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うるぽんさんのG線上の魔王の長文感想

ユーザー
うるぽん
ゲーム
G線上の魔王
ブランド
あかべぇそふとつぅ
得点
89
参照数
172

一言コメント

ハルの推理と魔王の駆け引きが痛快なミステリーだった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ハルは刑事コロンボみたいだな、と思ったと同時に
髪ボッサボサだけではない
なんかおもろい奴だなとも思った。
魔王側の視点も取り入られてる倒叙ものでもあるし。
各人の言葉の隙を突くのはやり過ぎとも思われる所もあるが
カマかけも含めた演出だろうか。
容疑者?が立ち去る間際に
「ところで、、、」とかいって引き留めるのがとてもそれっぽい。
でも本作は魔王の方が一歩上なのだけど、、、
そして悪、と呼ばれる側も出てくるが。
右側な人、騙されて復讐に燃える人、極道など
でも一方的な悪としては描かれていない。
そして各ヒロイン√はそれらを赦し、成長する物語だったのだねと後から思いました。

あと西洋の個人主義的な価値観と悪魔崇拝的な価値観の結びつきもうっすらであるが見られる。
そして各ヒロイン√はそれらの価値観との戦いでもあり
最後は家族愛、姉妹愛に収束していく、或いは大人の対応ができるようになった。
なので個人主義的な考えが好きな人にはイライラする箇所であったかもしれないし(特に椿姫とか)
ラストでそれを覆す説得力があったかというと若干弱かったとも感じた。
そのあたりが各ヒロインシナリオが弱いと言われる所以なのではないかと。

魔王の正体は途中までは普通に考えると主人公なのだが
まあこれはミスリードの可能性大だろう、、、と
兄あたりが怪しいがもう死んでるのか、、、、、
実は生きてたってパターンはありそうだが、それだとなんか安直だなと思ってました。
年の離れた兄なら子供がいたとか、実は双子がいたとか
それらしい伏線に気を配ってましたが結局は安直な正体だったようで、、、
いやもう正体は主人公でもいいとも思うのですよね。
それはまたそれで一つのドラマになりそうですし
魔王が花音√で途中退場するのはあまりにも不自然だと思うし。

各ヒロイン感想
・ハル
やはりピカイチの存在感。
皿屋敷お岩さんな姿でありながら話してみると
結構面白い奴なんだな、と。
初詣シーンも可愛いし。
主人公もハルもお互いに因縁のある間柄。
でもその二人が結ばれて
子供が出来て復讐の連鎖が断ち切られたところで物語が終了。
中々良いエンドだと思います。
しかし実生活で一々台詞に突っ込まれて推理されたら
多分心が保たないでしょうきっと。
一緒には生活したくないタイプかも。

・水羽
見え見えのツンデレ。
この√は実質息抜きで水羽に萌えて笑える√ではなかろうか。
最初はハル√に直行してしまったのだが
最終章まで終わってから戻ってプレイしてみると
事件は速攻で終わって
テンションの違いにビックリした。

・花音
最近の萌え系妹でなく昔ながらの懐かしい感じのする妹だった。
でもあまり面白い√ではなかったかな。決して印象に残らないというわけではないが。

・椿姫
あまり自我が感じられず上記の悪魔的な価値観から遠い存在ではあるが
それが逆に彼女の危うい一面。
途中開き直って享楽的な椿姫になっていくのか、と思ってたが
そうはならずに家族愛をやっぱり優先する。
ここで本作の方向性がある程度分かるようになった。
散々引っかき回して主人公が窮地に陥るのが勘弁とさすがに思ったけど!
ある意味最凶なヒロインじゃなかろうか、、、