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えびさんのAngelRing ~エンジェルリング~の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
AngelRing ~エンジェルリング~
ブランド
MOONSTONE
得点
68
参照数
1258

一言コメント

絵24+文17+音20+他07 『程ほど』に癒され、『程ほど』に萌え、『程ほど』にエッチ。『程ほど』のゲームに突っ込んだら負けだよね。やっと呉氏のネームバリューという呪縛から解き放たれた気分です。(2010/07/25修正)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■2010/07/25 シナリオ部分を追記・修正

映像面・・・
絵柄は多少、好き嫌いがあるかも。
ちょっとばかりボディラインのくずれは見受けられるものの、近年の同ブランドの原
画と比較すれば、『画』としてこざっぱりと纏まっている印象。

色味は結構どぎつかったりするものの、割とシンプルで小奇麗な彩色。
肌の質感表現も悪くなく、ちょっとロリっぽい表現だと、プニプニ感のあるお肌のよ
うに感じられます。

派手に動き回るという感じはないものの、テキストウィンドウ以外での噴出し表現や
ら、SD絵のカットインやら、場面転換のエフェクトやら、ちょっとばかり個性的な
演出が印象的です。
ですが、どうもシナリオの共通パート前半部は、そういうのに力を入れているんです
が、個別パートに入ると、そういう画面効果がほとんど活かされておらず、せっかく
の機能も持ち腐れ。
シコシコとスクリプト打ってる方の、なんとか完成させようという、余裕の無さみた
いなものを感じてしまったり……
呉氏が間に合いそうも無かったから、ペンの速さには定評があるらしい尾之上氏投入
なのかなー、なんて邪推してしまったりもしてしまう、そんな遊び心を忘れてしまっ
たような感じを受けてしまうのが、もったいないなーと。

シナリオ・・・
さて、この作品には愛天使なる、『他人の恋路を後押ししちゃう』なんていう、うれ
し恥ずかしかしましガールが存在します。
そんな愛天使が、恋愛とは無縁そうなオタ主人公や、その周りの女の子達の恋愛をサ
ポートしちゃうという、まあ、実にお節介で面倒くさそうな物語なのです。

さてさて、本作の主人公・悟くんは、我等が同士、エロゲオタです。
しかも、その事を妹や友人にカミングアウトしちゃえるような奇特な方です。
舞台設定は、我々の住む日本より、ちょっとだけエロゲーマーに優しく、ちょっとだ
け終わってる、現代日本。
なんと、エロゲー専用のポータブル端末が発売されているというのです。
しかも陵辱系の方も、完備しているようで、
「PSPでエロゲ発売!! ソニー完全勝利!!」
などと騒いでいた我々をあざ笑うかのような夢舞台なのです。DSっぽいハードもある
ようでして、これはラブプラスどころの騒ぎじゃないですね。

うわー、日本オワタ\(^o^)/

さてさてさて、ゲームの中身ですが、愛天使ってなんの為に存在するんでしょう。
さらーり、と読み流してみると、なんだか、愛天使達の監督者でボス的ポジションな
かみさまも含め、天界人が地上で活動するのに愛の力が必要だから……って。
そもそも、この人達が天界から地上界へ降りてこなければいけない理由って何?
もしかして、地上界から愛の力が枯渇すると、天界も大変なことになるんでしょうか
ねー?

うーむ、愛の資本主義というか、愛の寄生虫(?)というか、なんか納得できないん
ですがねー。

愛天使達が、誇りを持って成し遂げようとする仕事な訳ですから、ご都合でも何でも
いいから、もうちょっと、もっともらしい設定が欲しいところだよなー、と。

さてさてさてさて、そんな訳で、どうにもこうにも、中途半端な世界観と登場人物が
織り成す、王道キャラ萌えゲームです。
あー、もうこれ以上、このゲームを評する言葉が見つかりません。

