絵18+文19+音23+他08 Ricotteの再来……とまでは行かないが、かなり似たニュアンスを持つゲーム。癒すゲーよりは、癒されるゲーといった印象です。
映像面・・・
柔らかいながらも、独自の味のある原画。
立ち絵での表現はなかなかに見事で、どのヒロインも可愛く魅力的です。また、案外
重要だったりするのが男性キャラの立ち絵だったりして、女の子は描けるけど男性は
描けない原画家さんも多い中、毒にも薬にもならなそうなジョナサンの草食男子っぷ
りや、意外にもワイルドな風貌の主人公シド、酸いも甘いも噛み分けた渋味のあるネ
ビュラのマスターなど、男性キャラの描き方が光ります。
一枚絵になると、表情などに好き嫌いが出そうな崩し絵になっており、それにしては
彩色がお手本通りで面白みに欠ける感もあります。また、意欲的に様々な構図に挑戦
しているのですが、それらの完成度がもう一歩といった印象も受けてしまいます。
自分が好きなのは、メグルートのラストのCG。ワイド画面特有の奥行きを使える構
図は、シンプルながら印象的ですし、小鳥を見守るメグを、更にシドが見守っている
ニュアンス的な構成も魅力的です。
特に、メグルートが好みだった自分には、素晴らしい余韻を残してくれる、一枚の映
像として印象深いです。
シナリオ・・・
『Ricotte ~アルペンブルの歌姫~(RUNE)』という作品があります。
コチラの作品も、大人である主人公と少女との恋愛を描いています。
これ以外にも共通するのは、北欧的な街の風景と、『世界名作劇場』的な人間ドラマ
という点でしょう。そして、大人の都合や理不尽で人生を狂わされた少女達の成長物
語であり、同時にそういった少女の姿に感化された大人が自らの人生を正していく物
語でもあるという、多くの共通性が感じられる作品です。
主人公シドは、4人の少女達の保護者的立場にありながら、彼等の関係は実に対等で
あるように描かれています。故に、大人の余裕だとか、子供故の青臭さだとか、そう
いった対比があまり描かれていません。これは、こういったキャラクター構成を取っ
たにしては、少々、もったいない話で、主人公とヒロイン達が同世代であったとして
も描けたシナリオであったように思えてしまうのが残念です。
そういった対比の妙という意味では、メグルートは比較的、年齢差を上手く扱ってい
たのではないかと思います。(年齢差というよりは、境遇の差という見方もできるの
ですけど。)
孤児院育ちでホームレス生活を続けてきたメグという少女は、当たり前の生活から学
ぶべき感情を知りません。その感情を教えるという主人公の行為と想いは、親のそれ
であり家族のそれではないでしょうか。
主人公シドのかつての婚約者レイチェルの存在を扱っている点も、このシナリオがシ
ドの過去との向き合い方への変化を表現しようという明確な意図が垣間見えます。
そして、映像の項でも上げたとおり、そのラストの描写は実によくこの作品のイメー
ジを体現していると思えます。
フィオナの気高い精神。エレンの強い自立心。メグの素直さと社会的未熟さ。プリス
の純真過ぎる優しさ。
それぞれがそれぞれに魅力的なヒロインであります。
フィオナの不条理な境遇。エレンの悲しい過去。人としての生き方を知らないメグ。
幼く未熟な親を持ったプリス。
それぞれがそれぞれに手を差し伸べたくなる境遇です。
そんな少女達に、一時の“安らぎを与えるとまり木”。
そして、癒されているのは、羽を休めに来たコマドリ達だけではないのかもしれませ
ん。
全体的に少々物足りなく感じる要因は、主人公シドの存在感の薄さなのかもしれませ
ん。
ですが、シド自身が描いたように、とまり木の枝は細く頼りないものです。
裏切られ独り取り残されたシド自身も、誰かの温もりを求めていたのでしょう。
コマドリ達に“癒されるとまり木”に成りたかったのかもしれません。
(そういった意味ではエレンルートのラストは、まさにそういったニュアンスを多分
に含んでいますね)
なるほど、このゲームのジャンルは、まさに『年の差純愛癒し癒されADV』なのです
ね。
音楽/声優・・・
音楽は素晴らしい作品です。
ややカントリー色も織り交ぜられていますが、北欧的な雰囲気が良く作品のイメージ
を表現しているBGM。
歌唱曲もBGM同様、良曲です。
何気ない日常と、温かい陽射しを連想させる、透明感のある『Birdies' Perch』。
ED曲には、コマドリ達の囀りが聞こえてきそうな少し陽気で柔らかなワルツ。タイ
トルチューンでもある『Sweet Robin Girl』。
メインヒロイン声優総勢による、『We Wish You a Merry Christmas』の可愛らしさ。
声優陣で言えば、有栖川みや美のプリス役は新境地を開いたと言ってもいいのではな
いでしょうか。一時、某所でも異星人(笑)扱いを受ける程、もう耳タコになってし
まった有栖川みや美の強烈な個性ですが、今回のプリス程のガチロリキャラの演技は
かつて無かったように記憶します。
エレン役の真宮ゆずはまだまだ知名度も高く有りませんが、生粋のツンデレキャラ向
け声優という感じのする、いい声でした。
【ヒロインタグ】
/ #ガチロリ /
【ジャンルタグ】
/ #ハートウォーミング #大人と少女の恋愛 /