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えびさんの都市伝説は人を喰うの長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
都市伝説は人を喰う
ブランド
雪月花ソフトウェア
得点
46
参照数
1729

一言コメント

絵15+文11+音14+他06 ホラーではなく、怪奇を扱った部分は好みだが、まさに都市伝説の如く、まるでつかみどころの無い作品。なるほど、これは一杯喰わされたか。

長文感想

映像面・・・
珈琲貴族氏をキャラデザに据えながら、氏の絵の魅力を表現し切れなかった原画陣。
そんな印象が強い。
エッチシーンに限らず、こういった風変わりな作品では、映像であるかシナリオであ
るか、或いは音楽であるか、なにかしら抜きん出たオリジナリティが欲しいが、その
意味においては、まずは、映像面は落第であろう。

シナリオ・・・
シナリオに関して言えば、オリジナリティはある。いや、あるようには見える。
しかしながら、それはエロゲとしては珍しいだけであり、怪奇を扱った漫画や短編小
説においては珍しくも無いような、内容・展開が多々含まれている。

このゲームは、主人公が『時子さんの携帯電話』という呪いのアイテムを手に入れた
ことから始まる。
この呪いとは、
「どうやら、その携帯電話を手にした物は、
               一週間以内にその呪いを解かないと死でんしまう」
というものである。
まず、この発想自体は有り触れており、同種の発想を用いた小説が、映画化・ドラマ
化されたことは、特にホラー愛好家でなくとも周知の事実だろう。

次に、主人公がその呪いを解いていく過程であるが、まったく手がかりが無い為、あ
るいは何処かにヒントが無いだろうかと、無思慮に街に溢れる都市伝説を追いかけて
いくだけとなっている。
こうして、短編怪奇ストーリーをオムニバスのように収集していき、周回プレイをす
ることで、『時子さんの携帯電話』の解に近づいていくことになる。

基本の設定である、『時子さんの携帯電話』については、ある意味では様式美とも捉
えることが出来る。
だが、これを『主』と考えると、ドラマ性の薄いオムニバス部分は、シナリオの根底
にある『時子さんの携帯電話』との因果関係が薄く、最終的な『解』に対する感慨が
沸いてこない。
むしろ、『時子さんの携帯電話』という『主』を廃し、オムニバス部分のみを切り出
していた方が、幻想や怪奇といったモチーフが好きなユーザに受け入れられたかもし
れない。

音楽/声優・・・
OPテーマはなかなか面白かったが、それ以外の音楽には聴き所が少ない。
こういった作品こそ、雰囲気を演出する音楽が重要ではないのか?

声優陣は、ネームバリューの割りにひどく地味に感じる。
これは、作画やシナリオの地味さの為か、はたまたキャラに吐かせる台詞に魅力が無
い為か……いずれにしても、残念。
他のキャストがイマイチ作品に馴染まないのに対し、鈴田美夜子は良い演技をしてい
たように感じる。ただ、キャラクターの魅力が感じられない為、活躍の場が濡れ場限
定になっている感はある。


他に無い面白さはあるが、まずは基本として押さえるべき部分が足りない。
エロゲとしても、怪奇モノとしても。
佐久間零式改。この人は、何を表現したかったのか……
『LOVE×EVOLUTION(evee)』でもそうであったが、このクリエーターの存在自体が、
都市伝説ではないのかと思えるほどに、とらえどころの無い人物に思えてくる。