絵23+文16+音18+他13 思いの外、使える『イチャイチャ抜きゲー』志向の作品。時代考証とか、その辺を、もうちょっと丁寧に描写して欲しかった。そう思うのは、案外、抜きゲーというやつも雰囲気に酔うという部分が大きいという事。後は、デレ後はそこそこ描写されていただけに、もう少し、櫻子様の不器用なツンにテキストを裂いても良かったのかな、と。
*映像面・・・
稲戸せれれによる原画。
こういった『しなやかさ』を優先したようなデフォルメは、稀に画力の高い絵師さん
が見せてくれるけど、これはよりシンプルな線画でしなやかで独自の動きを追求して
きたアニメーターの影響が大きいのかなー、などと、たまに愚考したりもする。
ともかく、なかなか独特な味わいがある原画で、服飾のセンスも良い感じ。
「独特な」と表現される絵師さんは、画力が不安定な場合も多々あるけれど、その辺
りの心配もなかった。
塗りも、『やや肉感的』といった感じ。
過度に肉感的過ぎると、キャラのエロ練度やら、シナリオの雰囲気やらと、埋め難い
ギャップを感じるということもあるが、そういった違和感もなく、すっと受け入れや
すい質感だった。
また、肌の白さと、着衣や小物の濃色とのコントラストも、画面が引き締まって良い
感じだった。
ただ、一枚ほど、『線画』のレイヤーが抜けているCGがあり、仕上げのレイヤー統合
時のミスだと思うが、こういった凡ミスは、勿体無いと思う。
*シナリオ・・・
皇国の皇女・櫻子に仕えることになった、ある軍人のお話、と、ちょっと期待の膨ら
む設定。
また、サブヒロインは存在するが、基本的には一ヒロイン性の作品ということで、し
っかりとキャラを描写して萌え転がって、イチャラブ出来そうな雰囲気。
……なのだけど、多産で知られるライター玉沢円の作品で、そこまで丁寧に描けてい
た作品って、今まで無かったよな―、というのが、大方のエロゲーマーの判断だった
かと。
で、それらの期待と不安は、それぞれ、概ね同量のリターンをボクに与えてくれた。
つまり、こんな感じ。
「あ、この雰囲気いいな―……って、あれ？ もうやりっぱなしモード突入なの？」
「櫻子様かわいいなー……って、あれ？ もうやりっぱなしモード突入なの？」
「お、クーデーター起きちゃう！？ ……って、あれ？ もうエンディングなの？」
時代背景描写が、すこぶる省略されており、それは皇女様を囲うお屋敷の中での物語
であるから、大きな違和感はないのだけど、お話の冒頭と締めの部分は、もう少し描
写がないと、作品像がぼんやりしてしまって面白みに欠ける。
櫻子様も、割りとベタなお嬢様気質なツンデレなのだけど、ツン期間が短めなので、
ギャップ萌えに至らず、といった具合。
それならば、デレ後に、破局の危機とか、もうちょっと一山欲しかったところなのだ
けど、ヤキモチが描写された程度。
エロシチュ自体は、それ程、ぶっ飛んでは居ないものの、逆に、櫻子様メインでそこ
そこのシーン数がありながら、『ラブイチャ』、『おバカ』、『ちょっと切ない』、
『ちょっとインモラル』など、色んなシーンがバランスよく配置されていて、抜きに
使う分には、飽きが来ない作りには成っていると思う。
原画の力に寄るところは大きいものの、当初、想像していたよりもエロティックで、
『使用する』には充分なテキストはあっただけに、もう少しのディティールで、かな
り印象が違ったのではないかと思う、惜しい作品でした。
*音楽／声優・・・
音楽はAngel Note。
曲数は少なく、過剰に演出しない空気感重視な曲が多く、ジャズなど、少し古めかし
さを感じさせる曲調は、作品世界の年代添わせた結果だったかと思われます。
ただ、そういった作品世界にマッチした曲調の割に、耳に残りにくいのは、シナリオ
自体が作品世界の描写不足を感じてしまう為だったかも。
歌唱曲はDucaによるもので、彼女にしてみれば珍しいタイプの、シックで哀愁溢れる
曲。
そういった面白みはあったけど、「Ducaにしては」とかいう物珍しさや、「Ducaの割
りには」な物足りなさの方が、ちょっと先行してしまっている感じ。うーん。
声優陣では、櫻子様役の白月かなめのエロ演技が光ります。
日常パートの演技は、個人的にはもう少し大人しめな声質のほうが合っていたかなぁ
とも思わなくもないところがあって、どうにも気高き櫻子様が、こまっしゃくれたガ
キっぽくなってしまった印象が。
ただ、実際のところ、世間知らずのガキでもあった櫻子様なので、キャスティングミ
スということもなく……この辺りは、シナリオ的にもう少し櫻子様の気高さをアピー
ルするイベントがあったら、そこでどのように演技に変化をつけるのか、というのを
聴いてみないことには、良否の判断が難しいかも。
ただ、この方のエロ演技は、なかなかにとろとろでふにゃにゃんな、甘い嬌声が魅力
的で、抜きゲー的には、納得のキャスティングだったりもするのです。
サブを固める、面々も安定しています。
特に、有栖川みや美の独特なイントネーションで展開するハイトーンボイスは、はや
りヘタレてるキャラには、ピッタリだなぁなどと思いました。