nezumoさんの「アオナツライン」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

悩むことやすれ違いも含めて最高の夏と呼べるような、決して綺麗な部分だけではない青春の描き方が魅力的でした。
青春ってジャンルは必ずしも綺麗なものばかりではないと思っていて、
簡単に思いつくものだと体育祭や文化祭でさえも、数々の衝突やギスギスを乗り越えて本番を迎えていく。
後から思い返せばそういう時間も大切な思い出になるとはいえ、当時はやっぱり辛い時間。

でもやっぱりそういうテキストは読みたいし、そういう展開はあって欲しいと思います。
光の部分だけじゃない、闇の部分まで乗り越えて結末に至れるということは、
色々なことがあったなあと思い返した時に、あの時あれがあったから…あの時ああしていたから…となると思うのです。
多感な時期の不器用な人間が精一杯考えて、自分なりの結論に至る、その繊細な部分が上手に描かれていたように感じました。


音楽・イラスト

シナリオがこんなんなので影に隠れがちですが、これがなければこの絶妙な世界観は生まれてないわけで、
なんなら多分予約買いもしてなかったと思うので、浸りたくなるような世界観を用意してくれたことに感謝したいです。
背景は江ノ島周辺を意識してそうなので改めて現地にも行ってみたくなりました。

ちなみに見た目だけならことねちゃんが一番好き。
曲は海岸線と明日のこと。が特に好きです。
海岸線は某所で流れるのでいわずもがなですが、夢に向かって一歩を進めることを決意するようなことね√挿入歌も最高でした。
音楽はどれも歌詞を意識しながら聞くと本編のシナリオが意識されてて凄いです。
サントラについてくる作曲家さんの解説も余韻を感じられる要素になってて素晴らしい。


結√

たまたま電車の中でポケットティッシュを渡された男の子、その人に会いに来るために転校してくるというその情熱がもう素晴らしい。
仲間内でも特に青春という時間と遊び方に拘っているように思っていて、その行動力のおかげで5人が5人でいられた面もあります。
自分の青春ごっこに周りを突き合わせているのではないか?みたいな描写こそあるものの、
おかげで5人のバランスが取れている面もあるわけで。グループにおけるポジションはそういうものだったのかなと。

結√で特に重点が置かれていたのは、告白だったように感じられました。
最初は達観の側が自分の感情に自信がないからお試しという形で付き合い始め、その流れで自然と恋人関係に発展していく。
しかし最後の最後、あの坂道の場面まで、本当の意味で相手を信頼して好きだと言えた場面はおそらく一度もなかったのではないか。

お嬢様であり行動力もあり、そんな人に自分は釣り合わないのではないか?という劣等感との戦いがリアルでした。
普通ならこんなものない方が良かったりもするのですが、「自分が周りを振り回しているのでは?」と悩むヒロインと合わせて、
お互いがお互いの悩みを聞いて支え合うという、対等な恋愛が成り立つきっかけにもなっているように見えます。

どちらかが過剰に愛をぶつけていると、いずれその均衡が崩れて対等な恋愛関係として成り立たなくなってくる。
結√に限った話ではないですが、付き合ってる2人のバランスが上手に取れているというか。
お互いに良いところ悪いところがあって、それも含めて愛し合っている印象を強く受けたし、それがとにかく好きでした。

最後別れ際になって、電車の中で自分でなければならない理由を知ることができます。
(=ティッシュを渡してくれたことだけじゃなくて、達観が学校生活の希望だったことなど)
ここでようやく自分の恋心に自信が持てて、かつ結が自分に向けてくれる気持ちにも確信が持てたから、最後の坂道での告白に繋げられた。
都合よく考えすぎかもしれませんが自分はこう考えてて、だからこそ告白に重点を置いた題材として素晴らしい締め方だと思えました。

余談ですがフェスでこんにゃくとショコラのOPが流れてましたね。
どうしてこの組み合わせなのかはよく分かりませんが、分かる人には最高のサプライズ。


ことね√

こういうタイプだからこそ最初に千尋との衝突から始まるというのが凄く好きでした。
高校デビュー故に分からないことも沢山あって、本質的には主要グループについていけなくなってすれ違ってしまい、その上で千尋とも会話の方向性が合わなかったりする。
千尋にもことねにも(特にことねの方に)幼い部分があって、それをグループに合わせて妥協していかないといけない。
元々グループから外れた原因の一端を担っている部分もあるし、こういう描写を容赦なく入れてくれるところが良いですね。

