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うるぽんさんのジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-の長文感想

ユーザー
うるぽん
ゲーム
ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-
ブランド
きゃべつそふと
得点
85
参照数
511

一言コメント

全体的には最初から最後まで テンションを保ち、どんでん返しなどで最高潮に達するのだが 戦闘がワンパターン、トリックや伏線仕込みが裏目に出て強引になっている部分が足を引っ張っている。 後はエロゲ界のタブーに幾らか踏み込み チャレンジしているところを汲み取り評価するかどうかで各人の印象が異なるのでは無いかと思います。 自分としてはやはり熱中して読み進めることが出来たので 納得出来ない箇所はあるものの好印象。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

タイムリープ無しヒロイン(多分)4人分ぐらいの
分量の長大シナリオを異能バトル、いつものどんでん返しを駆使して
最後まで強引に突っ走る。
序盤はパルクールレースとかあったりして
最初は、るい智とかのパクリかいな、と思ったりした。
ペガサス組も最初はるい智みたいに仲悪いし。
そして全部終わってみるとパルクールレースは
この物語の全貌を表していたようにも思える。
ルールに書いてなければ反則まがいでも問題無し、
とにかく強引でも一番にゴール出来れば良い。
例のどんでん返しは気付かなかったし、関心はしたのだが
よくよく考えると強引な箇所、ご都合主義だらけとも思った。

強引だなと思った箇所

・マスターが潜入してるなら主人公が潜入しなくても・・・
しかも先生やってるし、、、
・セシリアなんで日光に弱いん?
・三種の神器あっても隕石だけで国内まで攻め込めてる、、、
というかそもそも学園にも攻めて来れてたわけだし。
・学園が意志、賢者の石に関する秘密を抱えてるとのことで
学園の警備が厳重になってるはずだったが
別に秘密を抱えてるわけでも無かったような。
賢者の石について先生達も詳しいわけでも無さそうだったし。
他の組織も潜入してるとのことだが果たして何の意味があるのか。
・マスターは別に賢者の石について秘密にする必要は無かったのでは。
教えていればもっと早く賢者の石の場所を特定出来ていたように思える。
グラフィックとして如何にも何かありそうって感じでかなり怪しかったし、、、
最初は例の像のどこかにはめ込まれてる可能性を考えていました。
・普通皆既日食は一部の場所でしか起こらない。無論ダイヤモンドリングも。
ここの部分は何かしらどんでん返しがあると思っていた。
例えば世界が実はもの凄く小さくて住んでいる人、生物がみんな小さいとか。
長さ、重さ単位が違うし。
或いは月が馬鹿でかいとか。
それともリビュアだけ皆既日食が起きれば良かったのか?

他にも忘れてるだけでいっぱいあったと思います。

しかしその一方でお約束を破棄した挑戦的?な箇所も随所に見られる。
・緑髪のヒロインがいる。以前よりエロゲ界では言われてる事だが緑髪のヒロインは何故か人気が無い。
自分もベルカのことは決して嫌いではないのですが
可愛い、愛着が感じられるヒロインとなると
メア、ルビイとなります。
・各ヒロインに特化した√なし。
色気のある場面はかなり限られます。ルビイを部屋に泊めるところぐらいかも。
ラッキースケベとか全く無いです。
・メインヒロインが主人公でない男にベタベタしたりします。
普通なら男がパンチ喰らうなど突っ込みが入る箇所。
ここが一番衝撃でした。
・サブとはいえFDが出ればヒロインに昇格しそうな
妹系であるノアが暗殺されてしまう。さらにヴェオに惚れてるっぽい描写。


ただ逆に戦闘の展開が典型的、ワンパターンすぎるようにも思えます。
厨二的な必殺技、敵が逆転、助っ人が入る、意志の覚醒などで
戦闘の殆どが埋め尽くされてるのは逆に珍しいかもしれない。
問題は各人の心情の移り変わりを追っていくのがダレてしまうとこでしょうか。
もうこれRPGにしたほうがいいじゃね?。
KEYみたいな本気か冗談か良く分からない大ボリュームのサブゲームRPGとかで
長大シナリオとRPGを両立しちゃうみたいに、、、w

中盤の種族ネタバレについて。
主人公が他の人達と種族が違うというのは
かなり最初のほうで気付くのですが
如何にも厨二病な宵闇連盟、魔眼、といったキーワード
ギメル、ルビイの容姿から
主人公側が吸血鬼と誤認させるものでした。
他の作品でも実は主人公が吸血鬼ってパターンもちらほらありますし。
しかしそこからどんでん返しにして
フリギア、メドゥーサ双方に感情移入させるやり方は上手いと思いました。
しかしこの部分が無いと
他の箇所で粗い部分が多いので
作品の評判がガタ落ちになってたかもしれません。
日光への耐性については
保護クリーム使ったりとか、どうせご都合主義でひっくり返せると思ったので
気にしてませんでしたが、
幾らか肌が弱い描写があったのでアリアンナ、ベルカ辺りは
実は、、、ということがあるのではと怪しんでいました。
あとリビュアへ向かう時にトイレに行きたがる描写が全く無いのも少し疑問に感じていましたが
食事については気がつかなかったです。
しかしヴァンパイア同士で血を吸うのというのも冷静に考えると変な設定ですよね、、、
そして種族の違いによる壁があるため
恋愛描写が控えめどころかメインシナリオでほぼ皆無になっていることにも繋がっているのが
評価が分かれるところ。

