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うさぎねこさんの恋する乙女と守護の楯 ~薔薇の聖母~の長文感想

ユーザー
うさぎねこ
ゲーム
恋する乙女と守護の楯 ~薔薇の聖母~
ブランド
AXL
得点
75
参照数
2069

一言コメント

それでも私は恋楯を愛してやまない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

AXLの最大のヒット作であり、女装潜入ストーリーの代名詞とも言える『恋する乙女と守護の楯』。その続編である所の今作、薔薇の聖母は良くも悪くも問題作であったと思う。

今までファンディスク並びに続編を頑なに作らなかったAXLが恋楯の続編を制作するという情報が流れた際。誰しもが感じただろう。

楽しみだけど怖い。
前作の完成度が高かった分、続編に対して生じる疑念・不安は強く、発売前から大変高いものとなっていた。

しかしプレイして最初に展開されるのは用人の護衛。美しい女性を助ける優秀なガーディアン。
女装にも慣れ、エージェントとしてのステップアップをした修史を見て、また変わらぬ課長改め部長の存在感を感じて。
私が待ち焦がれた『恋楯』がそこにあったと確信した。


任務にて再び山田妙子になってもそれは前作の焼き直しではなく、成長した修史なりの学園へのアプローチが表現されていて感動した。
経験を活かして以前よりもナチュラルに周りに溶け込んでいて、以前と学園内での立ち位置も違うにもかかわらず、山田妙子らしさが全く損なわれていないことに更に感動した。

最近のAXL作品は凡作から良作をさまよっていた印象だったが、ついにその壁を打ち破れる逸材が来た!
そういったことまで考えていたのだ。

この時までは。


プレイを進めていくにつれて違和感がどんどん形になっていった。

舞台設定はいいのだ。生徒を守るため、学園の生徒会長を決めるために争う二大派閥を制するための第三勢力として妙子が奮
闘して信頼を得ていく。実に素晴らしい。

しかし、いくら舞台が良くてもそこで演じる役者(キャラ)に魅力が、中身がなければ名作とはなりえない。

この作品は『続編』なので、どうしても前作と比較してしまう。
今回のヒロイン達にしても、方向性・立ち位置が似ていたこともあり、莉里・真愛・ソーニャを、雪乃・鞠奈・優と比較して見てしまった。

その結果、やはり私には今作のキャラは立っていないように見えてしまいイマイチヒロインに引き込まれなかった。
莉里・真愛・ソーニャにも特色はあったし。それについてはしっかり描写はされていたと思う。
莉里はカッコよく振舞っているが実は乙女趣味、真愛は馬鹿で世間知らずだが形見のバラや学園の存続について行動することの出来る存在、ソーニャはメイド・暗殺者・依存性ありのロシアン娘と悪くない。
だが完璧なお嬢様の弱さ、愛に飢えるわがまま娘、敵対しても主人公のことを慕う気持ちの変わらない後輩には霞む。
ソーニャの家族に飢えて依存する対象が、ルートによって主人公でなくても良かった点もあまり魅力を感じなかった要素だと思う。



最も残念だったのはセンターヒロイン?の希望ルートである。
ストーリー展開も引っかかるところはあったのだが、それ以上に修史というキャラクターの根本を揺るがす許せない発言があった。




『周りの親しい人間には正体を明かさせてほしい』





は?




修ちゃん曰く、「この学園には、今の俺を・・・・・・山田妙子を信頼してくれている生徒がたくさんいます」
「そんな彼女たちを欺き続けることが苦しいんです・・・・・・胸が痛むんです」
「こんなことは初めてです。このまま卒業までこの状態を続けていくのは不可能だと判断します」


いやいやいや!この学園にはって言いますけどねえ、テレジアには山田妙子を信頼してくれた人は居なかったとでも?