バスケの7連続スリーポイントのシーンは、アレの現実味云々じゃなくて、達観があれをことねのためだけにやったという事実が大切で、
地味でバスケもあんまり上手くないと思ってた先輩が自分のためにあれだけやってくれたら、そりゃもう惚れないわけがないに決まっているので。
それでいてあの後のことねの語りで明確な恋愛感情だとは気づいてないところがまた良い。
一目惚れという気になり始めるきっかけに加えて、あれから先一緒に過ごす時間が確実に恋を意識させるものになっているという丁寧さを感じました。

途中から達観くん呼びになるところについては、あれを機に主人公とことねが対等な関係になることを意識してるように見えます。
それまでは小悪魔系後輩キャラクターだったので正直それでもいいんですが、無意識のうちに主人公がことねを支える形になってしまい、
結√で描かれたようなお互いに対等な立場で支え合うような恋愛を描くためなら、こういう関係もアリかなと。
キャラがほぼ完全に別物になっちゃうのはアレですが、まあ可愛い。

結√と同じように、付き合い始めてからは夢に向かって前進することねと、ことねが遠くへ行ってしまうような感情に悩む達観の構図が描かれます。
実際目に見えて可愛くなったという描写は随所にあるし、ことねは着実に前に向かって進んでいるんだと思います。
でもことねにも同じように夢に向かって頑張ることに対する様々な不安があって、それをちゃんと支えてあげるのが達観の仕事。
こうやって互いの弱さを認め合っているから、ことねが自分から対等な位置に来た主人公との関係が生きてくる。
ことね自身1人で夢を追いかけてるわけじゃなくて、支えてくれる仲間の存在が大きいんですよね。
グループの仲の良さとか、達観とお互いの弱さを認め合うことの良さがこういうところに還元され、
諦めない心や信じてくれる仲間がいるから頑張れるという感情がより強くなっているように見えます。
愛し合っているのは達観なのですが、支えてくれる仲間も本当に大事、そういう気持ちを最後の歌唱審査にぶつけるシーンが大変印象的でした。
これだけでも余韻十分なんですが、願わくばこの少し先の物語も少しは見たかったなあ……。

あと個人的には初めてのHシーンがオーディション落ちた後の屋上なのが好きです。
傷の舐め合いみたいなシーンには愛し合うだけじゃなくてその時の感情が微妙に出てきたりするので。
気持ちが沈んでいたのは事実ですが、それでも安易にあそこで走ってしまったのは事実。
生理が来るか来ないかをめちゃくちゃ気にしていたところまで妙にリアルな失敗談って感じがします。


海希√

海希は恋愛に関しては超めんどくさいバケモンでした。
達観のことが好き、でも3人の関係も好き、何かが変わってしまうのは怖いけど他の人に達観を取られるのも嫌。
おかげで他2人の結ばれるシーン直後の海希のことは正直見てられませんでした。あからさまに失恋してるんだろうなあっていう。
他のヒロイン2人に上手に転がされてるところも好きで、ここは結の頭の良さやことねの根の良さが光ってたりします。
2人とも同じように達観の方が好きなはずなんですが、海希の気持ちがとんでもないことに気づいてるからちゃんとアシストしてるんですよね。
付き合う男女の裏側に必ずいる、残された側の気持ちを考えるのはなんとも胸が苦しいけど大好き。

達観と海希の関係、ゲーセンで遊んだこと、その帰りの出来事、それから病院での一件までの一連の描写が素晴らしい。
中学生前半の時期の男女関係がなんとなく恥ずかしい時期は自分にも分かるし、達観が一連の流れから必死に海希との関係を繋ぎ止めたかったことも、
海希が自分の立場とプライドを守るために達観とあまり親しく見せたくはなかった気持ちも分かる。
後悔するって分かってても、幼いから口が勝手に動いてしまうのも分かる。その後死ぬほど後悔してベッドで泣いてるシーンが大好きです。
この頃からお互いにちゃんと想い合ってるはずなのに、不器用だからこうなってしまうというシーンの典型でした。
ただこれはとっても大事なシーンで、この先の2人の恋愛はこのシーンがあったからより映えた気がします。
この喧嘩みたいなものがお互いに自分の恋愛感情を知るきっかけになってて、後の行動に繋がっていくんですよね。

