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えびさんのMaggot baitsの長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
Maggot baits
ブランド
CLOCKUP
得点
99
参照数
2212

一言コメント

絵25+文23+音21+他30 点数化すると、こんな感じで高得点になってしまったけど、どことなくそこまでじゃないよな感もあったりするんだけど、圧倒的な孤高性とでもいうのか、飛び抜けて突き抜けて子宮ぶち破るくらいは当たり前にやってきちゃうし、無骨なハードボイルドを純愛味にキャラメリゼしておいきながら、くっさい精液ソースをぶっかけて台無しにしちゃったりして、ぅんんまぁ、ひどい作品だことと嘆きながらも、ぶひぶひ言いつつフルコンプに至ったわけで、んぎぃんぎぃと泣き叫んでたアリソンちゃんが至った処が脳筋すぎんだろと思ったりしたものの、彰護がかつて抱いた“魔法”とは、またちょっと違うところで落ちを付けた辺りは、なんだか和んでしまいそうだけど、和んで良いものか、ちと考えてしまうのでした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

さすがに点数高すぎw
……と思われる方もいらっしゃるだろうという事で、一応、フォローしておくと、映
像とかシナリオとか音楽とか声優とか、そういう標準装備な要素以外の部分を、他と
いう項目にまとめてるわけですが、その中にはいくつかの内訳があって、それが複数
重なると、高評価に成りがちなのが、私の採点方法です。

ゲーム性あった?
演出すんげー!
なんちゅー企画を考えるんじゃ、こいつら
うっひょおお! めちゃシコだぜっ!
おー絵と音楽の統一感バッチリやなぁ 独特な世界観やなぁ(←俗に雰囲気って奴)

と、本作の場合は、後ろ三つに加点が重なって、こんな感じに超高得点になってしま
うのでした。



*映像面・・・
いやぁ、中身がピンク色の絶妙な焼き加減のローストビーフでも切り分けながら、に
こやかに鑑賞したい爽やかな映像でしたね!

げふん

さて、はましま絵の線画の安定感たるや、感服するしかありません。
そこに、おちんぽを刺し込んで白い液体ぶち撒けるくらいは当たり前。
触手で雁字搦めにしちゃうだけじゃ飽きたらず、ニ穴、三穴は当たり前。穴が足りな
きゃ開けちまえ! という発想の奔放さ。
幼虫も出てくれば、豚さんちんぽもあるし、逆に豚さんに成ったりも。
人体破壊もたっぷりと、切って、焼いて、潰してと、安心と信頼の豊富なレパートリ
ーで、今晩のお料理に悩む主婦もしっかりサポート。

いやー、とてもひどいグロ絵ですが、元々ある絵がしっかりしているからこそ、それ
にコラージュを重ねたり、それ自体を壊したり、意外とこういうのは楽しい作業だっ
たのではないかと思えます。

また、前作の『フラテルニテ』や、同グラフィッカーの携わった『待雪の花』などで
見せた、斑模様のテクスチャは、キャラクターの描写に人間味というか、生々しい温
もりを付加していました。
今回はそれは無しで、よりソフビ人形的な質感のキャラの肌感が、“魔女”という哀
れな傀儡を、玩具のように貶めていて、こちらはこちらで素敵でした。
テクスチャと言えば、先の斑模様は無いものの、ピストンが始まると、汗やら愛液や
らが飛び散る様を女体の輪郭に添って散らしたり、射精が近づいてくると口から溢れ
る吐息や、ほかほかマンコなどの熱気で、靄がかかったりと、まあ、細かなところで
仕事がされていますね。

まー、お見事です。


*シナリオ・・・
まぁ、そうだな、改めてこの話を読み返すなら、“魔女”達よりは、野郎共の生き方
や死に様を比較していくと、筋道が立てやすいのかなぁ、と思う。

ハードボイルドとかっこよさげに言うには、グロテスクで醜悪で生々しいけれど、彼
らの中にある彼らを彼らたらしめるモノに、何かしら共感めいた感情を抱く部分なん
かもあって、けれどもその世捨て人のような生に執着のない生き様は、哀愁を感じず
にはいられなくて、ああ、やっぱり、ハードボイルド。

ライターの昏式龍也が、あとがきとして語っているけど、主人公・角鹿彰護の苗字の
由来が、『魔戦記/著・菊地秀行』という風に語られていて、妙に腑に落ちたりもす
るんだ。
正直、『魔戦記』ってどんな話だっけ、と、ちょっと記憶を探っても思い出せないの
だけど、Amazonの商品の説明を見ると、

