絵19+文21+音20+他13 シナリオゲーとまではいかないけど、面白みのあるシナリオだったと思う。難点は、エッチシーンを詰め込みすぎて、ヒロインの魅力的な描写がぶつ切りになってしまう、ルート構成ではないかな、と。
おし、1ゲット。
映像面・・・
原画は、同ブランドの前作に引き続き、金目鯛ぴんく。
この原画さんに限りませんが、ワイド画面化によって、ヒロインの正中線を、画面の
対角にもってくるようなエッチシーンの構図が多くなったなぁ、と感じました。
顔と局部を描くと、胴体を描くスペースが無くなるというような、胴体の寸詰まり感
は、4:3の頃よりも無くなったように思います。
さて、ブランド名の通り、姫ゲーに的を絞ったブランドのようで、前作では、ややコ
スデザのフリフリの多さが、好き嫌い分かれたのではないかと。
本作では、その辺りのフリフリ感はやや抑えめです。
といっても、異世界ファンタジーものらしい、どうやって着るのか判らない、奔放な
コスデザにはなっていますが。
SD画は、月嶋ゆうこ。
同系列ブランドのSugar potの『ツクモノツキ』では、メイン原画でしたが、今回は
SD画のみでの参加のようです。
過去作では、両ブランドとも、結城葵がSD画を担当していましたが、どうやら昨年、
活動休止されたようで、月嶋ゆうこに白羽の矢が立ったのではないかと思われます。
金目鯛ぴんくのコスデザが、結構、複雑で、パーツ数の多いコスが多いため、デフォ
ルメ化には苦労する部分もあったでしょうが、ねんどろいど的な可愛らしさ溢れる魅
力のあるSD画でした。
背景画も、なかなか綺麗で、全体的に、良い映像でした。
シナリオ・・・
意外に、背景設定など深いストーリーです。
1000年の歴史を持つ国グランデ=ヤクモは、初代王の予言にある、大災厄の年を迎え
ようとしていました。
そんな折、大規模な地殻変動が発生し、地表に現れたのは謎の建造物の一部。
人々はそれを『遺跡』と呼び、大災厄との関連を噂しました。
調査隊が結成され、『遺跡』へと足を踏み入れた者達が見つけたのは、コールドスリ
ープで過去からやってきた主人公でした。
王都に連れ帰られた主人公は、まるで、死んでいるかのように眠り続けていたのです
が、グランデ=ヤクモの第一王女であるヒマリの事故(キス)で目を覚まします。
目覚めた主人公は、記憶の大半を失っていましたが、自分が滅び行く世界から、姉の
手によって未来に向かって送り出された事を思い出します。
そして、目覚めた世界は、大災厄という滅びの危機に直面していました。
自分がこの時代で目覚めた事には、なにか意味があるはず。
過去の記憶を取り戻し、大災厄から人々の笑顔を守る為、主人公は『遺跡』へと足を
踏み入れたのでした。
というような感じ。
コールドスリープと、オフィシャルで明確に謳っているように、人類が滅亡に瀕する
ような時代を経た未来の世界が、ファンタジーワールドになっているといった、SFと
ファンタジーのいいとこ取りをしたような作品です。
正直なところ、尾之上咲太シナリオで、こういった背景設定のゲームというのは意外
だったりしました。
そういった、緻密な伏線回収が必要そうな、シナリオを書くライターさんではないの
で。
終わってみれば、そういった緻密な仕掛けは、やはり描けておらず、もっと判りやす
いキャラ萌え要素が主体のゲームでした。
キャラ萌えと言っても、にゃんにゃん萌え萌えしているだけではなく、流石に、キャ
ラの内面に深く切り込んでいくような、ディープな描写はないものの、ちょっと苦味
のあるストーリー展開も含まれています。
メインヒロインのヒマリ、ルカ、フィオラは、いかにも尾之上咲太らしい、キャラク
ター性のはっきりしたヒロインです。
お姫様のヒマリは、ちょっと我侭で子供っぽい部分もありますが、次代の王として、
国を人を愛する姿は、凛々しさすら感じさせます。
ヒマリに忠義を捧げた騎士であるルカは、真面目で堅物な一面が目につきますが、根
は優しく、ちょっと頭が悪いところがチャームポイント。
ハーフエルフの娘フィオラは孤児なのですが、自分を引き取ってくれたイヅナや、幼
馴染達の影響で、まっすぐに育った(胸もよく育った)、優しく、ちょっと天然気味
な女の子です。
名シナリオと呼べるような作品ではなく、むしろ、荒も目立つシナリオなのですが、
キャラクターの造形がハッキリしている分、ヒロイン達の行動にも納得ができるし、
そのセリフが自然に発せられたのだと感じられるような一体感があります。
ここ最近の尾之上咲太シナリオでは、この辺りの、キャラ描写の精度が上がっている
な、と感じられ、楽しくプレイ出来ました。
ただ、カノンの弱っちい性格は、ちょっと好みじゃなかったかな。
シナリオも、大分、トンデモでしたし。
一人あたり、6~7回のエッチシーンがあり、全て個別ルートに集約されています。
この為、若干、シナリオの流れがぶつ切りに成りがちだったりする部分は、勿体無い
と感じましたし、エッチシーンもそれほどバリエーションが有るわけでもなく、ソフ
トなシーンばかりなので、実用度もあまり高くありません。
エッチシーン減らして、各エピソードをもう少しずつ掘り下げてもらえると、もっと
面白くなりそうなのが、もったいない作品でした。
音楽/声優・・・
音楽はアトリエピーチ。
アトリエピーチということは、もちろん、声優を含めたサウンド面全般を担当してい
ます。
前作や『ツクモノツキ』では、ロックンバナナだったので、この作品から乗り換えた
ようです。
BGMが、意外に良く、エッチシーンや、ちょっと切ない落ち着いた雰囲気の場面で使
用されている、『穏やかな気持ち』というピアノナンバーが効果的でした。
テーマ曲は、Alice Softから独立したShadeによるサウンドで、らしさの感じられる
ドゥクドゥクに、実谷ななのハイトーンの映えるボーカルが乗っかった、爽やかなロ
ックチューン。
声優では、ヒマリ役の民安ともえが好演。
ヒマリの、拗ねたり甘えたり笑顔いっぱいだったりといった、ころころと移ろう年頃
の少女らしさの演技は、この声優さんの得意な部分でしょう。
また、次期国王らしい聡明さを感じさせるようなシーンでは、声のトーンをやや抑え
た演技の色分けしていて、ギャップが効果的でした。