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えびさんのTwins2 -恋愛未満-の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
Twins2 -恋愛未満-
ブランド
DISCOVERY
得点
58
参照数
757

一言コメント

絵14+文23+音16+他05 今更、過大な評価の出来る作品ではない。しかし、今、このような作品をリリースできるブランドは存在するだろうか。

長文感想

すっかり古月テキストの魅力に、ハマってしまい、過去作をプレイ中です。
1作目が手に入らず、2作目からのプレイとなり残念ですが、TWINSをプレイし
てみました。
不快という程ではないですが、仕様に不満は多いです。
バックログの少なさ。既読スキップが無い。強制フルスクリーン。パートボイス。固
定されたセーブポイント(一部CGコンプの為、ランダム要素があり、とてつもない
時間を費やすことに……)
それでも、この作品をプレイして良かったと思います。

映像面・・・
立っているだけの立ち絵には魅力を感じません。クオリティ自体もそれ程高いわけで
はないですし。ただ、キャラの多さに対して、その雰囲気の描き分けは出来ているな
と。
絵自体に不快感を覚えることは無く、安定しているとは感じます。しかし、魅力的な
絵かといわれれば、首をひねらざるを得ない出来栄え。
センスは感じるものの、この作品では、まだまだ発展途上という印象です。過去作に
対して、今後を期待するとうのはおかしな話ですが、原画サクライ氏の新作は、もう
見れないのでしょうかね。

シナリオ・・・
ナオ・クレハの双子視点で、2つのルートを楽しめる本作ですが、ナオルートに軍配
が上がったように思います。
なんといっても、この作品の魅力は、サブヒロインを含めた、女の子達の台詞の妙で
す。特に、ナオとツバサの会話は、一級品ではないでしょうか。非攻略ヒロインであ
り、あまつさえ弟クレハの彼女であるというツバサは、実に『いい女』です。
ナオルートをプレイして思い出すのは、『サフィズムの舷窓』でしょうか。ナオとい
うキャラクターは、アンリのそれと重なります。設定的にも、近似したものがあり、
『サフィズム』が好きな方なら、同様に楽しめる素養があるかと思います。プレイし
てみて損は無いのではないかと。
いや、しかし、この作品の台詞に含まれる『恋愛哲学』的な物は、少年漫画や青年漫
画で育った人には書けないだろうなと思わされます。少女漫画、あるいは女性視点の
恋愛小説、ユリを扱った官能小説など、多くの場合、女性の書き手が作品から産み落
としそうな、美麗ながら棘のある言い回しが、随所に光ります。
そのような女性特有の言い回しは、さながら、ロマンチックで現実を語るリアリスト
といった、矛盾した体をなしている様に感じます。この感性は、なかなか男性には産
み出せず、また産み出せないからこそ、一層惹きつけられるのではないでしょうか。
さて、一言コメントにもあるように、このようなテイストの作品がリリースされるこ
とは実に少なく、それこそ同人作品を漁ってみるしか、選択肢は無いのではないでし
ょうか。しかし、ボリューム不足な同人作品では、ユリシーンに力を入れる方向に偏
ってしまいがちなのではないでしょうか。
あくまで、フルプライス作品として、日の目を見ているのが、先述の『サフィズムの
舷窓』のみであることからも、このジャンルに対する市場の冷ややかさは明白です。
望んでいる潜在的ユーザの数は、少なくないと信じているのですが。
ライターの力量以上に、センスの問われるジャンルですから、なかなか外注のライタ
ーでは出来ない類のものでしょう。自ら企画・シナリオの統括が出来るライターがメ
インでなければ、破綻してしまうのは目に見えています。
ところが、現状で、力量のあるライターを抱えているブランドというのは、ブランド
総数との比率で見れば、それほど多くありません。むしろ、外注ライターを使い、そ
の場限りの作品をリリースするブランドが、無駄に乱立しているというのが、現実な
のかもしれません。
こういった作品をリリースするには、あまりにも不安要素が多く、そこに踏み込もう
とするブランドが少ないのも理解できます。萌えゲーが台頭している現状において、
大きなブランド程、冒険をする必要がないというのも一因かもしれません。

作品の評価から逸れてしまいましたが、シナリオのレアさは折り紙付き。『サフィズ
ム』程、御洒落ではないものの、気の利いた台詞回しが魅力的。個人的には、忘れら
れない一作となりました。

音楽/声優・・・
BGMはいまひとつ。ユーロビートを始め、クラブ色の強い曲を、ポップス調にアレ
ンジした事は悪くないのですが、例えばそれはアイドルの歌う歌謡曲で使う手法でし
ょう。この作品に登場する女の子たちは、そんな安っぽいアイドルとは違い、なかな
かに魅力的な性格をしています。こういった、ヒロインたちの機微を見せる作品だか
らこそ、音楽にはもう少し気を配ってほしかった。それこそ、『サフィズム』のよう
に。
(アイドルファンの方には、暴言かもしれませんが、アイドルを『安っぽく』見せる
というのは、昔から続くアイドルの売り方の手法だと感じており、アイドル本人たち
を否定する言葉ではないことを断っておきます)
声優はパートボイスということもあり、減点。また、特別、魅力的に感じた演技も少
なく、強いてあげるなら、ナオ・クレハ役の永瀬江美弥さんが、好印象であったとい
うところでしょうか。