テキスト枠本当なんとかして。技術でなくこれは怠惰
まず各キャラ短評から
■桜夜
キャラクターの設定としてこそ真ルートになっているが、終盤は特に見せ場もなく、実質その場にいるだけで酷く盛り上がりに欠ける。親友アピールが恋人になるまでの過程も雑で、正直出来の良いシナリオとは思えない。これが最終ルートであるため作品自体の肩透かし感が非常に大きい。
■椿
キャラクターとして鬱屈した部分を抱え持つ関係で起承転結が描きやすく、比較的シナリオがしっかりまとまっている良ルート。難点をあげれば「転」に入るまでの主人公の役割が皆無であり、そこまでの読み応えがまったくないこと。
椿自身にキャラとしての課題がしっかり作れている結果、それに応ずるサブキャラも自然な演出が可能となり、結果としてファンディスクが作られるのも納得の出来。
■しおん
抱える設定故に起承転結がしっかりできているのは椿と同様。真ルート的な話の重さは無い代わりに、ゲームの1ルートとしてはほどほどにまとまっている。
問題があるとすればしおんの異常な精神適応値(だっけ?)が何度もアピールされる割に試合で役に立っている印象が薄いこと。プロ選手の7倍8倍というどんぶり感覚で数値が盛られているのに、学生レベルの試合でゴリ押しすらろくに結果が出せないのは如何なものか。むしろその出力なら対戦相手に怪我を負わせて懊悩するくらいの展開はあってしかるべきだと思われる。そうでなければそんな数値などあっても無意味であって、設定倒れとしか言えなくなってしまう。
■シア
(少なくともメインとしては)いらん
剣士+サポーターという関係で基本的に物語が進む以上、サポーターとサポーターでシナリオが書けるわけがない。
見どころなし山場なし、スキップしても何ら問題のないルート。
以下、感じた不満点について
■およそ可視性という概念に欠けたテキスト枠
今までプレイしてきたゲームの中で一番酷い、というか見づらいと感じた事自体が初めて。
これは体験版でもやってもらえれば一発でわかるのだが、テキスト枠の下部から上部に向かって正気とは思えない透明化のグラデーションがかかっている。
透明度についてはかろうじて調節可能だが、この設定自体がコンフィグではなくその手前のショートカットにしか無く、また最大まで明度を下げても100%にならないため常に背景が透過されている。また、フォント変更でゴシック明朝等は変更できるが、テキスト色変更は仕様そのものが存在しない。
そしてさらに不味いことに作品自体の背景やキャラクターの衣装に白基調が非常に多いため、常にこのストレスを抱えて読み進めていくことになる。
■行動原理そのものへの(ちょっとした)違和感
比較的小さめの不満ではあるのだが、キャラの行動が少し作り物っぽい。
初めて出会ったはずの人間が自分の名前を知っており親友などと言ってくる、さらにその人物がクラスに転校してきたにも関わらず、仔細を訪ねようとしない。
日頃から付き合いのある先輩の(行方不明になっていた)姉が突然現れたにもかかわらず、そのことを本人に全く告げない。
重大なトラブルに巻き込まれ命に関わる事態にも関わらず、数日中にはなんとかすると言われるだけでことの張本人に対して監禁監視拘束何一つ行われない。
生身の人間であれば絶対に行われないようなシナリオの流れが平然と進められると読み手としてものすごく萎えてしまう。
■綾瀬
いらん
とは言えないがいくらなんでも真ルートに行くまでの存在価値がなさすぎる。
伏線動線、もっとシナリオ上での役割をもたせることが出来たはず。ほとんどの場面でサブキャラ以下の出番と役割しか無い
■メイドさん
色々と下地こそ説明されているものの、やはり行動が突飛すぎて物語に入り込めない。
これについては説明不足ではなく、説得力があまりに欠けていた。
行動の動機は理解できるにしろ、現状からその結果までが一町くらいは幅跳びしてしまってる感がある。
まとめ
鍛冶に関する知識も程々に差し込まれており、(多分)独特な世界観の演出には成功していると感じる。
ただしシナリオ自体に突出したものはなく、良作ラインが80点として見れば執筆時点での中央値78、平均76というのは実に絶妙に作品を評価していると言える。