恐らく…というか、確実に元ネタはマキャモンの『スワン・ソング』。少しいじってはいるが、構成がかなりの部分で一緒。この小説を日本風にアレンジし、超自然的な存在を排除したのが今作。元ネタを読んでいなくても問題なし。瀬戸口氏の持ち味が最高に生かされている。
『CARNIVAL』で書いたことの延長線上にある作品。元ネタに依拠している部分が大きいので、このライターの純粋な筆力は前の作品である『CARNIVAL』か、次の作品である『キラキラ』で判断するのが適当と思う。
元ネタの『スワン・ソング』は核戦争後の世界。こちらは大地震後の世界。でも、季節が冬であることや、小さなコミュニティーの形成等がかなり似通っている。(といっても、これらのことは、災害物の作品だったら、構成が自然と似てしまうのだが)
で、この作品は、マキャモンの小説の解説書といえる。元ネタ小説は、状況描写中心に書かれている。一方、構成を似せているこの作品は、心理描写が多く書かれている。なので、元ネタ小説で書かれなかった部分を解説、もしくは小説に対する持論を書いているのがこの作品だと思った。
なぜ、解説書なのかというと、それはタイトルがそのまま使われているから。この作品を作る時に、タイトルを変えて発表しても良かったはず。それにもかかわらず、タイトルをそのまま使っているということは、純粋なオリジナルではなく、二次創作のようなものだという態度の表れだと思う。
読んだ人の中には、生存ルートに違和感を覚えたのではないか。それは、元ネタ小説をなぞっただけだからだと思う。
なので、この作品でライターの書きたかった物語の終わりは、生存ルート以外のエンディングにあると考えられる。これはこの作品をプレイした人の大勢が賛同してくれると思う。
『CARNIVAL』とこの作品をプレイしたら、このライターの欠点は構成力にあるのではないかと思った。『CARNIVAL』は別に小説が出されているらしいし、この作品は元ネタがある。
この点は、次の作品である『キラキラ』を読めば、欠点が多少克服されているとわかる。