amaginoboruさんの「ウィザーズコンプレックス」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

キャラゲーとしては-10点。魔法学園を舞台にしたキャラ萌えエロゲなのにお約束・不文律に遵守しておらず、固定客層を楽しませる気があるのか疑いたくなる作品です。一方で主題やキャラ個性の掘り下げには見るところがあり、一概に駄作と捨てきれない部分も。
男なのに魔力を持っているからと、魔女の学園にブチこまれ奮闘するお話。といっても
主人公は空気なイケメンで、主役はあくまでヒロイン側です。こう書くといかにも大手
ブランドらしいキャラ萌えエロゲの雰囲気ですが、中は開けてびっくりのグチャドロ
風味です。

学園の制度は頭おかしいし学園長も教育者として失格レベル。モブ生徒は自身に都合
よく声援と罵倒を投げつけ、ライバルチームのサブヒロインは自己中ビッチが勢ぞろい。
メインヒロインも一部ヤバいのが存在していて「え、これ萌えキャラゲーだよね?」
と制作ブランドを確認したくなるレベル。初どみるだったのですが、こーいうブランド
だったのか(違います)。


しかし上記はあくまで萌えキャラゲーとして見た評価。いちエロゲとして見た本作は
決して悪い出来ではありません。確かに心証を害する登場人物は多いのですが、なぜ
そんなキャラを混ぜたのかは理解できます。ライバルチームの言動も全ルートを読んで
みれば納得できる部分も多く、自身を考えさせられる一面も少なからずありました。

いわゆる物語を紡ぐために必要な不快・嫌悪なわけです。特に序盤は読んでいて気分を
害することも多いでしょうが、そのリターンを十分に持ちうるエロゲです。それを萌え
キャラゲーブランドが不意打ちでやったことが問題なのであって。

ただ複数の主題がやはり複数のルートに跨って展開されていて、とっ散らかった印象は
あります。テーマαが展開されるルートA・Bと、テーマβが展開されるルートB・D、
テーマγが展開されるルートA・C・Dみたいに入り組んでいるのですね。そこに複数
ライターによるキャラ付けの違いなどがあり、お題もキャラもかなりややこしいです。

そのややこしさがラストで収束するなら良いのですが、ルート内でしか完結しておらず、
作品としての統一性がありません。テーマαは解決すれどテーマβは未解決のルートA
エンディング、みたいな。全部がそれなりに決着するトゥルールート、みたいなのは
欲しかったですね。やや消化不良感は否めません。

けど不満だったのはそのぐらい。ノベルゲーとしては随所に妙のある、面白かったと
断言できる作品でした。キャラゲーとしては低評価ですけどね。

メインヒロインが可愛くないし、一緒にいたいとも思えない。エロも可愛くもエロくも
ない。更に私自身が絵師さんやブランドのキャラデザ・塗りに魅力を見いだせないことも
あり、赤点ギリギリレベルです。絵の出来が悪いわけではないので、その点加味すれば
もう少し上方修正されそう。


以上を踏まえて、まずオススメできないのがうぃんどみるファン。グラ目的で購入
するにしても、なかなかの不快感を催すため覚悟はした方がよろしいかと。同じく
萌えキャラゲーを欲してのプレイは非推奨です。それっぽいけどそういうエロゲじゃ
ないですコレ。爽快感を求める方もアウトかなと。

けどキャラやテーマに期待するのはアリかってーとまた難しく。同傾向でより面白い
作品はゼロ年代あたりに見受けられるのですよね。よりエグいのもあれば、キャラゲー
としての領分をも併せ持ったエロゲもあったり。

かといって捨て置くのもまた惜しい。ユニークでなくとも出来が悪いわけではない、
むしろ楽しめるレベルで、良作という言葉が適切かもしれません。大当たりでなくとも
新しい作品を探したい方にオススメしたいです。



以下ネタバレ所感。いつもよりエゴむき出しです。










◆集団を重んじる友人関係
ほのかは「みんなで仲良く建設的にいこう!」という思考の持ち主で、個人個人には
多少なり無理を強いります。みんながちょっとずつ歩み寄れば=妥協すれば、みんなが
幸福になるからと。例えばアイリスルートは食堂の、東西ケンカ仲裁なんてその最たる
ですよね。

