sunnydaylifeさんの「PigeonBlood」の感想

BLゲームを数々プレイしてきて、こんなに色々驚かされたゲームも初めて…。あの名作「神学校」を産み出したディレクター陣のあの熱量が他のベクトルに向けられた結果に出来上がった偶発的な産物(ゲーム)という感じを受けました。
このゲームをプレイして、つくづくこのメーカーは只者じゃないと思いました。趣味のいいゲームとは云えないですが、あくまで創作物として見ると、女性向けのゲームとしては斬新で新感覚なゲームに感じました。色々な試みの多い分、「神学校」のような完成度にはならず、残念な部分もありますが、絶えず新しい「何か」を産み出す事が使命のゲーム・メーカーの方向性としては正解のように思います。

残念に感じた所を先に書きます。まず主人公の和樹がオトコの娘属性なため、BL萌えが出来にくかった点です。ルートによっては、その傾向が強く途中で中断してしまった事もありました。ただ日があけて再プレイすると、それからのストーリーが格段に面白くなり、気にならなくなりました。主人公も色々な面を見せてくれるので、今となってはこのゲームには合っていたのかなーとは思います。主人公の名前が女性の名前でなかったので、そこには救われました。オトコの娘や女々しい主人公が嫌いなプレーヤーには忍耐を強いられるゲームでしょうが、それが好きな人にはハマるのかなーという気がします。プレーヤーを呆れさせる程の徹底したオトコの娘っぷりを悪びれず見せる主人公もある意味凄い。
攻略キャラも序盤のクズっぷりが強烈で、個別ルートに入ると、流石に集団でいる時とは違った彼らの姿が見られますが、余りキャラ萌えはなかったです。

次にこのゲームはボリュームが異常に多い分、冗長に感じられる所もありました。これだけ色々詰め込んだゲームを上手く纏めるのも至難の業のような…。主題の伝奇ホラーに、世にも下世話で奇妙なゲームの遂行という二つの要素が絡まっています。どちらか一つをテーマに絞っていたなら、もう少し纏まっていたでしょうが、二つの要素が絡まる所にこそこのゲームの個性がある訳で。敢えて難しい試みを選んだメーカーの姿勢は評価したいです。一歩違えば傑作になる可能性を秘めたゲームだけに惜しく感じる部分が多かったです。


BLゲームの萌えとしては、自分の萌えポイントから外れていましたが、伝奇・猟奇ミステリーゲームとしては世界観を十分堪能できました。横溝正史や江戸川乱歩などのテイストが好きな人にはお勧めです。もちろんピルスラのゲームなので、一味も二味も違いますが…。エンディングによってはグロ面で、「女性向けでここまでするか…」というものもあり、印象が強烈でした。グロが苦手な人にはイージーモードがあります。 最終的な目的や手段は各ルートで共通していますが、それまでの過程がルートによって完全に違ったストーリー展開になるので、凄いボリュームに感じました。昔のゲームでは、このゲームの1ルートが一つのゲームの真相だった時代もあったので、贅沢な話だなーと思います。伝奇、猟奇、怪奇オカルト、ホラー好きにはたっぷり楽しめる作品なのではないでしょうか。このゲームで何よりも恐ろしかったのが、執事の存在でした。このゲームを大いに盛り上げてくれたので、執事に助演男優賞をあげたいくらいです。


このゲームは、このメーカーでは珍しく複数シナリオライター制がとられ、当初クレジットされたシナリオライターに一部変更がありました。変更後のライターの人のルートも十分楽しめましたが、やはり当初クレジットされたライターが継続されていたら、このゲームにどういう化学変化を与えていたか気になります。またシナリオライターの人達が普段常識的なシナリオを書く人達だったので、一人くらいはアクの強いシナリオを書くライターが加わっていれば、攻略キャラも中途半端にならず、もう少しキャラの強い魅力が出たかなーという気がします。人をかなり選ぶゲームですが、もう少し評価されてもいいゲームでないかという気持ちが大きいです。

ところで、このメーカーはBLゲームをプレイし始めた頃には、奇をてらったゲームを作るメーカーという印象が強かったのですが、一作一作とても力が入れられているし、プレイすると作品に意外なほど深みがあるので、数少ない生き残りのBLゲームメーカーの代表格の一つという立場である事に納得します。BLゲーマーが最後に辿り着く場所…がこのメーカーかもしれません。






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