【Ver.101】縦書き。現代もの。「プロローグ」といった印象。最後の続編の示唆は非常に納得がいかないが、物語自体は、一応、落ちがついている。ただし、登場人物に対してやさしすぎる世界観なので、ストーリーに深さや重さが今一つ見出しづらい。児童文学のように、読者が各々の頭の中で何かを見出せるような広さもなく、限定的な物語なので、大した感慨もなく読み終えた。絵とBGMはそこそこ良かった。
読み終えて真っ先に思ったのは、カリンは必要だったのか、ということ。確かに、マキリの更生を促すきっかけとしての役割は必要だったけれど、マキリの周りの人間は、マキリに対して必要以上に関わりを持とうとしている。いずれ、解決したのではないかと思える。
マキリのポイント・オブ・ノーリターンである「留年」に関しても、さほど危機感を訴えかけるような書き方がされていないため、留年したところで、大したことはあるまい、と思ってしまった。
マキリの症状も不可解で、カリンから学校について質問されたときは、体に変調をきたしていたのにもかかわらず、あっさりと学校へ行けたのはなぜなのか。仮病だったんじゃないか、と疑ってしまう。
話としては、あまり良くはないが、続編はそれなりに楽しみである。この『ひとりのクオリア』は、いかに「ひとり」になるか、がオチとしてあった。なので、「ひとり」になった結果、これからどうなるのか、が面白くなる所だと思う。
伏線がまだいくつかあったので、それを消化するために話を割く場合は、簡潔にしてほしいな。
どうせなら、タイトルを『はじまりのクオリア』にでもして、副題として『ひとり』をつけてくれたら、続編の示唆は違和感がなかったと思うのだが、散々延期しておいて、物語が完結していない作品だったので、小言の一つを書きたくなった。