序盤は険悪なクラスメイト間の問題だけであったが
風呂敷を広げて人種間の問題について物語が大がかりになっていくにつれて
果たして上手く畳めるのだろうか不安であった。
無論アリアンナみたいなやり方では無理が出てきてしまう。
ただノア達がアトラス都市国家を設立するという演説や
各人仄暗い感情や挫折を抱きつづも互いに修正しつづけるなど
出来るだけキチンと描こうという箇所は心打つ場面だった。
そしてそれでも暗殺やメドゥーサ達の立場、南側の思惑も絡んできてやっぱり上手くいかない。
この部分は若干駆け足気味ではあったがやっぱり最後まで気になる。
もう残った道は互いに傷つけ合い文明が崩壊し原始時代からやり直すしかないのではという
考えが頭の中にチラついてくる。
しかしそのような考えも結局は最後の敵、エウリュアレと同じ結論に辿り着いてしまう。
見せ方に幾らか無理矢理感が出てきてるがやっぱり本作を全て総括するのはエウリュアレを倒すことなのだろう。


一般コンシューマー向けを狙うにしても
中々エグい箇所もあるので
そちらにはあまり向かなそうなシナリオだし
シナリオライターとして挑戦したかったというのが正直なところなのだろうか?
ただユーザーとしては高解像度化のほうも挑戦してほしいです。
さすがに現在でこの解像度は小さすぎます。
またシナリオの内容、ボリュームに対して
CG、立ち絵の数など追いつけてないように見受けられます。

各ヒロインなどについて

全体的に色白で細めの体の人物が多いが
勿論それは伏線なんでしょうね。

・アリアンナ
マークスも言ってましたが
全く空気も読まず危ない敵にも平和を呼びかける彼女には
ある意味狂気を感じます。
最後神になってご都合主義の塊、デウスマキナとなるのですが
なんというか最後まで感情移入しにくかったです、、、
しかし時間遡行の過程で学園長にお告げを与えてたり
役割としては重要。

・ベルカ
メインシナリオではヒロインとしての存在感はあまりなく
どちらかというと戦闘要員としての人な印象。
緑髪ヒロインのジンクスをまた更新してしまいそう、と思ったのは自分だけでしょうか、、
意志については剣については誰にも負けない意志とのことだが
相手が特定されないと本来の効果を発揮出来ないのだろう。
互いが名乗ることを前提とした決闘向けに特化した意志なんですね。
最後キルスティンに勝つことが出来たのはそのせいか。

・メア
上記に挙げたるい智、コミュで茜子、真雪みたいな立ち位置でしょうか。
毒舌ネコ系だし。
甘えんぼになったところが可愛いです。
やっぱり自分はネコ好きなんです。
抱きしめてスリスリしたくなるのです。
しかしその甘えんぼが主人公以外に振り向けられるのが意外。

・ルビイ
一番エロゲのヒロインっぽいのは彼女でしょうか。
彼女と出会う度にやっぱり一緒に寄り添って生きていこう
メドゥーサ側について行ってしまおうか、と考えてしまうのです。
実際にそういう√があっても良さそうなのに。
こういう考えはメイナートが言う少数側へのシンパシーが含まれてるのかもしれない。
しかし最後の卒業写真では入ってないという冷遇ぶり。

・マスター
画面に映る姿は文章も含めて動きがなさ過ぎるので
偽物っぽいのは分かっていましたが
案外正体は男だったりとか色々思っていました。
しかし正体不明のまま終わるのかな、と思ってたところで
正体が判明。
尚更賢者の石の欠片が入手された経緯が良く分からなくなりました。
このマスターならば欠片を持って学内をうろつけば
自分で場所を特定できそうだが、、、w

・ノア
メインではなくサブ扱いなんですね、、、
ストーリー上の役割としては
メインヒロイン以上だと思うのですが。
登場時、可愛い妹系を求める人には僥倖、、、と思われましたが
ヴェオに惚れてるっぽく、さらに暗殺されてしまうという
なんとも不条理を感じさせる。

・ギメル
時系列で考えるとχが主人公では明らかに変な感じだったので
消去法的にギメルがχといった感じで予想していた。
しかし意志を発現したのはいつだろう?地上に出たときかな。
意志は金ではなく太陽。
惑星を構成する鉱物類だけでなく
恒星までもが意志になる対象に含まれるのですね。
如何にも強そう、、、ですが押される場面は多かったような。
しかし生命の象徴として一巡回った最後にエウリュアレに突き刺さったということだと思います。
ED後ギメル本人は生きていたのかは気になります。
メイナート、キルスティン達と共にトロイに刃向かって行ったのでしょうか。
パワーバランス的にそれぐらいが良いのかも。

・カーラ
最後、組織が、、とかいうのは誰もが気になります。
もう一度最初からそれを気にして読んでいけば何かしらヒントはあるのかもしれませんが
そのためにやり直すのは正直キツい。
しかし幾らか疑問に思っていたこともありました。
彼女については戦闘の場面がかなり限られているのです。
幹部とはやりあってましたが
メドゥーサの一般兵達とは戦っていたのでしょうか。
最後メドゥーサの一般人コロニーでも戦闘の描写は皆無でしたし。
あと古戦場に助っ人で扉くぐって来ませんでしたっけ。
カーラって古戦場に来たことありました?
もしかして?