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えびさんのひめごとユニオン Last Secretの長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
ひめごとユニオン Last Secret
ブランド
SEVEN WONDER
得点
58
参照数
3559

一言コメント

絵19+文15+音18+他06 言いたいことは山ほどあった。けれど、神様だって予測できない事だって山ほどあるんだろう。だから、謝罪や言い訳なんて求めてなかった。せめて、最後の最後、作品の中で『想い』を見せて欲しかった。それだけで、新しい門出を応援できるのがファンってものなんじゃないだろうか。

長文感想

ここまでの主だった経緯を、簡単に整理しておこう。

2010年
 PULLTOPの主要メンバーである、椎原旬、下原正、たけやまさみらが退社。
 プロダクションぺんしる傘下にて新ブランド『SEVEN WONDER』立ち上げ。
2011年
 5月27日 『太陽のプロミア』発売
2012年
 2月24日 ファンディスク『太陽のプロミア Flowering Days』発売
2013年
 9月27日 『ひめごとユニオン ~We are in the springtime of life!~』発売
2014年
 5月30日 ファンディスク『ひめごとユニオン もーっとH!』シリーズ発売開始
 5月30日『~巻ノ一 九帖聖のいちゃラブな日常~』発売
 7月25日『~巻ノ二 桐島夕輝のマシュマロライフ~』発売
 8月29日『~巻ノ三 三芳野小春の幼な妻日記~』発売
 10月31日『~巻ノ四 ヒメリアのラブ盛りスイートアルバム~』発売
2015年
 1月9日~13日 『太陽のプロミア』抱き枕カバー大復活選挙
 1月10日 ブランド公式Twitter(@SEVEN_WONDER)にてブランド解散予告
 1月16日 C87グッズに加え、復刻抱き枕カバーの通信販売開始
 1月30日 『ひめごとユニオン Last Secret』発売
 1月30日 『ひめごとユニオン こんぷりーと!』発売
 2月6日 『もーっとH!』全巻購入者向けに『Last Secret』差分を配布予定


『ひめごとユニオン』本編自体が、やや未完成気味な駆け足エンドと伏線残しをして
いた作品だった。
まあ、それは良くも悪くも常套的に使われる、ファンディスクへの伏線なんだって事
は、文句を言うまでもなく消化していた。

ファンディスク『もーっとH!』では、分割リリースという形式。
リリース発表の段階では、3Pエッチの萌えエロ増強ファンディスクを匂わせた。
それなら、好みのヒロインの作品だけ購入すればいいのだから、やや割高感はあるも
のの納得できると思った。
しかし、プレイしてみると、まさかストーリーに繋がりがあるという隠し球。
こうなると、必然的に、全巻買うことになる。
四巻構成を匂わせていたことから、『巻ノ四』で物語は完結するのだと、誰もが思っ
ていただろうが、伝統芸能「俺たちの戦いはこれからだ」が炸裂する。

そして、発表された『Last Secret』発売。
「なら、最初から五巻構成にしておけよ!」のツッコみ。
更に、『Last Secret』には『巻ノ一~巻ノ四』が収録されているという。
流石に、『巻ノ一~巻ノ四』をリアルタイムで購入し続けたユーザーへの配慮から、
四巻分の製品シリアルナンバーがあれば、追加シナリオを無料でDL出来る事が発表さ
れた。
これは、当然、事前告知があったことではない為、既にパッケージを手放していたユ
ーザーが泣きを見る羽目に陥る。
しかも、それはパッケージ版と同時ではなく、パッケージ版リリース後一週間のスパ
ンを置いてのDL開始となり、四巻のパッケージを保有しているリアルタイムで応援し
ていたユーザーよりも、『Last Secret』新規購入者への優遇として不満感を煽るも
のでしか無かった。

『Last Secret』と同時にリリースされた『こんぷりーと!』は、本編を含めたお買い
得パッケージなので良いとしても、『Last Secret』がフルプライスで発売される事
には納得がいかないものがあった。

だが、解散するブランドへの手向けにも似た感情と、オフィシャルホームページの一
文を拠り所にして、私は本作品を予約購入し、今、プレイを終えた。

その一文とは……
『ひめごとユニオン』シリーズの最後を締めくくるに相応しい、大ボリュームの作品
をお届けいたします!

その結果は……
『もーっとH!』との重複分を除く追加シナリオのみで、プレイ時間一時間半という
絶望的なまでにボリューム不足なシナリオしか、そこには無かった。




なめとんのか




もしかすれば、本来は『Last Secret』という作品をリリースする予定では無かった
のかもしれない。
振り返ってみれば、『ひめごとユニオン』という作品のコンセプトに掛けて、ユーザ
ーを驚かせるような販売形態を狙っていた部分はあったのだろうと思える。
けれど、そのような思惑も、ユーザーを蔑ろにした捨て身戦法という、最悪な方向へ
と捻れてしまい、多くの不評を買ったに違いない。
椎原旬、下原正、たけやまさみらを、PULLTOPの時代から追い続けているファンは、
いったいどのような気持ちになっただろうか。
クリエーター陣の、今後の活動への影響はいかほどだろうか。

立つ鳥跡を濁さず、とは言うが、資金がなければ続けられない事情も、ファンなら汲
み取ることは充分にできたはずだ。
ならば、もっと違う舵取りの仕方があったのではないか。

これは、ファンに対する裏切りではないと、言い切れるのか?



追加シナリオの内容自体は、特別に酷評するべき程のものではなかった。
『ひめごとユニオン』のファンディスクではあるが、『もーっとH!』の七日の物語
を完結させるものだったのだから、予定調和ではあるが、七日の笑顔で迎えられた事
を喜びたい気持ちもないわけではない。
だが、「ここまでして描きたかったものがコレなのか?」、と問いたい程度には、秀
でたものが感じられなかった。
メインキャラのみが登場し他のサブキャラはすっぱり切り捨て。
少なくとも、『巻ノ二』の展開を覚えていれば、はねるは登場させて欲しかったのだ
が、そこもバッサリ。

また、これは私の勘違いなら申し訳ないのだが、ラストの集合絵で、小春と夕輝(川
原誠担当キャラ)の絵が、どう見ても川原絵に見えない。
異なる原画の担当キャラが一同に集う集合絵だからとは言え、シリーズの最後、ブラ
ンドの最後、そのラストカットでこれをやってしまうのかと、絶句した。


最後くらいは、意地を見せてくれると信じていたのだが、少なくとも私はそのような
作り手の『想い』を感じ取って、また新たな出発を願いたいとは思えなかった。