ジャンルは代表できないが、年度は代表できる良作
個人的な尺度では「ものすごく面白い」と「かなり面白い」の中間くらいです。
ジャンルを代表する、というのは完成度で遥か上を行くシュタゲがある以上難しいのでしょうが、それでも年度の代表する作品では間違いなくあると思います。
せめて最終盤にもっと丁寧さや説得力があれば・・・
良かったところ
■舞台設定の優秀さ
(倫理、経済の面で)現実的・・・かどうかはさておき、現代美術に反発して作られた舞台設定には素人ながら非常に感心させられました。フィクションで重要なのは現実的にありえるかどうかは重要ではなく、如何にそれらしい説明を付けられるかどうかで、ここが本作で一番評価している点ですね。
一発の衝撃という意味ではあかべぇの車輪の方が上ですが、作品全体に渡ってテーマ通りに緻密に設定を組み上げた、という点ではこちらの方が上かもしれません。
■こちらを立てればあちらが立たず・・・
片方が目的を達成すればもう片方に時間を戻され、あちらが達成すればこちらが・・・というループは中々に面白かったです。
名作「steins;gate」ではこれは紅莉栖とまゆしぃの選択であり、その障害を歴史の修正力や世界線という理不尽なシステムに求めましたが、本作ではもっとわかりやすい「人間」にそこを負わせており、これはこれで正解だったように感じます。
悪かったところ
■ユネ不要説
好きな人にはすみませんが、この娘要りました?極端な話、あかりんご食べて弓になってくれる人間であればどんなキャラでも問題ない構成としか思えないんですが。
キリエはいわば壁に穴を開けるようないわば攻め手としての役目が、コトハにはリンカというキーワードに合わせて物語の糸口を広げる役割が、サクヤに至っては本作の最重要人物です。
が、ユネにはこれが無いです。たまたまりんご食べて弓引いただけで、それ以外にユネでなければいけない理由がなんらありません。弓役は戻った過去で記憶を失いますから、乱暴に言えば他の誰かでも務まります。実際最終盤もサクヤとユネの扱いがごっちゃというか、無理して出番を作っているように感じます。
■主人公無能説
まあどうしてもこういうキャラの行動の幅の広い作品では感じがちな不満なんですが・・・一回目のループからユネに協力求めましょうよ。
記憶保持してるのは自分だけでした、はいそうですか一人でがんばりますって・・・危機感ゼロと言われてもしゃーないです。限られた時間を限られた人間で、ましてや手がかり皆無の状況で打開しなければならない訳で、事情を理解している人間が1か2かは雲泥の差です。
ましてやこの手のループもので記憶を頼りに信用できない味方を説得するのっていい意味での鉄板だと思います。steins;gateではスプーンやらで紅莉栖を説得し、高畑京一郎のタイムリープであれば一生懸命テスト勉強していましたよね。
別にシナリオ上難しければ説得に失敗したっていいんです。それはそれで展開にメリハリが出ますから。でも何もしないのは論外だと思います。
一応、ループする上でユネにデメリット負わせてはいますが、作中の大部分ではだからどーしたという程度のものでしかなく、それ故にループごとの深刻度が極めて低いのが非常に気になります。ループに制限をつけたり、デメリットを付加したところで本作の構成に支障が出ることは考えられないので、これは単純に失敗でしょう。
■不思議設定と舞台設定の食い合わせ
二人が弓と矢となってタイムリープするという設定は単純に面白いです。また、本作の舞台である町も、先に述べたように魅力的で、緻密に作り上げられています。どちらも本作の魅力の主要因であり、片方を欠くことはできないのですが・・・
なんかこれ違和感ありません?
町自体は序盤から「なにかここ辺だよね?」とプレイヤー視点でも主人公目線でもきっちり演出されていますし、その理由については「夢の世界」などのふわっとした理由ではなく、人間の意図も絡めて極めて現実的・論理的に説明されます。
しかし、その意図を読み解くための手段は、その現実的・論理的な町でなぜか手に入った魔法のりんごです!というギャップがどうしても自分には受け入れられないです。これがこれといって特徴のない、現実準拠のどっかの都市です、というなら逆に単なるフィクションとして受容できるのですが・・・
二代目の町や、それに関わる絵や奇跡、みたいな感じをもっと前面に押し出して多少なりとも説得力を出す必要はあったのではないでしょうか?
少なくとも「ご想像におまかせします」みたいな主要設定は、作者の怠慢にしか感じないので好きになれません。
■謎解き(説明)パートが長い
いやほんと長いです。
そこまで伏線を引っ張りすぎたといいますか、最終盤の展開が雑すぎたといいますか・・・
出来の悪い小説で、登場キャラが設定を延々喋ってる感じとでもいいますかね?