ritz_fawcettさんの「見上げてごらん、夜空の星を」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

沙夜ルートが断トツで面白い。全体的には素材は良いものの肝心の天体の話が今一つ。とても丁寧で優しい物語なので読後感は良い。
テーマは変わるもの(目に見えるもの)と変わらないもの(目に見えないもの)の対比。

人の関係性も街並みも、変わっていく事ばかりで寂しくなったりもする。けどずっと変わらない大切なものもある。そういうものは普段目には見えない。
もしそれを忘れそうになったら、星を思い出せばいい。星の光は過去の光、想い出の欠片。いつも変わらずそこにある星に思いを馳せれば、人々は変わらずにある大切なものに気付くことが出来る。だから『見上げてごらん、夜空の星を』ということ。



共通→ひかり→織姫→沙夜→ころな の順でプレイしたけど、もし誰かに勧めるなら

共通→ころな(付き合うまで)→沙夜 →お好みで



以下はルート毎の感想



■ひかりルート 70点

物語の起伏をつくるために何か事件や問題を起こす必要があるのは理解出来るけれど、スポ根物じゃないんだから天体の活動でそれやらなくてもいいのでは?なんで森田とかいうオッサンを攻略しなくてはならないのか…。
そもそもメイン以外の部員と直接の絡みがほとんどないから、プロジェクトをみんなの力で成功させたっていわれても達成感が薄い。沙夜ルートのように人間ドラマにスポット当てたほうがよかったと思う。

それに子供の頃から好きだった相手と色々もつれながらも恋が実ったというのに、天体活動のトラブルの方にそれが埋もれちゃってるというか、描写があっさりしすぎたのがもったいない。
せめて恋愛とプロジェクトを同時進行じゃなく、順序立てて書いたらまだよかったかもしれない。

ただメッセージ性は一番テーマに沿ってはっきりしてた。
街の灯りが増えるにつれて減少する星の数を大切なものになぞらえて、目に見えないとそれは本当に存在するか不安になるけれど、スターライトプロジェクトを通じて夜空に星を輝かせることで、確かにそこに存在するんだよって証明していくお話。
全国を巻き込んだプロジェクトにしていくってのも行動力あるひかりらしくて良いんだけど、やっぱ上に書いた不満点がなー…。一番好きなキャラで一番期待したルートだったからがっかり度大。



■織姫ルート 65点

ひかりルートよりはヒロインとの直接的恋愛が中心でTHE恋愛ノベルって感じなんだけど、主人公が典型的な没個性で魅力皆無。だから付き合い始めて1:1の関係になるとそれが顕著に出て、単調に感じる。不必要な情景描写が多い割に心理描写に欠けるのもよろしくない。

面白かったのは織姫と吉岡の関係性。マスターキーの継承シーンと、誕生日プレゼントに名誉会員証を渡したシーン。恋愛ゲームなのに女同士のやり取りのほうが魅力的。

卒業して肩書が会長じゃなくなっても吉岡にとって織姫はいつまでも会長のままです、っていう二人の関係性のほうがテーマに合致してるし、暁斗より吉岡が主人公でいいんじゃないですかねこのルート。



■沙夜ルート 90点

ひかりルートと沙夜ルートは構成は大筋似通ってはいるんだけど、星(想い出)に対するスタンスが違ってて、

想い出の欠片が消えていかないようにずっと大事に抱えていたのが沙夜で
想い出はずっとそこにある!ってことを行動で証明しようとしたのがひかり。

綺羅星の如く輝くひかりの魅力とは対照的に、天の川のように雄大な姿で包み込んでくれる沙夜。

このルートでは『暁斗とひかりと三人でいたい、けれど暁斗を独占もしたい』そんな矛盾した二面性を内包しつつ葛藤する沙夜の様子が事細かに描かれている。

他ルートでひかりのいない間に沙夜が抜け駆けをしようとしないのも、ひかりへの罪悪感から来ていたものだった。
幼少時、ひかりが暁斗を好きなことに気付きつつも、沙夜が想いをひかりに打ち明けてしまったからひかりは自らの想いを閉じ込めてしまったのではないか、そしてそのせいで三人の関係が壊れてしまったのではないかと思い悩む。
ひかりは転校し暁斗も星を見なくなってしまった。一人になってしまった沙夜は大切な思い出を忘れたくなくて日々夜空の記録をつけようとする。減っていく夜空の星に寂しさを覚えながら。そんなとき彗星さながら帰ってきたひかりの存在が、沙夜の葛藤に拍車をかけることになる。
親友との再会を喜ぶ一方で、ひかりの影響でまた星を見るようになった暁斗を眺めては、自分よりもひかりのほうが暁斗にはふさわしいのではないか…と。

立ち位置的には完全にホワルバ2の雪菜。話は向こうよりずっとマイルドだけど。

暁斗と付き合い始めてからもずっと悩み続けて、心配する親友のひかりに対しても「私とあっくんの関係に口を出さないで!」と暴言をぶつける所なんか普段は大人しい沙夜の芯の部分が現れていた。

一番好きなのはアルビレオのくだりかな。初めて出会った時にアルビレオのような綺麗な目をしていると言ってくれた暁斗。もし暁斗が星を見続けてくれたら、自分はアルビレオとして暁斗の視界に入っていられる。
だから暁斗には星を見ていて欲しかったのに、そうさせることが自分には出来なかった。だからこそそれを易々と成し遂げたひかりには感謝や嫉妬の混じった複雑な感情を抱いてしまう。
そういった細かい心の動きを、登場人物達の関係に踏み込んで最も丁寧に描かれたのはこのルートだったので、高評価。



■ころなルート 65点

序盤、特にころなと沙夜の確執の真相が明らかになる辺りまでは面白い。沙夜ルートの前にやっておきたかった。
ひかりを失って落ち込む暁斗を立ち直らせたい、けれど自分では傍にいて励ましてあげることもできない。もどかしさを抱えたころなは、それが出来るはずの立ち位置にいる沙夜に対して「どうしてやらないんだ!この魔女が!」と憤りを覚えていたわけだけど、
この辺りは沙夜ところなで似たものがあるんだよね。自分に出来ない事をやってのける相手に対する葛藤。まあ実際は沙夜はやらなかったわけじゃなく出来なかったんだけど。

果し合いを経てその誤解も解けたあと仲良くなって、そっからひなみちゃんと買い物行くぐらいまでは面白かった。特にころな視点が多くて心理描写メインだったので。

その後の電波望遠鏡絡みの話はまるで面白くない。Hシーンは全スキップしたけどやたらテキスト量多い。暁斗と付き合い出してからが織姫ルートと同様の単調さだった。




結局面白いのは人間ドラマ。天体絡みのイベントがどれも楽しめなかったのは残念。星座の逸話なんかは面白かったですが。

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