けどそれって、妥協をお願いする人自身は見ていないのですよね。「みんなが幸せに
なれるのだからそうしよう」と制度やルールを優先させ、個人の感情や希望は優先度が
低め。最悪大義のために考慮すらしません。それがほのかの考える友達関係です。

一葉にしても幼少期からの長い付き合いというだけで、彼女自身を見ることは作中
ほとんどありません。その辺がテーマとなる一葉ルートぐらいで、アイリス・鳴ルートの
一葉は踏みこまない、我関せずな性格なものだから友人関係が殊更希薄です。個人を
求めないほのかと、踏み込まない一葉の相性は確かに良いのでしょうけどね。

個別ルートで蒼に惹かれたのもそのあたりが理由でしょう。蒼は逆に個人を大事に
する性格で、それはほのかが持ち得ない優しさです。ミヨちゃんへの所感にしても、
ミヨちゃん自身を助けたい蒼に対し、ほのかは「魔女が人間と仲良くなれるように」
という思いがセリフの端々に現れています。

自分の持たない素晴らしさを持つ蒼に憧れ、同時にほのか自身を見てくれる蒼を好きに
なった。そんな恋模様がキャラゲーの文法に則り丁寧に書かれていたように思います。
終わり方もみんなが幸せになれる、優しい世界を築き上げてめでたしめでたし。どみる
系列のあるべきスタイルってこーいうのですよね、多分。

しかし(キャラゲーなのでアフターを考える必要はないのですが、その上で)当該
ルートのほのかはアイリスと絶対に相容れないでしょうね。結局のところアイリスは
自分自身を見て貰いたがるタイプで、正しいことを押し通す性格とは決定的に相性が
悪い。更にほのかがその事実に気付いていないから余計にタチが悪い。

けれどほのかの言動は常に正しいから、支持されるのは彼女なのですよね。我儘を
撒き散らすアイリスが悪い、と周囲は認識するでしょう。というか実際問題、本作を
プレイされた方の大半は「大正義ほのか、アイリスは我儘」と思われたのでは。
さもありなん、です。

でも私としては、友達にするならアイリスのが良いですね。というより、ほのかの
ようなタイプには決してお近づきにはなりたくありません。持ち前の正しさで抑圧
されるのが目に見えてますから。友人関係に正誤と政治を持ちこむ方は、優秀で社会的に
有益な方であっても御免こうむります。自分が辛いので。別にほのかが嫌いなわけでは
ないのですけどね。苦手という話です。



◆個人を重んじる友人関係
ということでアイリスです。序盤は余裕のなさから自分のことばかりを考えていて、
自身も後に自省しています。「みんなが幸せになるように」で諭すほのかと違って、
アイリスは「ケンカは良くないからとりあえずやめよう。自分もその方が楽だから」
なんですよね。自分本位に道理を振りかざすから誰も聞いてくれないわけで。序盤の
アイリスは私も嫌いですw

だからメリッサもターニャも話を聞きません。アイリスルート序盤において彼女達が
フリーダムなのはぶっちゃけアイリス自身が原因でしょう。「生徒会の仕事だから
参加して」といいつつ彼女達や学園を憂慮していません。困るのが嫌だから道理を
ゴリ押しただけで、信念のある2人には通じるわけもなく。

でもそこからは頑張った。心に余裕を持ったことで、アイリスの良さが前に出てくるの
ですよね。1つは味方のために結果を出すこと。魔法大戦3戦目の闇堕ちアイリスは
勝利のためにターニャの冷徹な言葉を受け入れ、かつ結果を出した。だから後日街へ
連れ出し「酷いこといってゴメン」と謝ったわけで。味方のために、他者のために
苦痛を受け入れたからこそターニャは認めたのでしょう。

2つ目は相手個人を見ること。これはメリッサの嫉妬イベントが最たるですね。
アイリスが生徒会の義務を抜きにしてメリッサ自身と向き合ったのは作中初めてのこと。
西塔生徒会の運営方針を決める際にしても「メリッサは/ターニャはどう思う?」と
彼女たち自身に問いかけています。
(このあたり、ほのかとは全く真逆なんですよね。あの娘が鳴に意見を求めたことが
どれだけあったのか。)

そうやって自身と相手を同じ目線にしたからこそ、2人はアイリスを仲間と認めます。
このあたりから西塔の空気がグンと良くなるのですよね。未だみんなフリーダムだけど、
それでもまとまりが見えてくる。4戦目は結果として負けてしまうけど、学園長や東塔
メンツそっちのけでケンカするアイリスとメリッサ、めっちゃ好きです。

