ErogameScape -エロゲー批評空間-

えびさんのタイムリープぱらだいすの長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
タイムリープぱらだいす
ブランド
FrontWing
得点
75
参照数
5870

一言コメント

絵25+文06+音18+他26 あれもしたい これもしたい もっとしたい もっともっとしたい♪ 俺には夢がある!

長文感想

3Dゲーを『ツール』として扱うという人は、また違うのでしょうが、予てより、3
Dゲーに慣れたユーザなら、発売日に買った(届いた)ゲームを、その日の内にやり
込むような愚行は犯さないでしょう。
私なら、取り敢えずインストールして、動作チェックと操作性の確認をしたら、数日
間寝かせます。
この間、有志であり勇士であるユーザ様方により、デバッグが進められ、攻略情報は
元より、カスタマイズ向けの解析も進められていきます。
初回の大きなパッチのリリースによって、やっと私はゲームに着手するのです。
と、まあ、これまでの3Dゲーユーザなら、こんな事は、割と当たり前の段取りだっ
たはずです。

ところが、ニ●ニ●動画等で、3DゲーのMODが結構な再生回数を叩き出し始め、
それまで一部の限られたユーザの、密かな楽しみであった改造が広く浅く浸透してい
ます。
(※もっとも、それは、恐ろしいまでのファン人口を持つ、初音ミクや東方の血が注
がれた事に起因する事象であり、予てよりの3Dゲーファンにしてみれば、絶対的な
ファン人口の差を、まざまざと見せ付けられたという側面も強いのではないでしょう
か。)

そんな訳で、なんだかんだと言われながらも、3Dゲーは『ツール』としてのポジシ
ョンを確保し、一時期のことを顧みれば、結構な本数が捌ける商品となりました。
ユーザが増えれば、不満の声も大きくなるのは当然でして、初期のバグに対して憤慨
するユーザも増えてきました。
こういった、ユーザの裾野を広げていく為の作品が、リリース日に700MB超えのパッ
チを配布しているようでは、ユーザの信頼を勝ち得ないでしょう。
予てよりの3Dゲー愛好者としては、擁護したい一面もあるにはあるのですが、デバ
ッグは、3Dゲー特有の作業ではありません。2Dゲーであっても、10年近い歴史を
持つFrontWingほどの老舗なら、デバッグの重要度は身に染みて理解しているはずで
す。
この度の、ユーザの不満は、紳士に受け止めて欲しいと思います。


さて、前作『タイムリープ』は、ツール志向でなく、それなりのストーリーを軸に据
えた、既存のそれと同種のADVゲームでした。
今回の『タイムリープぱらだいす』は、既存路線から外れ、『FD』であり、『遊べ
るゲーム』であり、『抜けるツール』であり、『見せるツール』であるという、見所
満載な作品となっています。

FDとしては、キャラ達の微笑ましい日常を切り取った、ADVパートが用意されて
います。
ですが、前作リリースから、実に1年8ヶ月が過ぎた今、また、前作自体に強烈な萌
えが無かったにもかかわらず、キャラ萌えだけで見せる日常パートなど、誰が、どれ
程、楽しめるでしょうか。

遊べるゲームとしては、スケジュール/パラメータ管理型の、育成ゲーム要素があり
ます。
一週間で、エッチを出来る回数は制限されています。ですが、パラメータを上げるこ
とで、その回数も増えていきます。一日、5回でも10回でもエッチ出来るのです。
しかも、H度以外の他のパラメータへの影響は無く、ノーリスクなエッチがいつでも
可能なのです。
これは、育成ゲームとしては、致命傷なのではないでしょうか。

抜けるツールとしては、体位やコスもまずまず豊富な、リアルタイムエッチがありま
す。
今回は、体位や行為の種類がなかなか多く、より実用的に進化したと感じます。です
が、ピストン中の、ヒロインの喘ぎ声や表情の変化が一辺倒の為、すぐに萎えてしま
います。
(逝く時の描写も微妙ですし、そもそも射精の仕方、これじゃわかんないですよ)

見せるツールとしては、エッチ同様コスのパターンと歌で綴る、ダンスパートがあっ
て、この作品の目玉と言えるでしょう。
概ねよく出来ているとは思うのですが、踊れるのは一人だけという仕様は、前作のベ
ンチマーク以下であると、多くのユーザが皮肉っています。


確かに、多彩な要素が絡まり、面白い作品です。
ですが、各要素がまったくバラバラで、纏まりに欠けている為、一本の作品をプレイ
している感覚が得られませんでした。その上、先に述べたような、個別の問題が散見
される為、非常にカオスな作品として仕上がっています。
ゲームとしてもツールとしても、あまりにも半端過ぎます。



私には夢がありました。それは、別に両手で抱えきれないような、大きな夢ではあり
ません。
『タイムリープ』という作品の、正当な進化系であって、2Dゲーと3Dゲーの壁を
打ち破る作品の出現という、小さな夢でした。

この作品には、3Dゲーに纏わる現状を見せ付けられた思いでした。
私の小さな夢が、現状では、所詮、『泡沫の夢』であることを、この作品に思い知ら
されました。

私は、この作品で、踊らせたのではなく、踊らされただけなのかもしれません。

初めて、購入したことを後悔させられた3Dゲーでした。