素奈緒単体なら95点は付けたい。
かなり以前につよきす初代をクリアしたのでプレイ。
評判のすこぶる悪い2学期については未プレイ。
まず最初に、この3学期(ついでに2学期)が制作されたよく経緯がわからなかった。
出来栄えそのものは良いと思うが、初代と同じ設定・キャラ・舞台で同じような物語を作る必然性がどこにあったのか理解できない。
ライターと原画が移籍したからリメイクした、というくらいの認識で良いのだろうか・・・?
以降、各キャラクターについて個別に。
ネタバレはかなり薄目に。
■乙女さん
機械音痴+馬鹿正直+料理下手の大食いという、テンプレ的な姉キャラ。
展開としては可もなく不可もなく、キャラが好きなら問題なく楽しめるレベル。
だが、ルート中盤、レオが本気を出すシーンがあるのだが、これは後述する素奈緒がトリガーになっており、「こんなん素奈緒ルートでええやん」となってしまっている。
これはレオの性格設定が素奈緒との関係に依存しているため、レオの本気(=シリアス展開)を演出すると同時に素奈緒が浮かび上がるという、構造上の問題となっている。
■瀬麗武
乙女とキャラが被っている上に、2学期で追加されたためか他キャラクターとの絡みが薄い。
嫌いなキャラというわけではないのだが、そもそも必要だったのか疑問。
シナリオも特に見るべきものがない。
■カニ
フカヒレと並んでつよきす日常部分における最重要キャラであり、初代のほうがシナリオが良かったと思うキャラその①
突き抜けた馬鹿っぷりに金田まひるの声がなんともよく映える。
残念なのは日常部分での役割が強いが故に、本ルートでのシナリオが薄いこと。
初代つよきすではそこそこ読ませる展開だったため、質だけ見れば劣化してしまっている。
また、キャラの立ち絵は初代のままだが、原画変更のせいかCGとの違和感が有り、特にカニはそれが強い。
■姫
初代でのエリカが印象悪すぎたので飛ばし読みで。
初代では人間として好きになれないレベルだったが、それらはある程度緩和された。
適当な理由で親友が好きな男(=レオ)と付き合ったり、飽きて捨てたレオを親友に充てがって、その上で惜しくなって奪ったり、という後ろから刺されるレベルの展開が無くなったのは喜ばしい。
正直、偏見に近いレベルで初代姫の印象が悪いが、3学期単体で見れば恐らくかなり性格悪い女、程度に収まっているとは思う。
ツンの部分がさほど魅力的ではないが、デレ始めると早いチョロインの典型。
■なごみ
母親の再婚を認めらずにやさぐれている、突き詰めればただそれだけのシナリオ。
義父を認めない背景が浅いため、シナリオ自体が安っぽい印象を受ける。
付き合って以降はつよきす的な意味で可愛いが、レオは大して役にはたってない。
とはいえ、イチャラブが見たいだけであれば、決して悪くはないルート。
■よっぴー
初代のほうがシナリオが良かったと思うキャラその②
割合正直なヒロインが多い中、つよきすらしからぬ裏属性を持つ良キャラ。
サブキャラっぽい好意が普通に可愛く、他ルートで差し込まれる嫉妬もやはり可愛い。
また、その設定上からシナリオでのレオの果たす役割が他ルートに比べ大きく、シナリオの起伏も大きい。
しかしやはり初代のエリカBAD「聖域の崩壊」がよく出来過ぎており、どうしてもそちらと比べてしまう。
ライターが違うので仕方ないが、展開がマイルドになっている印象がある。
ただそれでもシナリオ・キャラ共に良い出来栄えであることは間違いない。
■素奈緒
誰がなんと言おうとメインヒロイン。一番可愛い。
出番自体は実はそれほど多くはないが、素奈緒の存在自体がシナリオのキーになっているケースも有り、現在のレオの人格形成にも影響した本作屈指の重要キャラクター。
利害調整というものが一切出来ず、ただただ不愉快な正論を振りかざす所が非常に可愛い。
彼女単体では空気の読めない馬鹿なのだが、レオがそれに対立することで場面をしっかり着地させるため、悪い印象が残らない。
※ひこうき雲の向こう側では、瑛莉の着地が悲しいくらいに出来ていない
シナリオの展開は初代でも大差ないが、過去や暴走を含む素奈緒というキャラの掘り下げなら明らかに初代、
和解までの流れなら断然3学期が演出的に優れている。
そして何と言っても、素奈緒が二度と傷つかないように信念を曲げたレオと、何があっても信念を変えられない素奈緒のすれ違いが絶妙。
最大の山場である弁論大会は、初代エリカBADを超える、つよきす最高峰の見せ場だと思う。
このルートひとつだけでも3学期を選ぶ理由になり得る良シナリオ。
とここまでべた褒めしたものの、難点がないわけではない。
先に述べた初代では掘り下げこそ自然であったが、二人の信念の違いは克服されておらず、あくまで好き合っていた同士が演劇部へのサポートをきっかけにくっついた、程度の話でしか無い。
3学期では和解は描写されているが、レオが信念を変えてから二人がすれ違うまでの描写が不足している。
互いが補完されることを前提としており、そういう意味では完成度が高くない。
また、素奈緒が乙女を慕っているのに絡めて、素奈緒ルートが乙女ルートの展開をなぞるので、ルート自体がどっちつかずになってしまっているのが残念。
とは言えいわゆる超常的な設定の無いゲームとしてはよく出来たシナリオであることも否定しようがない。
可能であれば 初代→3学期の順でプレイすれば素奈緒ルートをもっとも楽しめるのでオススメ。
※レビュー最下部に山場のシーン書き起こし有り。
■総評
ひこうき雲の向こう側では光る部分こそあったものの、総評としては「この人雑だな~」という印象が強かった。
(時系列的には逆だが)3学期では非常に波長のあう展開が合って良かった。
個人の好みを言わせてもらえば、各ルートで素奈緒との過去を決別させる演出が有れば最高だった。
(↑White album2のやり過ぎ)
―――――――――――――――以下、素奈緒のシーンネタバレ―――――――――――――――
レオ
「最小限で抑えられた問題が、大きく広がったせいで他人に伝播してしまった。あなたはその責任を負えますか?俺は嫌だ。だったら最初から臭いものには蓋をする。ガーゼを貼って、傷口は広げない。
いかがですか?あなたは、他の人を傷つけてでも、問題を広げるんですか?」
素奈緒
「……その、『他の人』には聞いたの?」
レオ
「――え……」
素奈緒
「その人に覚悟はなかったの?自分が傷つく覚悟は。
アタシはあった。あったと思う。問題が広がっても。それで自分が傷ついても構わない覚悟が」
レオ
「俺にはない。俺には傷つける覚悟なんて無かった。お前に怪我させたくなかった!
お前に怪我させるくらいなら、臆病にもなる。いくらでも変わる。
事なかれ主義?いいじゃないか。あんまり痛い思いしないなら、それが上手い生き方だろ?
なんで分かってくれない。俺はお前に痛い思いして欲しくないんだよ!」
素奈緒
「どうしてアタシの痛みをアンタが決めるのよ!
アタシは怪我なんて痛くなかった。自分を曲げるほうが痛いもの。
アンタが隣にいなくなったことのほうがずっとずっと痛かった!
アタシは……アタシはあのころの対馬が好きだった!」
レオ
「俺は嫌いだ!好きな女も守れなかった、あのころの俺が俺は嫌いだ!!!」