今までのアイリスならケンカせず「試合に集中しないと」と保身を考えたはず。けど
味方のためにガチで取り組んで、そこを邪魔されたものだからメリッサ自身にキレる
んですよね。スタンドプレーをかましたメリッサに責任を求めてる。ちゃんと相手を
見ているんです。(その後凹みすぎるのは相変わらずの欠点ですが。)


アイリスルートの勘所はここ、つまりアイリスとメリッサ・ターニャの関係進展に
あります。以降のほのかとのやり取りは、アイリスの立場を逆転しただけだからです。
ママ兼学園長との変な演出でブツ切りにされていますが、あえて同じことを繰り返して
います。

アイリスが保身からのみメリッサ達に抑制を求めたのと同じように、ほのかのアイリスに
対する受け答えは全て「正しい」だけなんです。意見の正誤とか意見の一致不一致とか、
そーいうのは実はどうでもいい。ほのかは相手個人を見て発言していないんです。

精神が弱っているアイリスに「お母さんに甘えればいいんだよ」と諭すほのか。それは
確かに正しくて、本人もわかってはいるんです。だからその後行動に移したわけで。けど
アイリスを見て同じ言葉を出した蒼と違い、メリッサ・ターニャを見て意見を求めた
アイリスと違い、ほのかは「それが正しいから促した」だけなんです。

だから激昂します。メリッサがターニャと組んでボコろうとしたように、自分を見て
発言しないほのかにブチ切れます。「何もかも与えられている人が偉そうなこと
言わないで!」というセリフは一見、明後日な方向へのキレ方のように見えます。が、
その実ほのかの軽さが招いた罵倒だと思うのです。

だからアイリスの罵倒に対する正しい返し方は、魔法大戦最終戦でほのか自身が
いっていた通り、いい返すこと。「それで楽になれるんだからさっさと行動に移せ!」
ぐらい自分をぶつけて良かったんじゃないかと。実際は「せっかく優しくしてあげた
のに!」とやや明後日方向なキレ方で、それもまた感情に任せていて嫌いではないの
ですけど。

このケンカもまんまアイリス・メリッサのそれと同じです。ただほのかの場合「正しい」
視座からアイリスの目線に移しているため、常識的に考えると歪な行為にも見えます。
けど人間関係に正論だけをぶつけるのもまたアレですからね。この場合は作中にあった
とおり「間違える」のが一番よかったのだと思います。


でも本作はうぃんどみる製、つまりキャラゲーなのですよね。そして萌えキャラゲーの
ヒロインは読み手への当たりが良くなくては受け入れて貰えません。その点において
ほのかは実に優秀。アイリスはかなりダメダメなキャラクターです。加えて再三再四
述べてきたとおり、大局的な視点におけるほのかは常に「正しい」です。

だからアイリスルート最後のほのかに違和感があるのでしょうね。「キャラゲーと
してのあるべき」と「大局的に正しいほのか」合わせ技で、ほのかが全てにおいて
正しいように見えてしまう。更に解決すべき最優先事項として「学園制度」があり、
ほのかの思想は事態を解決するに最適です。

あらゆる面においてほのかは正しい。なのにわざわざアイリスの視点に降りてくる
から「ほのかが合わせてやっている」ように見える。かような流れでもって正誤を
決めつけられてしまったように見受けられました。

けど読み解いてみれば、個人への接し方としてはアイリスの方が優しく心地よい事が
見えてきます。だからどっちが良い悪いの二元論ではないと思うのですよね。対人の
スタンスが異なるだけであって。実際そういうお話として見せているのでしょうが、
「キャラゲー」「学園制度」の2要素がほのかに味方しすぎてしまった印象を受けました。



◆「覚悟」について
アイリス・鳴ルートで頻出するこの言葉、要は上述のほのかがケンカしたような
「道理に対し間違える覚悟」のことかと考えます。ほのかなら大局的な人間関係では
わかりあえないから、1対1の関係で接する覚悟。鳴ルート終盤なら、会話で解決
できないから、勝負で雌雄を決する覚悟でしょうか。

桜子も蒼とアイリスに「覚悟を決めて生きなさい」とか急に説教垂れてなんだこの
クソビッチとなるわけですが、これは1人1人と仲良くあろうとする二人への警句かと
思われます。大局を見て切るとこ切るのも大事だぞと。結果として蒼は西塔へ移籍し、
鳴や東塔モブから嫌われるので効果的な説教ではあります。が、さすがに唐突すぎるw

