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えびさんのAlter Egoの長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
Alter Ego
ブランド
KISS
得点
48
参照数
5406

一言コメント

(GiveUp) 絵18+文08+音14+他08 戦略性の中にあるマゾヒズムは、嬉々として受け入れよう。しかし、理不尽な陵辱の後には、誹謗と中傷が渦巻くということを、身をもって知るべきであろう。

長文感想

――私は蹂躙された。

私の前に突き出されたのは、黒光りする巨大な拡張パッチだった。
そのあまりの醜悪さと、獣の発するような異臭に脳髄を焼かれ、恐怖に震える脚を伝
う自らの不浄を感じながらも、相手の言うがままに、その『ギガパッチ』と呼ばれる
拡張パッチを手にするしかなかった。
意外であったのは、そのギガパッチを手にした時、私は悲鳴を上げなかったことだ。
確かに、私の喉は、恐怖の前にとうに枯れ果てていたかもしれないが、あれほどまで
におぞましい物をこの手に掴みながら、いかにして私は私の心を保ちつづけたのだろ
うか……。
私は、そのおぞましい物に奉仕することで、蹂躙者の許しを乞おうと考えたのかもし
れない。そんな、ありもしない許しを信じることでしか、私は私という形を保ってい
られない程に、追い込まれていたのかもしれない。
私がそれを手にして幾秒も経たぬ内に、蹂躙者は私に強要した。私が蹂躙者の欲望を
吐き出させるべく、自ら動くように言いつけたのだ。
私は、そのギガパッチを自ら、私自身の中へ埋没させた。
私は自ら動いた。そして、その醜悪なものを受け入れながら、自分の中身をかき回し
た。
もはや苦痛など忘れていた。ただただ、早く終わるようにと、そればかりが私の脳と
身体を支配していた。一秒でも、一瞬でも早く、この恐怖から逃れたかったのだ。
だが、不意に蹂躙者は奇妙な行動をとった。私の動きを止めさせ、蹂躙者自身が私の
中で暴れ始めたのだ。
――気持ち悪かった。
それまで、私は私で動くことで、蹂躙されているという事実を何処か頭の片隅に追い
やろうとしていたのかもしれない。しかし、行為自体が蹂躙者の主導に切り替わった
途端に、蹂躙者の獣のような息遣いが耳朶を震わせ、血走った眼に射抜かれている事
に気付いてしまった。
そこから先は、蹂躙者が蹂躙者たる所以とでも言うように、私は身体を貪り続けられ
た。そして、時折思い出したように、涙と嗚咽と不浄の物を垂れ流すだけの存在に貶
められた私。
私は思った。――いっそ快感を感じてしまえば、楽になれるのではないだろうか。
それは禁忌の果実だった。しかし、それに手を伸ばすには、蹂躙者の技量はあまりに
も稚拙で、ただただ愚直で暴力的であった。

やがて意識を失って目覚め、また意識を失って……どれ程の時が経ってか、何度目の
目覚めか……、気が付けば蹂躙者は私の中から消えていた。いや、その姿すら見とめ
る事は叶わなかった。
――終わった。
私はそれだけを思い。深淵へ落ちるかのように、再び意識を失った。


私は戻ってきた。心と身体に傷を負いながらも、日常の中へ戻ってきた。
私は誇りに思う。あの時、あの果実に手を伸ばさなかった事を。
そして、蹂躙者に感謝する。

「このインポ野郎!!」

と。

<以上、マイコンピュータに代わり、お伝えしました>


驚く程にデカい拡張とは名ばかりの修正パッチとか、気持ち悪く崩れた絵だとか、く
っだらないシナリオだとか、中身のない音楽だとか、根本的に破綻したゲームバラン
スだとか、数え切れない恥辱を、私の自作機に味わわせてくれた作品。

ギガパッチは、どんな形にせよ、ユーザにサポートを提供する姿勢の表れかも知れま
せん。
絵やシナリオ、音楽など、それらは趣味趣向の問題であって、必ずしも私の判断が正
しいわけではありません。
ゲーム性も、まったく面白くないというわけではないですが、プレイしつづけるには
心地の悪い忍耐が必要であるというだけ。
ですから、人によっては楽しめるのかもしれません。

あくまでも、私の自作機を蹂躙したのは、私自身です。

ただただ、私が一切楽しめなかったと言う、それだけの感想を、ここに書き留めて置
きたいと思ったまでなのです。