>>
2000年の時空を超えた、凄絶なる魔戦の目的は…!?
大世紀末を迎え、アレキサンダー大王の東征、今再び。
<<
あー……w さすが、ひどゆき先生だ。

ただ、まあ、『魔戦記』と時期の近い『妖獣都市』(闇ガードシリーズ)を思い出す
と、“エログロバイオレンス”+“人外との純愛”みたいな、共通項は上げられたり
して楽しい。
川尻善昭アニメ版とかもあって、人外モノの先駆け的な意味合いで、割りといろんな
方面に影響を与えてるとか言われたりもしてたみたいですが、確かにアレは特にエロ
ゲ媒体でしっかりやってくれたら、時代を問わず、今でも受けると思うよなぁ。

と、話は逸れまくっているけど、そんな男臭いハードボイルドや、男特有の惚れた弱
みの女々しさみたいな、哀愁の根源が描かれるエロゲっていうのは、意外に少ないん
じゃないかとも思えるし、そんなキャラクターが一人じゃなくて複数名いるって言う
んだから、その生き様を味わうのが、本作の素直な楽しみ方かと思えたのでした。


ただ、どうしても気になるのはアリソンちゃんの選んだ道だよなぁ。
割りとコミカルタッチで、ラストに少しだけ描かれているだけなんだけど……

>>
「うん……わたし、こんなかなしくなるの、もういやなんだもん」
<<

そう言った、アリソンちゃんの、その後の生き様も見てみたいものですね。


*音楽/声優・・・
音楽はOP曲(一部挿入歌としても使用)の、異質さが際立ちます。
クロアプ公式Twitterで詳細の報があったのは、ゲームリリース後であり、事前情報
としてユーザー側は、
「正体不明のバンドだ」
「日本でゲームミュージックとして、この曲をやれる人達がいるのか」
などなど、ちょっと騒がれていました。

NightingaleMusicレーベルより、配信販売されているオルタナ系(?)コンピに収録
されている一曲『Tomorrow Never Comes/Datascape』が採用されています。
レーベルHP(海外) http://www.nightingalemusic.com/

また、クロアプ公式がツイートしたのが、iTunesのストアのアドレスであった為、コ
ンピにも関わらず、この一曲だけ人気度MAXになっています。
また、レーベルサイドもこの事態を予測していなかったようで、2014年のリリース作
品にも関わらず、オフィシャルのサウンドクラウドにアップしたのが、12月9日頃と
なっており、投稿されたタイトルも、
『Tomorrow Never Comes as heard in Maggot Baits』
となっており、サムネイルにはゲームパッケージが表示され、全世界に向けて発信さ
れているという、エロゲーマー的に胸熱な、オモシロ展開が繰り広げられています。
SoundCloud https://soundcloud.com/nightingalemusic/tomorrow-never-comes-as-heard-in-maggot-baits

そんな曲ですが、エロゲ曲としては年に数本あるかないかの男声Voに加え、全編英語
詞。(出典元が判ってしまえば、当たり前ですがw)
曲調もカオティックなポスト・ハードコアで、要所にエレクトロ的なニュアンスも織
り込んでいて、ハードで重厚ながらダンサブルとも言えるノリの良さが、エロゲー
マー諸氏にもウケているようです。

他、BGMの曲数は不明ですが、沈鬱な作風に引っ張られ、曲調が偏ったりしがちなよ
うにも思えますが、割合、そのあたりのバランスの舵取りが効いており安心して聞け
ます。
OP曲とは、また方向性が全く異なりますが、『彷徨う虚/MAMI』は、上原一之龍によ
る曲で、特に『euphoria』で耳馴染んだ壮大かつ寂寥感のあるサウンドスケープに誘
われ、バッド・エンド(?)『血の収穫』の寓話めいたラストに、よく馴染みます。


声優陣では、アリソンちゃん役の花南の演技などは好き嫌いが分かれそうなところで
しょうが、全般的には割りと無難な印象でした。
飛び抜けた逝っちゃい具合では、フラテルニテの藤堂みさきや、手塚りょうこ辺りの
方が際立ったように思えます。
本来、もっと逝っちゃってるべきだろwww な、御苑生メイや榎津まおが、そっち
系の演技が少なかったという部分もあったかと。
個人的には、御苑生メイが演じた“無名の魔女”には、落差の激しさにゾクゾクして
しまう、『ロリ』と『罵り』のコンボを、もっとマシマシでお願いしたかったです。