大人達も間違え方はさておいて、それぞれ覚悟は決まっていたように見受けられます。
上述の桜子にしても教師のスタンスは崩さず2人へ「一生徒」として接し、一方で家族
として個人を見守っていたので。アイリスママも学園長・ママの顔を使い分けています。

つまるところアイリス・鳴ルートは、間違えて得るものを題材としている気がします。
学校方針にしても桜子が指摘している通り「あえてトラブルを発生させている節がある」
ように見受けられますし。結果としてその方針は東西分裂を起こすクソ制度だったわけ
ですが、これは間違え方を間違えた反面教師として提示しているのかもしれません。
...我ながら作品をかばいすぎな気もしますがw

ただいずれにせよ飴と鞭の使い方が極端かつブツ切りで、今ひとつテーマに説得力が
なかったように思います。特にアイリスルートのママに甘えるクソ微妙な演出。アレを
考えた制作陣はぜひ演出を勉強しなおしていただきたい。タイミングは最悪だし、そも
下3行の通常画面のが説得力あるしで拙いってレベルじゃない。感動的な演出を起こす
こと自体は悪くないのですけどね。



◆最も覚悟の決まっている人物
メリッサでしょう。バトルの前には人間関係もコミュニティの制度も関係ない!
という潔すぎる姿勢は見事という他ありません。

元がキャラゲーであのような性格ですから、敵役兼ワルモノ的なポジションに見られ
がち。実際共通ルートはそのような立ち位置で不快感を覚えた方もいらしたのでは。
けど一葉ルートを見ての通り、バトルと勝利だけに全てを賭しているだけなんです。

それにただ脳筋で人の話を聞かないわけでもありません。メリッサは自分を脳筋または
乱暴者というレッテルでしか見ない手合いを相手にしないだけ。彼女自身に対し話しかけ、
また理解しようと努める相手には耳を傾けます。アイリスルートのシャリー然り、中盤
以降のアイリス然り。ここがキャラゲーとは思えないほど、丁寧に書かれています。

また力を見せたものに対しては実力を認め、一方的な憧れを抱きます。それが一葉
ルートの一葉であり、アイリスルートのアイリスであり。自身の目指すモノに対する
貪欲な姿勢もまた一目置けるものです(認められた側はいい迷惑ですが)。

そして障害となるもの・不快なものに対しては敵意をむき出しにします。それが例え
大局的で大きな流れであってもです。事実一葉ルートにおいて学園を辞めてやる的な
姿勢を見せますが、その最たるものではないでしょうか。

組織に属する人間としてもう間違えまくってるんですよね。チームプレイはしないし
暴力で事を片付けようとするし人の話聞かないし。それは我儘以外の何物でもないの
ですが、しかし信念のある彼女なりの道理に基づいた、ある種大変にストイックな
言動です。普通ここまで周りにバカにされて怒られて呆れられてまで、自分を通せない
ですよね。

ターニャも近しい立ち位置なのですが、彼女の場合は自己承認要求がまずあって、その
諦観からくる自らの信念。周りに自分を認めて貰えるなら、おそらくは信念を捨てられる
のですよね。でもメリッサは信念第一。見てくれる相手・認めた相手には話も聞き
ますが、信念を曲げることは決してない。自身の目的だけに一心不乱なのです。


趣味やスポーツなどに入れ込む理由の多くは、自分が楽しいと思うことを共有できる
人間との交流であったり、あるいは栄光を掴むことで得られる自己承認要求です。要は
ところ、人と快適に交わりたいがために物事へ打ち込みます。

しかしメリッサの場合、戦闘そのものが目的であり他者は関係ありません。ただし
他者を相手にする分野ゆえ、その道で能力の高いものには意識を向けますが、それ以外に
おいて人間関係が優先されることはありません。(前述の通り、自身を見る者に対しては
相応の礼で接しますが、それでも最優先にはなりません。)

間違える覚悟と人間の繋がりを題材にした物語に置いて、彼女ほど信念を貫き通して
間違えまくる人物は他にいません。ただのキャラゲーならただのバカキャラですし、
テーマを軸に鑑みても多くの読み手は賛同できないでしょうし、下手すれば愚かな人物と
評されることでしょう。

