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うるぽんさんの景の海のアペイリアの長文感想

ユーザー
うるぽん
ゲーム
景の海のアペイリア
ブランド
シルキーズプラスDOLCE
得点
94
参照数
455

一言コメント

ループもの、バトルもの、バカゲーとか色んな要素を叩き込んでおきながら、程良いこってり感で一本の物語に仕上げたのに驚愕。単品ではどこかで見たようなネタも多いが、それらを念頭に置いたプレイヤーとライターの知恵比べという側面も考えるべきか?出てきた文章を順番に考察するだけでは頭が混乱するだけかもしれない。そういう意味では寧ろEVER17に近いのか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シュタインズゲート、ソードアートオンラインを足したようなものとの
レビューが散見されますが、
自分はどちらもプレイしたこと、読んだことは無いです。
それでも頭の中で大体のストーリーの流れは思い描いてしまいます。
現実だと思っていたのが仮想現実であったりとか
シンカーの正体とか・・・
現在は色んなストーリーのゲーム、物語が既にいっぱいあって
この手のエロゲのプレイヤーは
事前情報無しでも序盤の段階で
過去の経験を元に正解に(確信が無いかもしれないが)辿り着いてしまうことが多いんじゃないかと。

タイムリープしても
アペイリア作成前でアペイリアネットワーク、セカンドが既に存在して
アペイリアネットワーク、ウイルスがタイムリープごとに学習していくあたり
→現実世界が仮想世界かも?とか想像。
そういやサードとかも出てきたな。あれは現実世界と関係あるんじゃ?とか。
目が覚めたら実はマトリックスみたいに
試験管の中で荒廃した現実世界が・・・とか色々モデルケースもあると思います。

シンカーについて
どこか主人公と思考が似通ってないか?
主人公の考えが読まれすぎてないか?
シモ関係に変に理解もあるし(笑
でも一方で感情的な部分は極力抑えられている。
一のおじさんにしては久遠に配慮が無さ過ぎるし引っ掛けか?
→主人公のコピー、というかAIか何かじゃね?強いAIかどうかは怪しいけど。
あれ?そういや主人公の父親とシンカーって中の人同じじゃね・・・ということは?

・・・とまあこのあたりまでは各ヒロイン√に入る前でも想像してしまうのです。

ただ本作が特徴的なのは
上記ぐらいまではある程度見破られる、怪しまれるの見込んだ上で
様々なトリックをやギミックを仕込んで
プレイヤーを翻弄し
さらに物語として面白いものを作ったことにあると思う。

シンカーとのダウト勝負、
各ヒロインとの世界に関する考察・・・
不確定要素がまだ多い時期の話なので
辻褄を合わせているようではあるが
他にも色々可能性を差し込むと
果たして相手が本当のことを話してるのかも
怪しくなってくる。
マトモに追いかけてると多分頭が混乱する。
でもそれは狙ってるんだろうな、と感じました。

そして最後の最後
例の箱の干渉縞の件ですが
あれは本当の観測者はプレイヤーであったというオチで良かったのかどうか?
もちろんプレイヤーはアペイリアを破壊しようとしたり、したがったりはしないだろうけど。
もしかしたらアペイリアを破壊する目的を持った人(団体?)は
あくまでもファースト管理者であり
≠本当の観測者ということで、
それについてはゲーム内の人物は誰も気づいていなかったということかな?
主人公が現実世界に出てこれて
アペイリアを現実世界に連れ出したので結果オーライだったけど
観測者の正体は分かって無かったというオチ?
三羽は成り行き上観測者の役割をさせられていたというだけか。
観測者か?と聞かれても妙な間の後にやっと「そうです」と認めた感じだったのも気になる。
さらにラストでの三羽の「兄さんは小魚を助けた程度ですよ」というセリフに
意味があるとすると
プレイヤーはこのゲームの現実世界よりもさら上位(?)の現実世界から
この景の海のアペイリアというゲーム世界を見ていたという解釈も出来そう。
まあこの辺は大作にありがちな
個人の想像にお任せします、というやつかもしれないけど。

とかまあ終わってみたから上記のように考えたのだが
やっぱりラストにたどり着くまで
シンカーの正体ってストレートにオジサンだったのか?とか
本体シンカーとそうでないシンカーといるんじゃないか?とか
アペイリア(無限という意味)と久遠とその母親の関係について考えたりとか
ブックマンの正体には気づかなかったりとか、
シンカーのデザイアは分かったけどコストは何なんだ?とか、
タイムパラドックスで多世界が生まれるとか分かるような、でも怪しいような?とか
色々翻弄されたと思います。
それも含めて面白かったけど。

余談ですが
主人公は確かに引くほど変態ですが
それに律儀に付き合って
真面目に戦ってくれる連中もやっぱり変態の仲間だと思った。
この小池一夫の漫画みたいなノリ、
エロゲ界で大切にしてほしいです。

ヒロインは
ましろが一番好みです。
アペイリアもですが
この守ってあげたいギュッと抱きしめてあげたい
感覚が突出してましたやばたんでした。
アペイリアもその点かなりいい線行ってますが。

あととてもとても気になった点として
序盤に出てくる二重スリット実験。
あれって原子じゃなくて電子のお話ではないんだろうか・・・
全体的にSFネタはあまり本気にしないほうが良いと思う。
発車口は治ってたっぽいけど。