絵23+文28+音20+他15 既存とは異なるエロの表現方法。とすれば、これは間違いなくエロゲであり、エロゲでしか表現しえないものだ。エロゲ界に咲く、孤高の花は、こんなにも白く美しい。
映像面・・・
通常のADVゲームに比較すれば、立絵と呼ばれる表現において、二歩は引けを取る
出来栄え。そして、一枚絵にあってはそのCGの質は、他作品を一歩置き去りにして
いる。
全体的な量の不足感などは、感じられるものの、オリジナリティという面で言えば、
満点に近い、良質な映像表現だったのではないだろうか。
シナリオ・・・
圧巻のシナリオ。
いや、そのシナリオの本質に迫れるほど、私の読解力は追いついていない。この手の
作品を、良し悪しを持ってして、講明することは、往々にして発言者の品位を貶めて
しまうだろう。有体に言ってしまえば、無知を曝け出すと言ってもいい。
恥を恐れず言えば、シナリオの展開そのものに抜きん出た物は少ない。ただ、それに
至るキャラクターの作り込みや、感情を表現するテキストの緻密さが、この作品の魅
力であり、異質さなのだろう。
実際、エロゲ向きのシナリオかと問われれば、誰彼とも無く「No」と答えることだろ
う。
ただ、作中で見せるエロティシズムには、感銘を受けた。
その感銘は、女達の表情や、音楽の雰囲気や、声優の演技など、様々な副因が生み出
したものであろう。だが、女達が『何故』行為を求めるのか、或いは、虐げられた中
で『何』を思うのか、といった『女側』の表現が、観念的にも事象的にも、よく練ら
れたテキストであった事が、主因にあることは間違いない。
『何故』『何』といった、『女側』の事情を語るエロゲは、実はかなり少ないのでは
ないだろうか。いや、語られたとしても、それは『男側』に都合よく語られがちであ
る。
――そう言った描写の妙は、女性視点であるが故の物だろう。
一般的なエロゲのカテゴリーからすれば、女性視点には賛否があり、否の方が多勢と
いうのが、現状ではないだろうか。だが、このエロさは女性視点でしかありえない。
久々に、作品の持つ感性で、興奮を煽られる作品に出会えた。
音楽/声優・・・
この奇異な作品にあって、その音楽にもまた異質さは見て取れる。
あえて地味さを装い、淡々と流れるBGMは、ラストのテンポアップに対する伏線で
ある。作品を形作る要素としての、『音楽』を上手く扱った作品であった。
女声のみの声優であったが、それはエロゲの常套を周到した……というよりは、この
作品だからこそ男声は不要だという判断による物ではないだろうか。そう、これは女
の物語であったのだから。
今一歩、エンターテイメントとしての魅力には欠ける本作品。
憚らず、当り障りの無い程度に、この作品を評する事が出来るとすれば、ここまでの
私の感想のとおり、一般的なエロゲとの比較にしか成り得ない。だが、そんな物は、
糞程の役にも立たない。
何故なら、この作品は唯一無二の、『孤高の花』という作品なのだから。