でもそこまで突っつくところがない。
手法のひとつとしてぜひ今後も引き継いていただきたい