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えびさんのお兄ちゃん、キッスの準備はまだですか?の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
お兄ちゃん、キッスの準備はまだですか?
ブランド
Tinkle Position
得点
93
参照数
1221

一言コメント

絵26+文22+音21+他24 カーソルをセンターに入れてキッス、カーソルをセンターに入れてキッス、カーソルをセンターに入れてキッス

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

**あーだこーだ
はーい! 個別ルート入って、キスがオートに成ってるのに、条件反射でカーソルを
センターに入れてしまう、キッス中毒のお兄ちゃん達! お元気ですか?!

ほんとに、ふざけたブランド名からは、想像もできない程、丁寧に作られている作品
でした。

なんと言いましょうか、かつてのRUNE中期から後期にあった、牧歌的な雰囲気に似た
ものを感じました。
さしずめ、お母さんのボイスがまきいづみだったら……あー。
残念ながら、たぬきそふとでは、キャラ属性やシチュエーションなど、欲望に素直す
ぎてセーブが効いてない感じですもの。
キャラの魅力ありきの萌えじゃろうに、ちょっとくらいそういうエピソードが書けん
のか、たぬきよ。

**シナリオ雑感
全体的に、兄妹というか家族だからこそ、キャラの関係性とかを説明しすぎたりしな
いことで、無粋にならないような配慮がテキストから感じられました。

*まひる
キスする時、ほっぺを両手で包み込むのが好きという設定を、フェラシーンやエッチ
シーンでも活用してたのが良いですね。
自分の思いを我慢して押し殺しちゃう聞き分けの良い子なので、ちゃんと言いたいこ
とは我慢しないように諭してあげたり。
誰だって些細な我儘くらい言っていいのでしょうけど、すぐに自分が我慢すればいい
んだって思っちゃうこの子には、普通の人より強い罪悪感が伴うのでしょう。
まあ、だからお兄ちゃんとの約束っていう、我儘を言っていい理由を与えてあげる。
シナリオのオチとしても、ベタな留学する/しない問題に対して、わりと強引なオチ
にも感じるんですけど、まひるとの約束を逆手に取って、お兄ちゃんは妹がいない生
活なんて我慢できないから留学しないっていう理由付けは、妙にストンと腑に落ちた
気がしました。

*さや
末っ子らしく明るくて奔放な子だけど、さみしがり屋で他人に嫌われることにちょっ
と臆病。
前の学校のクラス替えで、仲の良かった友達と違うクラスになって……っていう、エ
ピソードも、そういう伏線なんでしょう。
だから押しの強い女の子の友達の我儘を断りきれなくて、でももしかしたらお兄ちゃ
んが盗られちゃうかもしれないって嫉妬したり。
>>
「全世界のお兄ちゃんは、シスコンで当たり前なんだーーーっ!!」
<<
もうこの台詞のインパクトで薄まりがちだけど、その後の臆病な自分を克服するよう
なやり取りが本ルートのキモだったわけだね。
>>
「……さや、自分の思ったように言えばいいんだよ」
さやはしばらく考えた後、友達に『ごめん』と謝った。
<<

*あさひ
妹としての自分と、女としての自分との間で、シーソーする好きという気持ち。
『特別なキス』をすることで幸せになることと、『特別なキス』をすることで罪悪感
を感じてしまうこと。
そういうテーマだけに、あさひルートには『あーん』で間接キスを盛り込んでる辺り
も、よく考えられてるなぁと。
でも、「大好きな人達とするキスに一番も二番もない」っていう、ある意味ハーレム
ゲーとは斯くあるべしとも言える大原則に帰着する。
>>
「いつか、ね……家族みんなと分け隔てなくエッチしあえるほど仲のいい家族になれ
たらいいなって思うんだ」
<<
せやな。

*やよい
くそっ! くそっ!
なんで、こんなにベタなツンデレチョロインに萌えてしまうんだ! ばかやろー!
「食べないもんっ……」じゃねーよ!
んまぁ、これもハーレムモノなら、通るべくして通るテーマの嫉妬の問題。
正直、まひるルートやあさひルートみたいな、すっきりと腑に落ちるような、筋道を
立てたオチではなかったようで、若干、力技な気もするのだけど、瞬間最大風速系の
盛り上がりがあるオチでしたね。


**特に感心したゲームデザイン
エンジンはあかべぇ系でお馴染みのワムソフト版吉里吉里。
インターフェイスのアイコン類が大きめだったり、キスのクリックアクションからし
てタッチパネルでの操作を意識しているようです。
(画面の前のお兄ちゃんは、タッチパネル越しに本当にキスしてもいいのよ?)

普通の一枚絵より大きなサイズのCGで、画面をスクロールさせたりするような演出が
あります。
例えば、主人公目線のアングルで騎乗位シーンを縦長のCGで描けば、接合部とヒロイ
ンの表情を、あえて別々に見せることが出来ます。
AVなんかではよく見られるカメラワークですが、これは主人公の視点から見た景色と
して、主人公とヒロインの距離感がリアルで、エッチに臨場感が増し、効果的な演出
だと思います。

今、モニターの前で、ご自身のムスコを見下ろしてみてください。
モニターの文字が読めますか?

そんなわけで、あえて別々に見せるというのは、臨場感が出るのだと思います。

そして、それを大きなサイズのCGで描き、スクロールさせることで単純に視線の移動
を表現できたり、イキ顔→接合部→笑顔といった風なストーリー性のある見せ方など
も演出出来るでしょう。

個人的に、このような分割して見せることを前提とした大きなCGを『多段ぶち抜き』
などと呼んでいます。(業界に共通した呼称があれば、おせーてください)
これは、漫画でコマ割りを無視して、大きな絵を入れることを『ぶち抜き』などと言
うことから連想したものです。(コマが三つなら『三段ぶち抜き』とか)

本作の場合も、そういった『多段ぶち抜き』を使っていますが、特定のエッチシーン
を狙ったものではありません。
本作で使われているのは、全裸で寝そべっているヒロインのCGであり、まるで解像度
の高い『立ち絵』のような、縦長のぶち抜きCGです。
本作は、これを上手く使っていて、足から腰へ順番にキスしながら視線を上げていっ
たり、本来は全裸でないシーンでもパジャマをたくし上げた“おへそ”のアップとし
て使ったり、かなり効果的に使えていたと思います。

このぶち抜きCGですが、なにかに似ていると思ったのですが、合点がいきました。

『抱き枕の裏側』ですね、はい。

個人的に、抱き枕で、もふらないので気付きませんでしたが、これは良いアイデアで
すね。
他のブランドも真似をすると良いと思います。


**その他
映像、音楽、声優については、ちょっと長くなりすぎるので、そちらの詳細は割愛し
ますが、そちらの方面でも、ほぼ隙無く魅力的な作品でした。
ハーレムルートは、ベタな『川の字ックス』やら、『尻並べックス』などの、伝統的
手法が使われていて、おまけっぽくも感じますが、その中でも複数のバリエーション
を用意していていて、やっつけ仕事になっていないのが好印象でした。