絵22+文18+音20+他11 終始ドタバタしっぱなしということもないですし、いわゆるクソシリアスもあったりしますが、ドタバタヤキモチ大運動会にしてしまわなかった部分は、案外、好感が持てるかと。
*映像面・・・
みけおう原画は、個人的にあまり好みでないのですが、かわいさの安定感は流石と唸
らせるものがあります。
苦手な理由は、五頭身キャラで、顔・胸・お尻という各パーツが丸くて、その丸と丸
をつないでいる首やウエストが前後のパーツ同士をつないでいる記号的であるように
感じられたりするから。
個々のパーツはしっかり描き込まれていて味があるのですが、なんだか全体で見ると
バランスが不安定に感じられたりしてしまいます。
とは言え、本当によく細部が描き込まれており、塗りを含めたコス周りのディティー
ルは、なかなかここまでのものは少ないかと。
*シナリオ・・・
沙良ルートの序盤で、主人公が沙良を選んだことを悟ったアリーゼは、主人公に対し
て素直になれない沙良に、
「わかります。人を想うって、とても苦しいことですよね」
と、恋敵である沙良を励ますような、『大人』な言葉をかけます。
それに対し、沙良はそのアリーゼの優しさと強さに感謝しながらも、彼女のように感
情をコントロール出来ていない自分に劣等感を抱いて、ライター氏お得意の性格不器
用暴走ヒロイン道を爆走してしまいます。
確かに、この件の主眼は沙良の心情や態度の変化など、『沙良ルートではこういう事
を描こうとしていますよ』とでも言っているかのような、伏線イベントであり、沙良
ルートで描くイベントであるというのは自然なようにも思えるのです。
しかし、このイベントを通過したか否かによって、アリーゼルートに対する読み手の
印象は、結構、変わってくるのではないかと思えるのです。
アリーゼルートでの彼女は、恋に舞い上がって盲目的になってしまう『子供』のよう
に描かれているのです。
まあ、いわゆるルート間で違う顔が見えるという、ギャップが活きるのですね。
それ故、こういうヒロイン同士の葛藤は、実は共通パートで見せておけば、どちらの
ヒロインのルートにおいても、選ばれなかったヒロインの想いという見えないカタチ
で、シナリオを盛り上げたりするのではないかと思います。
それは、例えばアリーゼと沙良だけでなく、他のヒロインもまた同じように……と、
読み手がヒロインの心情に寄り添うようための『好意的な忖度』を引き出せるのでは
ないかと思えるのです。
ドタバタなヤキモチ合戦だけでなく、こういうヒロイン同士のヤキモチ交差点を、も
う少しでも共通パートに盛り込めていれば……。
そして、そういうヒロイン同士の想いの交差というやつは、個別ルートだけでなく、
ハーレムの強度も高めますしね。
(今回も、ハーレムは、おまけ程度なのですがね)
いや、案外、共通パートって大事なんだなぁ、などと改めて思ったのでした。
と、まあ、沙良ルートが無かった場合、アリーゼルートは下手をすれば、『おセック
ス』とかいうパワーワードと、アリーゼのポンコツっぷりしか印象に残らない可能性
がありますw
さて、共通では強キャラヒロインの牽引力で安牌かと思われた先輩ルートですが、案
外、このキャラも本番になるとヘタレてしまうキャラだったりしたのですが、こちら
でも大人アリーゼちゃんのサポートや、根っからのポンコツかと思われた沙良の叱咤
激励などあって、ラストの驚きの展開を持って、やはり強キャラだったなぁという姉
さん女房属性を回収しながらのエンド。
小動物系ではあるものの、案外芯の強そうな印象だったベルちゃんは、やはり見立通
りの子で、いえ、こういうキャラにして怒涛の超展開に巻き込まれつつ、涙に暮れて
うじうじしちゃうような部分があんまり無かったというのが、さわやかな余韻を残し
ていってくれたような、気がしたりしなかったり。
共通パートこそ、クソシナリオの誹りは免れない、驚くほどひどいマッチポンプなど
を見せられたりもしましたが、個別ルートはそれぞれにそれなり。
そして、各ルートそれぞれ、扱い方は異なるものの、ヒロイン同士のヤキモチの見せ
方という共通項があって、そもそもそれをタイトルに冠しているのでありますから、
ドタバタだけじゃないヒロイン同士の感情の交差を、共通パートでチラ見せしておく
のは、得こそあれ損はなかったのではと悔やまれます。
クリア後のハーレムは、げんなりする程のドタバタヤキモチ大運動会でして、プレイ
中、あーこれは夢オチかなーと想像してしまう出来なのですが、そもそもお話として
落とそうという気すら無い、俺達のヤキモチ大運動会はこれからだ、と言ったありさ
まで終幕を迎える、クソハーレムでした。
*音楽/声優・・・
目下、エロゲ楽曲最王手状態のsolfaによる音楽。
前作『姫様LOVEライフ!』のFDでは、ED曲はproject lightsだったのですが、今回は
そちらも含めてオールsolfaとなっており、主題歌をCeui、各ヒロイン別EDを、nao、
青葉りんご、小春めう、Rinと言ったボーカリストが華やかに作品を彩ります。
EDは各ヒロインのシナリオやキャラクター性に寄り添って、曲調もバリエーションを
打ち出せていました。
声優陣では、比較的、ベテラン寄りなキャスティングなのは、毎度のこのブランド。
個人的にですが、小倉結衣の脳みそを揺らすハイトーンが、やや苦手だったりするの
ですけど、これくらいに抑え気味なら魅力的な声だなぁとも思えたり。
このブランドでは登場が多めながら、最近、めっきりメインキャストで青葉りんごの
ハイテンションボイスを聞く機会が減りましたね。
さて、本作で一番印象的だったのは早瀬ゃょぃの、やる気のない脱力系の演技で、サ
ブキャラの為、幕間にちょいちょい出てくる程度の登場なのですが、その度に、妙な
癒やし効果があったような、見事な脱力感でした。