駄作ではないにしろ、細かな粗が多すぎる
エロゲーマーのRPG(というと若干齟齬がありますが)フリーク期待の新作。
弾数の少ない我々にとって、年末を過ごす必須アイテム――の筈でしたが、その結果と言えば「微妙」の一言。
以下システム、キャラクター、CG、シナリオの順に記述します。
@システム
ターン制のシンプルなバトルを採用。
攻撃によるディレイ(被弾すると、順番が遅れる)がわかりやすく表現されており、そこそこ目を引きます。詳細な理解のためにはチュートリアルを熟読する必要があるものの、未読であってもプレイに大きな支障はなく、お手軽なゲーム要素としては良かったのではないかと思われます。
また、経験値=★を各ステータスに分配し、その蓄積によって攻撃・回復等のスキルを得ていく方式もとっつきやすいので高評価です。
以下、難点について。
・運ゲーの側面
最大6人でのパーティバトルになるわけですが、パーティの陣形により、付加価値が加えられます。
アタッカー スピードが上がり、順番が多く回ってくるが、攻撃の的になりやすい
ウィング 中堅。付加されるステータスはない
ディフェンダー 後衛で防御力がアップ
となっていますが、防御力の高い仲間を前衛に置いても、後衛の仲間が集中砲火を浴びて撃沈することがままあります。特に相手の必殺技などは仲間によっては一撃で落ちるので、ダウンされたくない人はリセットを強要されることになります。
・無意味な連戦
RPGにはありがちといえばそれまでですが、
敵を撃破→(シナリオの上で)力不足で倒しきれず→加勢を得て連戦
というパターンが多い気がします。いわゆる負け戦闘を別にしても面倒くさいの一語に尽きます。さらに言えば、どうしても複数のルートをまたぐ都合上、同じような敵と何回も戦うことになります(同じルートの上でさえ、これは当てはまります)
ので、プレイすればするほど若干以上のマンネリ感は出てくると思われます。
@CG
私は着衣教の狂信者なので、着衣エロシーンさえあれば大概の不都合には目をつむります。
その基準から言えば本作は良作の範疇に入ります。
ただエロシーン少ねぇよ、これ
サブキャラのエロシーンも皆無。脱がせるのに、やれない。これ、ヘンね
@キャラクター
メインヒロイン全てがそれぞれトラウマのようなものを抱えており、敵につけ込まれます。読み物である以上、トラウマがあっても構わないのですが、1~4周までその繰り返しですので、はっきりいって飽きます。内容としても「そんなんで悩むなよ」というレベルのものばかりです。
個人的お気に入りは幼なじみの美優。もっとも彼女の出番は非常に少ないのですが
敵方であればピエロが悪役分を一人で頑張っているのでそこですね。
@シナリオ たぶん酷評します
メインギミックといいますか、平行世界やクラヤミがどうこうについてはとやかくいいません。流行と言えば流行ですし、RPG目当てなので救いようがないレベルでなければいいのです。
ピンチ→回避が多すぎて緊張感がなくなる例も多いように感じましたが、自分が気になったのはそうした大きいところでなく、シナリオの細かい部分です。
以下、多少のネタバレを加えます。
主人公である真悠人は幼なじみである二人と魔法使いになる約束を交わしています。
ところが、天才的な資質を示す二人にたいして、本人は養成機関であるアカデミーの入学条件であるCランクに遠く及ばない有様。
才能を認められ、直々にスカウトされながらも入学を渋る二人の面接に付き添いながら、主人公は一考に目のでないシミュレーターでの鍛錬を続けます。
ところが、街を襲ったクラヤミのピエロに、真悠人は二人の才能に嫉妬する心を咎められてしまい、動揺します。
・・・うん、ここまでは良い筋です。個人的に燃えます。
ところがその後、三人で行ったシミュレーターで真悠人が昇格し、入学の条件であるCランクに到達します。
・・・はぁ?お前冒頭からそこまで引っ張ってそりゃねぇだろ、とここから違和感が仕事を開始。
で、再び現れたピエロを追い払い街を救うために戦う中で主人公は力に目覚め、それと引き替えのように幼なじみ二人は魔法の力を奪われます。
最終的に二人は力を回復させるための施設に移ることになり、真悠人は魔砲隊の一員としてアカデミーに残ることに。
……いやいやちょっと待てって。
真悠人が所属することになったのは、アカデミーのエリート4人が所属する、唯一の(見落としがなければですが)街の防衛機構です。
しかも彼、あっという間に隊に馴染んで、メキメキ実力を発揮。ほとんど間を置かずに一員として足を引っ張らない程度に大空を駆け回ります。
……え、なんかおかしくね?
