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えびさんの聖もんむすFestival!! ~お祭りだよ全員集合!~の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
聖もんむすFestival!! ~お祭りだよ全員集合!~
ブランド
Vanadis
得点
77
参照数
855

一言コメント

絵24+文19+音19+他15 キャラを多くしすぎて薄まってしまった部分はあるものの、ここまで多くの個性をぶち込んで、終始、楽しい雰囲気を描けている部分は好印象。また、こういった大所帯なFDの場合、特定のヒロイン偏重になりがちですが、その辺りのバランスも良かった。エロ追加FDとしてなら物足りませんが、シリーズを愛するファンなら、ニヤリとするようなFDとして、なかなか面白い作品でした。

長文感想

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墓石の前に花束を添える。
刻まれているのは、かつて、共に深淵を目指した友の名前。
優しく吹き付ける春の風は、あの人が好きだといった、淡い紫の花弁を静かに揺らし
ていく。


迷宮の地下六階――騎士団の前線基地。
オレが、ようやく正規兵に採用され、始めて前線基地に赴任したその日、事件は起こ
った。
真っ先にヤられたのは、二人の門塀。
奴らは、正々堂々、真正面から騎士団を叩きに来たのだ。
どこにこれだけの数が潜んでいたのか、目を疑わんばかりな数のアンデッド共が、腐
臭と瘴気をまき散らしながら、基地に雪崩れ込んできた。
絶望的な光景とは、このような有り様のことだろう。
眼下を埋め尽くす程の、屍鬼の群れが、怨嗟にも似たうめき声を挙げ、こちらに向か
ってくる。
その群れの隙間を埋めるように、物理攻撃の通りにくい幽体や霊体が浮遊している。
ところどころに見えるのは、巨人種の不死体らしく、筋肉すら腐り落ちているはずだ
というのに、軽々と巨大な剣や棍棒を振り回し、周囲のアンデッドもろともなぎ倒し
ている。

「いつまで呆けている! 新入り」
と、声が聞こえたのが先か、尻に痛みが走ったのが先か、もんどり打って倒れたオレ
を見下ろしていたのは、銀の軽鎧を纏った女だった。
その姿を見て、オレは思わず、美しいと思った。
どうやら、オレは、この女に罵られながら、尻を思い切り蹴飛ばされたらしい。
「今日から、お前の面倒を見てやる上官の顔だ。しっかり覚えておけ、新入り。よー
し、覚えたな。なら、次にすることはなんだ?」
オレは慌てて立ち上がり、身を正して敬礼をする。
それを見て、にんまりとした女は、後ろに控えていた四人の兵に向けて言い放つ。
「よーし! 貴様ら武器を持て! 聖別を受けた鋼の味を、人外共にたっぷりと味あ
わせてやれ! 炎の腕で奴らを焼き払え! 道を切り開き、奴らの後ろにいるネクロ
マンサーの首を狩るのは、我が分隊の仕事だ! 他の奴らに先を越されるな!!」
僅か六名で編成される分隊。
その長にしては、器の大きすぎる女。
その時、オレの脳内で、何かが焼けるような音がした。

オレ達の分隊で口火を切ったのは、エルフ種の男が立て続けに放った矢。
山なりに飛んで行く十本の矢には、炸薬が仕込まれており、落下点付近の屍鬼達は腐
肉をまき散らしながら四散する。
次に、元戦士だというノームの魔法使いが、まさに腕とでも呼ぶべき、巨大な火炎の
柱を二本巻き起こし、正面の屍鬼を挟み撃ちにするように焼き払っていく。
あっという間に数十体を仕留めた二人の横を駆け抜けていくのは、黒い甲冑のサムラ
イと、あの分隊長の女。
サムライの男は、甲冑同様こちらも黒い刃の刀で、瞬く間に屍鬼の首を跳ねていくの
だが、一振りで必ず数体をまとめて切り裂いている。
分隊長は、長く重そうなハルバートを軽々と操り、目の前の数体を叩き伏せる。
そして、サムライの肩を足場替わりにし、驚くほどの跳躍を見せ、敵集団の中に飛び
込んでいく。
その際にチラリと見えたその横顔は、嬉々とした表情で、どこか狂気じみた美しさを
感じさせた。
「やれやれ、またあの人は、一人で突っ込みたがる。フォローする、こちらの身にも
なって欲しいものだ。新入り、まあ、よく見ておくんだな、アレがオレたち仕えるボ
スだ」
と、どこかげんなりした口調で最後の一人が、オレの横に並ぶ。
そいつが被っていたフード付きの外套を脱ぎ去ると、硬い鱗に覆われた屈強な身体が
現れた。
その男は翼を羽ばたかせ敵影を飛び越え、屍鬼共の頭上からブレスをまき散らし、更
に仲間達に祝福の呪文を掛けるという離れ業をやって退ける。
ドラゴニュートの僧侶とは、なんとも珍しい組み合わせだ。

「来い! 新入り! 早くしないと、貴様の獲物は、全部、分隊長が平らげてしまう
ぞ!」
と、ドラゴニュートがオレに叫んでいる。

オレは、遅まきながらやっと剣を抜く。
正規兵が最初に佩用する、正教会で聖別されたロングソードではない。
光を帯びたその剣は、対アンデッド特性も備えている。
そして、もう一本。
通称“かき混ぜ棒”と呼ばれる、異世界の武器との噂があるレアな剣だ。
オレはコイツで、モンスターの肉をグチャクチャにしてやるのが、特に好きだった。

ふつふつと沸き上がってくる高揚を抑えきれず、今にも射精してしまいそうなほど興
奮していた。
「ああ、この分隊にいれば、退屈している暇はないな」
と、オレは生まれて初めて神に感謝した。


あれから何度も修羅場をくぐり抜け、オレたちの分隊は力を増していった。
そして、遂に迷宮の最奥に辿り着いた唯一の騎士団員となったオレたち。

だが、その後すぐ、あの人はあっさりと、流行病で逝ってしまった。

友と呼ぶには眩しすぎる戦女神の勇姿は、未だ色褪せない記憶として、オレの記憶か
ら消えることはない。
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さて、なんと言いましょうか、過去作品の熱の残滓とでも呼ぶべきか、なんとも評価
の難しい作品でした。

まず、魔物娘とのエクストリーム☆セクロスは、かなり大人しめに成ってしまってお
り、これはヒロイン数を多くし、個々のエッチシーンの回数に制約が生じたからであ
りましょう。
しかし、確かに個性的な面々で、どんちゃん騒ぎをするパートの面白みは、もんむす
学園よりも楽しくなっておりました。

さて、本作でアラーニェが魔科学の祖とされています。
そうなると時系列的に、『改造少女』の世界はもっと後期の時代な様子。
また、コメットの孤児院の中庭の背景画から『魔物娘の館』も、もっと後期の時代の
世界だと予想されます。
というか、コメットこそ“お母様”なのでしょうね。
なにせ、彗星(コメット)館なのですから。(って、今更、気づいたわ……遅い)


という訳で、作品のレビューになっていませんが、どうせ、好きものしかプレイしな
いゲームなので、今更、何も言うことはありません。はい。