さてさてさてさてさて。
企画である呉氏のシナリオと言えば、やっぱり『妹』というものに期待してしまうの
です。
今回の妹・佐奈のキャラクター、兄妹の壁に対する葛藤の見せ方など、確かに他作品
の安っぽい妹キャラよりも魅力的です。
序盤の隠された愛情に裏打ちされたエロゲ的兄妹像、中盤のいじらしさ、焼もちから
のツンデレ的な展開……
二人が結ばれて、すぐに直接的な交わりをしないという、ちょっとしたスン止め展開
は、エロゲー的にはマイナス要素になってしまいそうですが、個人的には扱う題材と
して『妹』というキャラクターを活かした展開であったと思います。
ですが、その後はどうでしょうか?
両親が出張中であることをいいことに、なんだか、本人達の気持ちだけが勝手に盛り
上がっていってしまっただけで……
実兄妹モノであるなら、やはり周囲からの叱責や、それを乗り越える強さ、否定しな
がらも二人のことを真剣に考える周囲の優しさ。そういったファクターが、どうして
も欲しいと思ってしまうんですよね。
(そういう意味では、『何処あの』は、そういう「妹シナリオのベタ」を逆手にとっ
た、名作だと思うんですよね)
両親が不在なら、幼馴染達がいるじゃないですか。あまつさえ、この作品には愛天使
などという愛を語るべき人達が存在するではないですか。
それなのに……
自分で、企画を立てておきながら、その設定を活かしきれていない、キャラクターを
使いこなせていない、そんな風に感じてしまいます。

その一方、外注である尾之上氏は、美鶴シナリオで愛天使というキャラクターを活か
していませんでしたか?
呉シナリオでは、ともすればうっとおしいだけの存在になりがちな、ミカというキャ
ラにしっかりと見せ場を作っていたではないですか。

世間的にあまり評価が高いとは言えない尾之上氏よりも、キャラクターを活かせない
のならキャラゲーなんて止めて、昔の月石が改めて見たいと思うのです。
けれど、この内容では、どちらに行っても中途半端になるだけかもなー、と。

呉氏が作りたいものと、私が呉シナリオで見たいものは完全に別路線なんだなーと、
そう思わせるには十分な作品でした。
良くも悪くも、今後は『呉』というネームバリューを違う目で見ることが出来そうで
す。


音楽/声優・・・
結構、よく出来た音楽。
BGMはAngelNoteより、森まもる氏ということで、流石に安定した外注さま。
テーマ曲の方も、エロゲ的ベタ・ポップスで、割とパワフルながら可愛らしいボーカ
ルとコーラスワークが、「いやー、これはエロゲ用だな」と直感的に感じられる曲調
となっています。
(うーん、どうもここのところ、安っぽいアイドル達のプロデューサーが、こっち系
の楽曲やクリエイターにも食指を伸ばしてきており、二次元と三次元という、そこに
は、暗黙の線引きをして欲しいなーとか思ってるんですよねー)
ED曲のテクノ・トランスを上手く織り込んだポップスもいい感じ。

声優陣ですが、特に目新しさも無く、可も不可も無いキャスティング。
ちょーっとばかり、スパイスを効かせて欲しいなーって思う時もしばしば。
妹の遠海 佐奈役の藤森ゆき奈が、個人的にご無沙汰ぎみだったので、「おー、やっ
ぱり、可愛い声やねー」と思った次第であります。
ああ、この手のゲームにしては、BGVありというのはちょっと新鮮でした。


まー、あーだこーだ言いながら、適度に楽しく、適度につまらない作品でした。
そんな萌えゲーもたまにはいいかなーと思った分別のあるベテランさんや、なんとな
く絵柄が気に入ったビギナーさんで、お暇とお金に余裕があるなら、プレイしてみて
も悪くないんじゃない? と、軽く推奨するくらいはやってもいいかなーという……
極めて微妙で、極めて王道な作品です。
というわけで、私みたいに、ツッコミ癖のある人は、プレイを回避しましょう。

MyBestReview:houtengageki氏@エロゲー批評空間(memo:13610,houtengageki)