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うるぽんさんのCARNIVALの長文感想

ユーザー
うるぽん
ゲーム
CARNIVAL
ブランド
S.M.L
得点
96
参照数
1062

一言コメント

明日無き青春

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

小説のほうもあるらしいけどそちらは未読の上での感想。

シナリオ1が本編、骨格になる部分で
ここで大半の事情は分かる仕組み。
映画だったら恐らくシナリオ1だけで終わらせるでしょうね。
殺人事件を引き起こしてしまい
匿われながら、監禁、陵辱という流れだけ見れば
サイコホラーとかの映画でありそうな内容かも。(昔見た殺しのヒッチャー震える白い肌とかいう映画を何故か思い出した)
そして、その手の映画は家庭環境に問題があった等の
背景がさらっと描かれたりすることが良くあるが
本作は事件に至るまでの第二の人格、少年少女期についての
心理描写を追っかけてるという部分で
単なるサイコホラーや陵辱ものというジャンルからは
少し異なる。
敢えて言うならばたまにニュースとかを賑わす
「普段は大人しい少年の心の闇」とかなんとかの狂気みたいな
事件を狂ってるという言葉で片付けないで
正面から向き合った内容であり
ライターが一番描きたかったことではないかと。

ただシナリオ3まで進むともう少し視点を大きく広げる必要があるかもしれない。
シナリオ1では流されやすく無抵抗、無気力だった学が
状況打破のため自己防衛のため理紗のため、
(他にも復讐心や猜疑心、自己顕示欲、社会への反抗も影にあったかと思う)
監禁、陵辱を行う自己のネガティビティを
受け入れ藻掻きながらも
最後は武を受け入れ
既に後はない儚い成長を遂げていく様を描く。
後のシナリオのことを考えると
当然ながらかなり主観的な内容である。
シナリオ3は理紗からの視点ではあるが
幼少期からの記憶から事件に至るまで順序立てて描いており
何故この事件に至ったか、
そして泉との会話でキリスト教の話(真っ向から否定してましたけどw)などを
絡ませて
少しテーマを普遍的なものへとシフトさせているみたいですね。
そしてやはり上に書いたような
ライターの書きたかった事へとまた繋がっていくのだと思います。

恐らくシナリオ3理紗編が無くても
シナリオ1、2での理紗の言動から
学(と武)を信じた上で(シンパシーもあったのだろうけど)
そして理紗自身何か後ろめたいことを
隠しながら裏切ってはいない、ということが
容易に想像できるのではないかな。
忘れてならないのは
学と理紗の関係。
理紗の事が好きだからこそ裏切りがあったと勘違いし
学も武も逆上するのだろうけど
理紗のほうはどうだったんだろうか、と少し疑問には思った。
台詞には好き、とは出たけど
シナリオ3の理紗の心理描写でも好意については
最後まで触れられていない。
とはいえ理紗が撃たれるバッドエンドで
「これってある意味カンペキなハッピーエンドよね」と
理紗が言ってるあたりやっぱり相思相愛だったんだろうね(そう思いたい)。
なので最初はバッドエンドだと思わず
こういうエンドなんだと勘違いして
スタッフスクロールでも流れるのかと思いきや
いきなり「BAD END」って出てちょっとビックリw

あとバッドエンドではないけど
渡会泉との逃避行エンドも印象的。
どこかのフランス映画みたいに
奔放に生きる様はある意味憧れます。
泉の「人生で一番大切な事って何だと思う?」
「自由よ」の受け答えのシーンがまさにそれっぽい。

音楽について少々。
OPはハードロック系でタイトル画面や
作中でもメタル系。
学がMDに入れてた音楽は
理紗の反応から読み取ると
恐らくデスメタルやブラックメタルとかそこら辺。
メタルは世間、体制への反抗(厳密にはハードコアのほうなんだろうけど)と
世間から爪弾きにされた者の孤独を歌うことが屡々。
OPも本編と違いすぎるとの意見が多いみたいですが
明るく振る舞うヒロイン達と
顔を見せない、
顔を見せるかと思いきや別人格が出てくる時の学を対比させており
歌詞の内容とマイナー調な曲と共に決して筋違いなムービーでは無いと思う。
何か世間に突きつけてやりたいって
気持ちはあるんではないかな、と
ちょっと思った。