じゃあ最初から劣等感のようなものをひきずりつつも、一生懸命頑張ったのは何だったのさ?結果が出るのは構わないけど、いくらなんでも急すぎるだろ。
さらに違和感を加速させるのは、魔法使い養成機関であるアカデミーに、箒で戦える人間が他にいないことです。恐ろしいことに、教室の背景には申し訳程度に一桁の机椅子が並べられ、また授業風景もおざなりです。勿論学友なんぞいません。彼らにとってアカデミーは単に朝行って夕方帰るだけの風景に過ぎないのです。
実際、真悠人はほとんど実戦の積み重ねで成長したといっても過言ではなく、そこにアカデミーの存在価値はまったく垣間見ることは出来ませんでした。
……あんた、こんなとこに入るために頑張ってたの、と言いたくもなります。
また、上記のアカデミーに関して戦力たり得る人間がいないのが不自然極まりないです。
作中に出てくる魔法使いは数人程度で、しかも在校生ばかりです。
まがりなりにも超優秀な研究者とアカデミーを抱えた大都市が、その防衛を在校生数名に依存しきっているというのは無理があります。
……まあ、ルートによっては各都市から救援が来るケースもありましたが、私の記憶の限りでは、主人公達は交代制で見回りを行い、常に緊急出動もしており、他の戦力が常駐している描写はなかった(と思う)し、あったとしてもほとんど何の役にも立ってません。
そんな状況にも関わらず、5人目である凛子が戦力になる魔法使いとして参戦しても、さしたる追求もなくそのまま進みます。
……アカデミーでの有資格者5人→6人というのは相当に大きいことの筈なのですが。
他にもあります。
実は力を失った幼なじみ二人は、施設に向かう途中でピエロに拉致され、闇の先兵として操られてしまうのですが、幼なじみ至上主義の真悠人君、いざ敵として対面してもこれっぽっちも気付きません。
プレーヤーは拉致イベントを見ていますし、立ち絵も違いは仮面だけなので別として、真悠人はなにがしかの反応を示すべきです。いくら戦場とはいえ、大切な幼なじみが同じ姿、声、まして男女で二人揃っているのだから何も感じないと言うことはないでしょう。それにあんたら散々一緒にシミュレーターやってたやん。
……落ち着きましょう。そうです、或いは気付かずともいいんです。
ただそうするのであれば、始めの段階で二人が掠われるシーンなんて見せるべきではなかった。恐らく、二人が出てくれば100%プレーヤーは気付きますが、それでも事実として確定されない以上、真悠人が気付かずとも「仕方ない」と思う向きも出てくるでしょう。単純に、シナリオの効果的な演出が(全般にわたって)出来ていないのです。
※√に入ると突然真悠人が告白を始めるのは皆さん触れていると思うので割愛。
@総評
さんざ不満は述べてきましたが。
ゲーム部分は飽きやすいものの、総体として楽しめる水準を維持している。
キャラクターは特筆すべき点は少ない、つか美優攻略できないとかふざけんな
シナリオは平々凡々だが、細かいところでいくつもリアリティが出し切れず、人によっては違和感を持ち続ける羽目に。
とはいえ、RPG目当てで絵が好みであれば十分プレイに値するでしょう。