ErogameScape -エロゲー批評空間-

えびさんのアオリオの長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
アオリオ
ブランド
ad:lib
得点
64
参照数
1261

一言コメント

絵20+文16+音22+他06 「青春っていいよね」を超えるメッセージ性がない時点で、青春をタイトルに冠するのは、いかがなものかと。

長文感想

映像面・・・
がっつりアニメ塗りな、このブランド。
今回も立ち絵は特に目を引き、目パチ、口パクのエフェクトも合わさって、実にキャ
ッチーな立ち絵表現になっている。

ただ、一枚絵は少々アクが強く、画面全体に大きな範囲で掛けられたハレーションだ
ったり、定番表現化しているとはいえ、肘・肩・胸・尻辺りのハイライト表現が、画
面から浮き上がり過ぎていて、嫌に目を引いてしまう。
ハレーションの過多については、なにか、居酒屋や安ホテルの古ぼけた白熱灯の明か
りみたいで、どうにも青春っていう作品のイメージとマッチしない。

原画の安定感は、前作より向上しているし、ポップな下着のデザインなども、なかな
か他のブランドでは見受けられない味わいがあるのだが・・・
もう少し、画面全体を落ち着かせるのか、今回採用したデザインや立ち絵表現のよう
に、抜けた白の印象が強い爽やかな方向にまとめるのか、何かしらの変化を求めたい
というのが正直な感想。


シナリオ・・・
青春×シナリオを謳った作品にしては、ややシナリオがお粗末。
冴えない青春を送っていた、毒っけのないメガネ主人公が、ある日突然、演劇部に入
ることになってしまって・・・という、オーソドックスな導入。
これに対し、部員たちとの恋愛によるハッピーエンドという着地点は、エロゲである
以上、必須なのだから、どこで他作品と差別化していくかと言われれば、青春の描き
方であったり、ヒロインの萌え要素の研磨の度合いに関わってくるのではないかと。

どうしても、同じサウンドチームによる青春モノとなると、七烏未奏の表題作とも言
える『StarTRain(mixed up)』や『絶対幸せ宣言っ!(eighthnote)』などと比較されて
しまいがち。
これは前作もそうだったのだが、七烏未奏シナリオの甘酸っぱさを前にしては、真っ
向勝負を仕掛けられるほどの痛さや、ジュブナイル感は、そうそう表現しようとも出
来るものではないし、当然ベクトルの違う青春で勝負しようとしているというのは判
る。
けれど、それはあえて『青春』だと叫ばずとも、どこのエロゲブランドも当たり前に
やっている、『エロゲ準拠な青春』であって、では、『青色×シナリオ』などと、声
高に叫んでしまったタイトルの上滑り感は否めない。

また、シナリオ構成についても、少々難がある。
共通パートは部活動の仲間たちとワイワイ楽しくやる描写と、ほんのちょっとだけ垣
間見せる、家族に対する主人公の考え方というものに感心したりもして、割合、好感
触だったのだが、その後、個別に入ってからの展開には、物足りなさを感じずにはい
られない。
ヒロイン数を4名と絞り気味なことで、一人あたり4シーンのエッチが含まれている
が、それを描く以外には、基本的に個別パートの山場は2箇所ずつ程度しか存在しな
い。
要は、人間ドラマとして面白くない。

 青春? シナリオ?

 おいおい、どこにそんな大それたタイトルを付ける要素があったんだね?

と、まあ、そうユーザーに感じさせてしまったなら、この作品、失敗としか言えない
だろう、というお話。


脚本協力に木村ころやの名前があったことを、メモとして。


音楽/声優・・・
音楽は、I.O.Sound。
『StarTRain(mixed up)』や『絶対幸せ宣言っ!(eighthnote)』などの、情感たっぷり
なストリングの魅力と比べると、ややありがちに感じられるが、それでもこのサウン
ドチームの音楽はいつも楽しく聴ける。
今回は、歌モノ4曲。OPのガールズポップ『アオイロステップ』は、前作に引き続
きポップでアップテンポな良曲。
他にも、どこか懐かしさすら感じるガールズポップ全盛期世代を直撃するような曲調
や、テクノポップなど、ちょっと狙いすぎな感もあったりするが、こういうタイプの
上がるサウンドを鳴らしている人達というのは、案外、エロゲでは少なかったりする
ので。

声優陣では、現在、最も勢いがあると断言できる、桐谷華の演技が光る。
個人的には、この作品をプレイして、林原めぐみがラフな感じで演じているキャラの
演技と似ていると感じた。(スレイヤーズとかのね)
他にも、最近、名前の目立ち始めた桃井いちご、今後が楽しみな柚原みう、ベテラン
桜川未央といった布陣で、まずまずの満足のキャストだったかと。


しかし、これを書きながら、前作OPテーマの『世界で一つのタカラモノ』を聴き直
していましたが、KANAのボーカルは大変好みでした・・・
訃報から、ちょうど一年・・・本当に惜しい。