それでも自身の「好き」に全てをつぎ込むメリッサを、私はもっとも好ましく思います。
次点でターニャ。その次にアイリスと、彼女達を導きつつ自コミュニティの健全化を
計るシャリーですね。西塔メンツ大好きです。

東塔メンツの姿勢は一般的で常識的で非常に健全。まったくもって正しい在るべき姿勢
です。けどみんなに抑制を求め、周りに意見を求めず正しさで人を繋ぐスタンスはやはり
好ましく思えないのですよね。

私がコミュニティに属する人間として間違えているのでしょうけどね。その上で私は
メリッサ達西塔メンバーを好ましく思います。

amaginoboruさんの「ウィザーズコンプレックス」の感想へのレス

貴方の感想を読ませていただき、私なりに抱いた所感を述べさせていただきます。

実は私はウィザーズ・コンプレックス自体は体験版時点で肌が合わなかったので未プレイなのですが、多くの感想を読む限り西塔のメンバーの評価は総じて良くないですね。もっとも悪いのは学園長ですが。

さて、あなたが世間的には「正しい」東塔、その最たる例であるほのかが好ましくないのは、「覚悟」と「自覚」がないからではないでしょうか。

私が好むあるゲームに「正義」の具現のような英雄がいましたが、彼のセリフに以下のようなものがあります。

「理解しろ、どれだけ正しい理屈を並べようとも、それは万人に倣える正義ではない。正しさに耐えられるのは、俺やお前のような極めつけの阿呆だけだ」

理屈としてどれだけ正しかろうと、人間性を無視したそれは、人の世を乱すのだと、正しさだけを希求する「自覚」の無い男に拳で諭していました。

正義を貫くには「覚悟」が必要です。つまりは「正義」に反するものを切り捨てるという「覚悟」。理屈は正しくても、言葉を用いるか、刃を用いるかはともかく、どちらにしても相手の主張を砕き屈服させるという行為を自分がしているという「自覚」を常に忘れてはならない。

最も自分のスタンスに「覚悟」を感じたメリッサのスタンスを良しとし、しかしほのかというキャラクターにその「自覚」と「覚悟」が欠けているように思えたから、好意を持つことができなかった。そのように見受けられました。


また、ある有名な宇宙を舞台にした架空戦記に、「ドライアイスの剣」、「正論だけを刻んだ永久凍土の石版」などと評された冷徹な人物がいました。彼はその人間性を無視した「正しさ」を貫いたゆえに、同僚たちみんなから嫌われていましたが、しかし同時に一目置かれていました。彼には自分が行っていることへの「自覚」と、そのことで自分に反発するものが現れ、最悪死ぬ事になることへの「覚悟」を常に持っていました。だからこそ畏敬されていたのです。

そうした人物たちから比べると、あなたの感想からイメージされるほのかという人物は実に「中途半端」です。そしてこれはある意味でメインヒロインである彼女が、この作品の特色を表した結果となったものかもしれません。

シナリオ勝負というには練りこみが足りず、ビジュアルメインというにはさほどでもない。そしてキャラゲーというにはアクが強すぎる。総合的に見ると「中途半端」です。作品の「核」がなんであるのかがぼやけています。

そういう穿った角度から捉えると、不憫なキャラとも見えてきます。少々穿ちすぎかとも思いますが。


まあ、作品本編をやってない人間が評していいことではないですね。しかし貴方の感想でもし機会があったら(中古ショップで格安で売られていたりしたら)改めてやってみようかなと思うようになりました。





あと、余談ですがほのかひいては東塔の主張は、実は現状における「敗者の理屈」なんですよね。「全体が幸福になるために個を抑制する」というその姿勢、つまりは全体主義=統制経済共産主義というわけです。

しかし、それを国体としたソビエトは今地球上に存在していません。 残っているのは突出した「個」を重んじる西塔の主張、自由経済資本主義です。

そうしたほのかの思想が賛美されるといういことは、この作品の舞台は間違いなく異世界ファンタジーですねぇ、と根性悪く思ったりしました。
2017年09月27日22時22分13秒
>gggrrrさん
コメントありがとうございました。体験版でもおそらく不快なシーンがあったことと
思いますが、個別次第ではまた別のもにょもにょが溜まる感じですね。学園長はうん、
個別で更に酷くなるといいますかw