テレジアの仲間たちにはギリギリまで話すことのなかった正体を、欺き続けるのが苦しいというだけで明かすっていうのはエージェントとしてどうなのよ・・・

私にとって如月修史というキャラクターは、なんだかんだ文句はいえども任務に対しては誠実かつ真摯に取り組む存在だったわけで。

自分が辛いからといって職務の一部をないがしろにするプロ根性に乏しい輩ではないはずなのだ。
修史というキャラクターの魅力を続編をプレイすることでスポイルされることになるとは思ってなかったので、手痛い一撃だった。



と、ここまでヒロイン及びルートに対してネガティブな感想だったのだが、ありがたいことに石ばかりではなく玉も存在してくれた。
富金原麻衣である。

クールに任務をサポートしてくれていたエコーに対して好感度がうなぎ登りしていた中、いざルートに入ると演じる人生を送ってきたために『自分』がないことへの不安、過去の虐待からのトラウマ持ちとは予想だにもしてなかったため、良い意味で予想を裏切られた。

後付けバリバリの部長の養女設定も、麻衣を含めた3人で家族として過ごせるようになるというのは希望があっていいと感じた。

ただ、麻衣は結局のところ修史の姉なのか妹なのか・・・・・・
ルートによって両方の記述があるためややこしいのだが、過去描写見る分には年下のような?



今作では修史の過去について焦点が当てられていた。

部長のPMC所属時代に当時の仲間からガッツリ戦闘訓練受けていて、催眠暗示で忘れているけどいざ思い出したら、銃本体を投げたほうが可能性があると評される射撃の腕も、途端に精密な射撃マスィーンになってみたり。

伝説的な女傭兵に物心ついて間もない頃に重症を負わせ、また大人になってからはその傭兵の全力とも渡り合えるスキル。
・・・・・・ちょっと戦闘力のインフレ著しいですねえ。

あとオルトロスってw 似合わなさすぎでしょ。
一番盛り上がるラストバトルでオルトロス、オルトロス連呼されたら爆笑不可避でしたよw
修史のネーミングセンスないのは間違いなくあの人の影響。




まとめ
大分文句ばかり書いてしまったレビューになってしまったが、期待値が高かったからというためでもある。
前作ありきのゲームなのでどうしても比較してしまうし、粗も見えてきてしまう。

ただ意外かもしれないが、私はこの薔薇の聖母は大変楽しめた。
前述した通り従来の恋楯テイストを残したまま、新しい立ち位置の山田妙子を表現できていたと思うし、修史の戦闘シーンが比較的多かったこともポイント高い。
設子さまが声だけとは言え登場したのは感慨深かった。デレデレだったし。
ストーリー展開も一部腑に落ちないところがあっただけで引き込まれたシーンもあったのだ。


全てはパンチが足りなかったの一言に尽きる。
恋楯はアクのある作品だったからこそこれだけ愛されてきたということもある。

是非とも今後のAXL作品にはかつてスタッフの皆さんが抱いていた冒険心を思い起こしていただいて、唯一無二となる作品を制作して頂きたいという期待を込めて、文の結びとさせていただく。




おまけ

莉里と真愛とそれぞれ一緒にシャワーを浴びたというドキドキアクシデントがエコーの口から語られるだけってどういうことですかねえ(#^ω^)ビキビキ
エロゲーとしてあるまじき行為ですよ!AXLさん!せめてCGはくれてもよかったじゃないですか・・・




追記 3/10
久しぶりにCS版恋楯、若菜ルートをプレイしたのだが修ちゃん自分から若菜に正体ばらしてたのね・・・完全に忘れてたよw
とはいえ、正体明かさなかったら絶対にその先には発展しないキマシタワー路線固定不可避の状態だったから仕方ない感もあるが。
ただそれよりもまずいのはルート内で護衛対象である雪乃を有里に任せて自分は若菜とイチャイチャしてた点。
そっか・・・忘れてただけで片鱗はあったのか・・・・・・でも基本的は実直な人間だし、なによりCS追加ヒロインルートでの修史は言動が他ルートと比べてちょっとおかしいところがあるので、自分の中では良く似た別人という事にする!
という忘れてたことに対する言い訳でした。