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えびさんのあっぱれ! 天下御免の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
あっぱれ! 天下御免
ブランド
BaseSon
得点
67
参照数
1420

一言コメント

絵25+文17+音20+他05 切った張ったは江戸の華。切った貼ったはエロゲの悪習。

長文感想

映像面・・・
SD絵を含め、差分なしで200枚超えのCG。

複数原画といっても、これはBaseSonのお家芸みたいなもので、特に否定的な評価が
されることはないでしょう。
それぞれに魅力的な原画陣が、一堂に会する面白みという部分は、確かに否定しよう
がなく、お得感すら感じられます。
その一方でやはり、ある程度は致し方なくも、一部に画力の差による『当たり外れ』
や『違和感』を感じてしまう部分もありました。


シナリオ・・・
もう少々、ネタを絞り込めなかったのか、と、残念な内容。
大枠のシナリオ構成として言えば、一本道のシナリオでした。

共通1→個別(キャラ選択式)→
共通2→個別(キャラ選択式)→
共通3→個別(キャラ選択式)→
共通4→個別(キャラ選択式)→
共通5→個別(キャラ選択式)→
共通6(この内、個別でフラグの立ったヒロインにフォーカスしエッチしてエンド)

といった感じの構成。

ネタの絡ませ方も微妙で、『金さん×鬼平』みたいな元ネタの接点が微妙な組み合わ
せにするよりも、南北の奉行所という共通項のある『金さん×大岡越前』の組み合わ
せの方が面白そう。

なんというか、時代劇をパロったのは面白いですが、こんなに多くの元ネタを盛り込
むには、大筋となるシナリオが薄っぺらく、キャパシティを超えてしまっているよう
に感じられます。
シナリオの大筋として3ルートくらい作り、それぞれのルートに合った、キャラを絡
みあわせていくようなルート構成の方が面白かったのではないかと思います。

また、今回元ネタにした時代劇の多くは、将軍家と縁のあるモノが多かった為、将軍
家にまつわるエトセトラをシナリオの軸にしてみせたのでしょうが、考えても見てく
ださい。
それらの時代劇が、所謂、切った張ったの活劇以外に、何を描いていたのか。
それは、『下町情緒と人情話』ではないのでしょうか?
何やら、それらを置き去りにしておいて、庶民代表たる主人公まで空気にしてしまっ
ておいて、時代劇をパロディするとは、ただの見た目の良さだけを借りたに過ぎない
ではないですか。


さて、個人的な話ですが、このゲームをプレイしたのは古月拓海氏を始め、解散して
しまったディスカバリー(第二期)のメンバーの名前が、シナリオライター陣の中に
あったからです。
彼らの担当シナリオを探すという、宝探し的な楽しみを期待していたのですが……
個々のライターの個性が出るようなシナリオ構成ではなく、エンドロールを見るかぎ
りでは、ミノリ、うつろあくたの両名がプロットとテキスト調整などの仕事をされて
いるように予想できます。
私個人としては、他の方が言われているようなライターによる大きな齟齬は感じられ
ませんでして、そういった意味では、ライター陣の統率、テキスト調整は概ね、機能
していたのではないかと思います。
ただ、それが機能しやすくする為、制作のラインの統制をしやすくする為、こういっ
たシナリオ構成をとらざるを得なかったという印象も受けてしまい、それならキャラ
を減らしてでも、シナリオの厚みや幅を持たせた作品に出来なかったのかと思えてし
まい残念でなりません。


シナリオ統括を担当された方は、切ったり貼ったり、ご苦労されたことでしょうが、
我々が見たかったのは、痛快な『切った張った』であり、『下町情緒と人情話』であ
ったことを、ゆめゆめ、お忘れなきようして頂きたいものです。


音楽/声優・・・
音楽は、Elements Gardenとたくまる。
音楽の方も、元ネタの時代劇の曲をパロディしてみせているのですが、必殺のテーマ
を仕事人以外のキャラのシーンで使われてもピンと来ません。耳につきやすいパロデ
ィは、元ネタの印象を過剰に引っ張り込んでしまいます。
これは他の組み合わせでも同様です。
今回は、特に元ネタが多かったので、こういった使い回しをすることを余儀なくされ
たのでしょう。
ゲームのコンセプトが完全に裏目に出た部分だと感じます。

声優陣は、もう豪華という他、評する言葉がありません。
全攻略キャラとは行きませんが、ほぼほぼ、一回はフェラがありますので、声優陣の
フェラ音比較サンプルとしては、優秀な商品だったかも(?)
個人的には、芥川隆行のような名ナレーションが欲しかったなー。


【シナリオタグ】
/ #パロディ /