ほのかに「自覚」がないというのは仰る通りかと思われます。推測ですが彼女の場合、
今まで正しさで事を進めて周囲の人間が幸せそうだったから、それでいいのだと繰り
返しているような節が見受けられます。上手くいっているから反省もなく、そもそも
「覚悟」する必要がなかった。そんな感じでしょうか。

感想でも述べましたが、ほのかは本当に「正しい」のですよね。世の道理と人の心の
バランスを計るのが上手いというか、常に最適解を出せる娘です。大局的に見れば
多くの人が不幸にならず幸せになる道を提示できる娘。

ただそれは共産的というよりも日本的な、集団における「和」を尊重した考えに近い
かもしれません。学校や社会だと、みんながシステムの恩恵を最大限に受けられるよう
個々の想いは抑制されるじゃないですか。アレに近いです。コミュニティ健全化の
ために個を殺す的な。

ほのかは個を最低限しか殺さず、かつ最大限にシステムを生かす最適解をその場
その場で生み出せるのですよね。だから不満が出づらいし出しにくい。不幸だと嘆けば、
制度に消極的であれば「アイツはみんなの幸せを壊す悪い奴だ」とほのかを取り巻く
社会と集団に攻撃、下手すれば排除されてしまいます。(西塔生徒会の面々がそれ
ですね。集団・制度から排撃される人々)

その社会と集団が負へ肥大化してしまったのが現状の学園制度で、それを是正するために
東塔生徒会は奮闘する、といった形です。だから制度面に置いてほのかが非難される
いわれはまったくありません。道理だけを見れば。実際(西塔が支配する鳴ルートを
除いて)彼女の働きで学園制度は健全化しますので。

ただ本作はキャラ萌えエロゲで、プレイヤーが快適に楽しめるよう調整されています。
それはヒロインや制度も同様で、ハッピーエンドの背景にある至らない部分は読み手が
不快になるため見せません。ほのかの提唱する明るい未来は、優しい作者の嘘によって
守られています。

gggrrrさんが例に挙げられたゲームや銀○伝は、政治的・制度的な要素がより現実的に
表現されているのでしょう。かような本格的な作品に竜胆ほのかという政治家を照らし
合わせたなら「甘い」「ヌルい」という他ありません。中途半端、まったくもって仰る
通りだと思います。

1つ但し書きを付けるとすれば、優しい嘘で守られた世界にも、厳しい現実を突きつける
物語にも、それぞれの良さがあるとは認識しています。どちらが上・下というお話では
なく、『ウィザーズコンプレックス』をキャラゲーとして綴るのに、竜胆ほのかという
成功した執政者は必要だったのでしょう。異世界ファンタジー、まったくその通りですね。


けどそんな優しい世界の作品なのに、ヒロインが友達になりたい娘自身を見ようとは
しないのですよね。即ちほのかとアイリスの関係なのですが、みんなに優しいメイン
ヒロイン様が、虐げられている娘に「友達になりましょ」とアプローチして、なのに
悩み事や苦悩を正論で一蹴しちゃうんですよねぇ。お前それこそキャラゲーなら隠して
おけよ、優しい嘘はどこ行ったよって言いたい。

この辺が歪なのですよね。ヒロインを使って制度は都合よく書いてるのに、対人には
その都合良さが一切出ないという。だからアイリスがブチ切れて、ほのかが「間違える
覚悟」を決めちゃう。正しい選択をするほのかが否定されちゃう。いやいや学園制度の
方でキャラゲールール出したならアイリスに対しても適用してやれよと。急にアイリス
自身を見て助けてやれよと。ほのかちゃんを理想の女の子として書いてやれよと。

理想と現実の使い分けが制作陣の我儘勝手すぎるのですよね。だから制度的なほのかと、
対人としてのほのかを並べると矛盾が生じる。結果「制度が悪い」「アイリスが悪い」と
変な方向へ結論づけられてしまうような。キャラゲーとシリアスゲーの「捻じれ」が
本作の最も困った部分であると私は判断しています。

でも捻じれのおかげで独特な風味になっているのもまた事実なのですよね。とても
評価と感想に困るエロゲだと思います。ここに鳴ルートや複数ライターによる功罪を
乗せれば更にカオスに!
フルプライスでの購入はお世辞にもオススメできませんが、お安く手に入るなら
プレイしてその微妙な匙加減を堪能するのもアリだと思います。読後感が最悪になる
可能性も否定できませんけどw
2017年09月28日20時39分12秒

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