ここからプールという特別な場所での告白があって、そして現在のプールでの告白に至る。
ここで一度達観と海希が対立するシーンがありますが、2人とも3人での関係が壊れることに対する恐怖が滲み出ていて、きついけど好きなシーンです。
全員3人での関係を維持したかったのは見えてますが、千尋が最初に運命を受け入れて、2人が結ばれるのを後押ししたのがきっかけになっています。
あの場に3人がいたらあの告白は成立しない、これは全員が分かってたことで、その中で千尋はたまたま日程が重なってたという偶然を受け入れた。
海希は他の2人に後押しされるし、達観は自分の力で運命を受け入れる。
この一連の過程の先にあるプールでの告白シーンは鳥肌モノでした。というか涙がボロボロ出ました。

ちなみにこのあたりの3人の関係をまとめると、
達観:海希のことが好き、でも千尋と結ばれればいいと思っている、自分が3人の中で浮いていて不要だと思っている
海希:達観のことが好き、ただ3人での関係が凄く大切、告白したら3人の関係が壊れることを分かっている
千尋:2人が好き合っているのを知っている、自分が身を引けば解決するが、心配だったり3人の心地よさが好きだったりで中々そうはならない

誰かが妥協しないと絶対に前に進めないようになっていて、本当にややこしいしめんどくさい。けどおかげで大変素晴らしい関係になってる。

海希√では千尋がたまたまフェードアウトする形で2人が結ばれるわけですが、そこから千尋が自分の居場所を探すためにバスケを始めるというのも大好き。
「結ばれた2人を横目に、自分も何かやるべきことを探さなければならない」という消極的な見方もできますが、
「達観と海希が結ばれるのを見届けたから、これで心置きなく自分のやりたいことを探せる」とも考えることができて、
3人目としてのモヤモヤとかある意味清々しい気持ちなんかをバスケに昇華できてたのなら、それは本当に眩しいくらい幸せなことじゃないかなと。
でも元から海希のことは妹みたいにしか見れなかったと言っていたので、別に達観と海希の取り合いをしたわけじゃない。
受け入れたのは3人の関係が少し変わってしまうことで、いつかこうなることは少しは覚悟してたんじゃないかなと思います。

ラストシーンも告白シーンと同じくらい好きです。
3人での時間の大切さを3人で分かり合って、今まで泣いたことのなかった千尋が泣いてしまう。こんなんズルいんだよなあ。
回想の演出も完璧だし、3人とも夏の終わりにちゃんと自分の見るべき先を見つけているし、本当に文句なし。
長年一緒に過ごしてきた3人がのびのびと遊べる最後の夏の物語としても、どうしても交わらなかった恋心が動き出す物語としても、
こういう題材に自分が求めていた、本当に見たいものを見られた素晴らしいお話でした。


最後には改めて海希の語りが挿入されて、最初の台詞の意味がなんとなく分かるわけですが、この台詞を海希に言わせていることに運命力を感じるというか。
千尋が運命の力でフェードアウトして、今年の夏たまたま出会った2人が達観と海希の恋愛をサポートしなければ、海希√の状況は生まれなかったわけです。
正直ちゃんと考えるまでは、このタイミングでどうして不確定な未来の話をするのかよく分かりませんでした。
言ってしまえばこの作品に限らずなんでもかんでも全て偶然なんですが、それを実は特別なものだと強く意識させる演出として見れば、
グランドED曲と合わせて、最後の最後にこの作品で見るものとしては凄く良かったです。

nezumoさんの「アオナツライン」の感想へのレス

長文でも読みやすい上に、この作品に対する愛着と評価が感じ取れる感想でした。
2019年03月31日15時05分54秒
>tglさん
コメントありがとうございます。
終わって少し時間が経った今でもかなり好きな作品なので、ちょっとでも魅力が伝わったのならとても嬉しいです。
2019年03月31日20時04分22秒

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