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えびさんの処女回路の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
処女回路
ブランド
Moviendo
得点
63
参照数
354

一言コメント

絵17+文16+音17+他13 メイド+アンドロイド。この組み合わせは定番とも言える。この作品の味噌は、二人のメイドロイドの恋心を並列に描いていることだろう。特にアリシアの不器用な嫉妬心は萌え心をくすぐる。

長文感想

映像面・・・
非常に可愛らしい絵柄。しかし、身体の描き方は型に嵌りすぎており、エロさが足り
ない。
なんというか非常に『お人形的』であり、『記号的』。
標準化された女の子というボディパーツの上で、これまた標準化されたおっぱいやお
尻やアソコが福笑いしているようだけ。

それでも、コスデザのセンスも良く、『お人形としての可愛いさ』で用をなす立ち絵
は良好と言える。
『お人形としての可愛さ』だけでは成立し得ない一枚絵において、もう一歩推し進め
たクオリティ(エロさ、または美麗さ)を求めたい。


シナリオ・・・
アンドロイドとメイドとは相性が良い。
というのも、アンドロイドやロボットといった技術が目指す先の一つは、『家電』で
あるからだ。
日常の面倒な家事全般を、アンドロイドやロボットにさせたいと考えるのは、自堕落
な人間の本能に直結している。
また、夜の営みを含めた『パートナー』でもあるならば、世の男性陣はこぞって彼女
らの購入を夢見るだろう。
だが、考えて見れば、家事をこなし夜の営みもこなす存在とは、男性の中に古くから
根付いた『女房』像であり、それは男女の主従的な関係を周到した悪習だと、なにや
らフェミニストからの反発を受けそうだ。
さて、そこでメイドの登場である。
メイドと主人は元より対等ではない。ということで、アンドロイドやロボットが『家
電』であり『娼婦』である為には、メイドという位置付けは実に都合が良いのではな
いか。

などとくだらない事を考えたりもしたが、別にそういった、『禁忌』や『人の尊厳』
的なテーマ性を孕んだ作品ではない。

「私はアンドロイド……なのに、あの人が好きなの。
 私なんかが、好きになってもいいのカナ?
 でも、止められないんだもの、このキモチ……
 だって、女の子なんだもんっ!」

といった感じで、人間に恋をしてしまう、よくありがちなアンドロイドの女の子のお
話。
ちょっとばかり捻りを加えているのが、そのアンドロイドが二人同時に、主人公を好
きになってしまうということ。
三角関係のドロドロは期待できませんが、嫉妬してふくれっ面を押し隠している姿が
実に愛らしく、特にアリシアの不器用なアピールは、萌え度が高い。

佳作とは言えないものの、ロープライスで息抜きがてらにやる分には、及第点なシナ
リオなのではないだろうか。


音楽/声優・・・
いくつかのフリー音源提供先からチョイスされた楽曲。
曲数がそこそこ多く、選曲のバランスもまずまずといった印象。
ただゲームの尺に対して、こんなに曲数が必要だったかと言われれば……

ヘタウマ系のED曲『じゃあね』が印象的だが、ヘタウマ系は難しいモノで、しっかり
した下支えがあってこそのヘタウマなのだなー、などと再認識させられてしまう。少
々、残念な出来栄えと言えそうだ。

声優は、サラ役の中家志穂が相変わらず可愛い。
多方面で色が着きすぎている草柳順子だが、今回のアリシア役は当たり役だろう。流
石のベテランらしさを発揮し、アリシアの微妙な心情を判りやすく表現している。


テーマとしては目新しさもなく、敢えて『この価格帯で挑戦する意義』の低い作品と
も取れるのだが、やりたい事を簡潔に表現しきれているという意味では、この価格帯
でやったことに意味を見いだせるのかも知れない。