絵15+文11+音14+他06 ホラーではなく、怪奇を扱った部分は好みだが、まさに都市伝説の如く、まるでつかみどころの無い作品。なるほど、これは一杯喰わされたか。
映像面・・・
珈琲貴族氏をキャラデザに据えながら、氏の絵の魅力を表現し切れなかった原画陣。
そんな印象が強い。
エッチシーンに限らず、こういった風変わりな作品では、映像であるかシナリオであ
るか、或いは音楽であるか、なにかしら抜きん出たオリジナリティが欲しいが、その
意味においては、まずは、映像面は落第であろう。
シナリオ・・・
シナリオに関して言えば、オリジナリティはある。いや、あるようには見える。
しかしながら、それはエロゲとしては珍しいだけであり、怪奇を扱った漫画や短編小
説においては珍しくも無いような、内容・展開が多々含まれている。
このゲームは、主人公が『時子さんの携帯電話』という呪いのアイテムを手に入れた
ことから始まる。
この呪いとは、
「どうやら、その携帯電話を手にした物は、
一週間以内にその呪いを解かないと死でんしまう」
というものである。
まず、この発想自体は有り触れており、同種の発想を用いた小説が、映画化・ドラマ
化されたことは、特にホラー愛好家でなくとも周知の事実だろう。
次に、主人公がその呪いを解いていく過程であるが、まったく手がかりが無い為、あ
るいは何処かにヒントが無いだろうかと、無思慮に街に溢れる都市伝説を追いかけて
いくだけとなっている。
こうして、短編怪奇ストーリーをオムニバスのように収集していき、周回プレイをす
ることで、『時子さんの携帯電話』の解に近づいていくことになる。
基本の設定である、『時子さんの携帯電話』については、ある意味では様式美とも捉
えることが出来る。
だが、これを『主』と考えると、ドラマ性の薄いオムニバス部分は、シナリオの根底
にある『時子さんの携帯電話』との因果関係が薄く、最終的な『解』に対する感慨が
沸いてこない。
むしろ、『時子さんの携帯電話』という『主』を廃し、オムニバス部分のみを切り出
していた方が、幻想や怪奇といったモチーフが好きなユーザに受け入れられたかもし
れない。
音楽/声優・・・
OPテーマはなかなか面白かったが、それ以外の音楽には聴き所が少ない。
こういった作品こそ、雰囲気を演出する音楽が重要ではないのか?
声優陣は、ネームバリューの割りにひどく地味に感じる。
これは、作画やシナリオの地味さの為か、はたまたキャラに吐かせる台詞に魅力が無
い為か……いずれにしても、残念。
他のキャストがイマイチ作品に馴染まないのに対し、鈴田美夜子は良い演技をしてい
たように感じる。ただ、キャラクターの魅力が感じられない為、活躍の場が濡れ場限
定になっている感はある。
他に無い面白さはあるが、まずは基本として押さえるべき部分が足りない。
エロゲとしても、怪奇モノとしても。
佐久間零式改。この人は、何を表現したかったのか……
『LOVE×EVOLUTION(evee)』でもそうであったが、このクリエーターの存在自体が、
都市伝説ではないのかと思えるほどに、とらえどころの無い人物に思えてくる。