比翼れんりさんの「幕末尽忠報国烈士伝 -MIBURO-」の感想

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篠突く雨に ただひたすらに進む誠よ 迫り出す咆哮上げて 狼の如く
インレとして「忠臣蔵」「僕はキミだけを見つめる」に続く3作目となる今作は、新撰組を題にしたものです。忠臣蔵ファンディスク(未プレイ)に関連する部分もあるようですが、ひとつの作品として形が出来上がっているので問題はなさそうです。リンクする点も多いので、プレイしておくにこしたことはないのですが。

数多のフィクションの題材にされてきたテーマですが、主要人物を女性に置き換えて、主人公を置きつつ、それでいて話の中心は新撰組のヒロインたち、というのが顕著な点ですね。あまり歴史に詳しいとは言えないので、いろいろと調べながら読み進めていったので、僕キミを遥かに超えるボリュームもあいまって、なかなかコンプに時間がかかりましたが、非常に満足できる内容に思いました。

ストーリーは新撰組の前身、壬生浪士組の設立から始まり、紆余曲折を経ながら戊辰戦争まで続きます。おおまかな物語は、死んでいるはずの人物が生きていたり、あり得ない展開になっていたりしますが、おおむね史実に沿っており、歴史の教科書レベルの知識しかなくとも、流れを追いながら、最後まで読みごたえがありました。ところどころで様々な解釈はあるでしょうが、このとおり大きく予想を裏切る内容ではないため、ある程度の知識のある方だと、面白味は半減してしまうかもしれません。この作品の良さは、ストーリーというよりも、その裏に隠されている、各人物の腹の内やキャラクターの魅力にどう気付くか、そしてインレの売りでもある立ち絵や背景を上手く活用した躍動感あるバトルが見せ場なのかなと思います。

話は実質的に一本道ですが、ストーリーベースではあまり上手く感想にならなそうなので人物ごとに整理していきます。

イサリンルートはかなりアレンジがきいていますね。酒井兵庫の初出から身代わり展開はないのかな?とは思っていましたが、やはりそれが伏線でした。仕込みはしていたことは確かですが、ルート分岐からかなり強引な話の持って行き方だなと感じます。ただ尾形の離隊や新八、一といった面々を上手く溶け込ませて、話が単調にならないようにしたのは好感が持てますね。オリジナルストーリーにシフトした先は、黒田の仇討ちがメインにはなりますが、それが頓挫した停滞ムードに中将が光を与えたエンディングは、個人的にはいろんな意味で"良かった"と思えました。

どのルートでもある意味の「救い」があるのが際立っているように思うのですが、箱舘まで戦ったひじりんのエンディングは個別ルートと言うよりも、史実どおり新撰組の最期を描いたものに感じました。他のルートエンディングで多摩に向かうことがしきりにプッシュされていましたが、それが明かされ、次のエンディングに向かう繋ぎでもあります。
ひじりんと健が対する構図となるのが最終章。一応これでひじりんにも救いの光が差すエンディングになりましたが、正直モヤモヤとした終わり。明らかに「次の戦い」を意識した引きですね。インレ次作は"完全新作"との触れ込みですが、果たして。

4人のヒロインの中では総司が1番かわいいですね。本来ならば、総司は会津には行かず、療養中に病死というのがレールなのでしょうが、中村半次郎との戦いをひとつ入れたことで、その後の繋がりが出来ており、ヒロインの死後もルートが続くおもしろい構成に思いました。島田や半次郎の戊辰戦争後の史実を上手く重ねて、一ともリンクさせたことが、新撰組からの流れを汲んだ、ワクワクさせるものでありました。欲を言えば総司との時間をもっと割いてほしかったですが、実際の日数とリンクさせると、やはり尺として厳しいのかなとも思います。

一はオンとオフの効いたキャラクターが抜群でこれは配役がハマったなと感じます。総司との絡みもとても良い日常シーンでした。終盤までイサリンなき新撰組をひじりんと一緒に支えますが、会津で別の道を歩みます。ここで一ルートに分岐しますが、その後の展開もほぼ史実どおりでしょうか。西南戦争が区切りで、それ以降は回顧でエンディングとなります。後半からの駆け足具合は否めませんが、新撰組の古参である4ヒロインの中ではハッピーエンドと言っていいエンディングで、心落ち着く終演に思いました。

山南さんルートは、大津で逃がした先にある、イフストーリーであり、それでいて無敵の庄内藩の舞台裏を描くものでした。はっきりと創作の部分であるのですが、これも他の事実と組み合わせながら、ある程度歴史に沿っているので、リンクするところもあり、おもしろかったですね。山南さんの願望をきちんと拾っている点でも、ひとつの派生としては十分な意味があるのだろうと思います。

平助のアナザーはとてもわかりやすい派生で、油小路事件で助けることに成功していた場合のストーリーです。平助の出生を絡めて「裏切り」というワードの元で構成されています。新撰組の面々と邂逅する部分もありますが、主の戦いからは別の視点で紡がれており、パンチ力は他のイフストーリーからしても弱いかなと思います。また河合の切腹という伏線を回収するルートになっており、ひとつ憑き物が落ちたので、その点では意味があったのかもしれません。

新撰組と分かれた後の新八のお話は、戦いからは距離を置いたもので、ある意味アナザーというにはふさわしいストーリーかと思います。さのじの行方不明を織りまぜながら、日常シーンの前半と半次郎が登場する後半にわけられますが、盛り上がるところは皆無に近く本編と比べてしまうと物足りなさはあります。ただ終戦後のエピローグ仕立ての部分が、史実の新八とリンクするので、そこがこのルートの意義なのかなと思いました。

非常に長い期間を描いているので、悪役をはじめ、主要メンバーも都度代わり、話も加速度を増していく印象が強くあります。壬生浪士組誕生から大政奉還まではひとつひとつの事件や出来事が丁寧に扱われているように思いますが、第2オープニング以降の戊辰戦争にあたるところは、確かに戦況が目まぐるしく、スピード感をもったものだったのでしょうが、ダイジェストになってしまう部分が多く、前半から比べるとガス欠気味のシナリオに見えてしまいました。最後まで全力というのは難しいですが、分岐後の個別ルートはひじりんルート以外物足りなさは感じました。ただ、トータルのシナリオを含めて全体的な完成度は間違いなくトップクラス。この先も期待したいですね。
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