AIの話をメインにアンドロイドが人間性を求めるというのはありがちな内容かもしれないが、人類文明崩壊後の未来の世界観を色んな観点からかき集め一本の感動的な物語に仕上がっているのは実際には少なかったと思う。プラネタリアンとはまた違ったアンドロイドものとしての名作。
自分が本作のようにアンドロイドが人間性を求めていくといった内容で
よく思い浮かぶのがプラネタリアンとスタートレックのデータである。
特に後者はこの手の内容でスタンダードを作り上げたといっても良いと思う。
そして結末は、、、
自己犠牲による「人間としての死」によって人間性を達成するというものだった(データは最近生き返りましたが、、、)。
だからフィリアについても
最初「人間になりたい」と言った時点で
そういう結末を考えてしまうものである。
しかし本作はそのような結論にには至っていない。
そういったことをしようとしたフィリアの行動は
主人公によって否定されてしまう。
ただ決して人間性に不要といった描写ではなく
あくまでも人間性を追い求めるにあたっての要素の一つ、通過点としての描かれ方のようである。
基本的には喜怒哀楽に通ずるコミュニケーションが
人間に近づくための成長するキーとなっている。
自己犠牲といった一つの事柄に拘るのでは無く
二人の旅を通して色んな経験を吸収していき
お互いの心境の変化を追っていき人間性を描こうとしているので最後までテンションを保ちつつ
一本の線で書き切っている。
もう一つ言うと人間性を取り戻すのは
フィリアだけでなく主人公も同様ということだろうか。
特に廃墟都市あたりで顕著だが
各種サイバネ装備を体内に入れ込み強化人間状態な主人公、
AIを初めとした障害に対して冷徹な判断を下し
排除していく戦闘マシーンになることも出来る。
しかしフィリアに対して愛着を持ち始めてから
ぶつかり合い、互いが変わっていく。
そして軌道エレベータ上のステーションで公爵との対峙で出した結論は人間的な判断そのもの。
勿論決して理性的な判断とはいえない。
とはいえこの頃になると読み手であるこちらはとっくにフィリアに愛着を感じているわけで
主人公の判断がすんなりと自分の喉を通るようになっていた。
やはりフィリアは可愛い。可愛いは正義。
ただ自分は最初から愛着を感じてしまっていたせいか
途中フィリアの成長をあまり実感出来なかったのかもしれない。
確かに口調、喋る内容からは成長したのを判断出来るし
何がきっかけで成長したのかも文章からは分かります。
しかし終わってみてから海岸ではしゃぐフィリア、
足が痛いと言ってぐずるフィリアなどを思い出して
振り返ると少し眼鏡が曇っていたような感触が残りました。
また最初から始めてみようかなと、思うのは
完全にやられたんだと思います。
最後はVer君なんかが加わって
人類は衰退しましたに出てきたモノリスを思い出しつつ
やっぱり最後はロミオっぽいなと感じる終わらせ方、
それとKeyっぽい終わらせ方で纏め上げた、、、
と思ったら主人公が、、、
助けに来たシンギュラリティマシンは医療用でなくとも
すぐに他の医療向けの個体と連携取れそうだが?
しかしこれは人生を全うした、人間性を取り戻した、ということに繋がっていると思えなくも無い。
というよりもフィリアに次世代を託したといった意味の方が大きいのかもしれない。
欠点ってほどでもないかもしれないが
ちょっと気になった点
・導入部分が依頼、というのは少々ありがちすぎるような。
RPGのクエストとしてならまだしも
一つの物語としての出発点としてはあまり面白そうと思わせる導入ではないと思う。
映画でもゲームから影響を受けすぎたようなストーリー運びが増えてると感じるのだけど
興ざめなので何とかして欲しいと思ったりします。
でも戦闘シーンでのFPSっぽい描写についてはあまり気になりませんでしたが。
・特に序盤であるが、さっき言ったことと矛盾してないかと思われる箇所がチラホラ。
あまりロミオらしくないな、と首を捻った。
・エピローグでロミオ節とも言える結論を出してきているが今回は蛇足感を少し感じた。
いや、蛇足感と言うよりもまた同じ結論で締めるのかよ、といった感じかもしれない。